bunkamuraで開催中のアントニオ・ロペス展を見た。駅構内などに貼られている、街路を描いたポスターにお気づきの方もいるだろう。ビクトル・エリセ監督の「マラルメの陽光」によって日本にも一躍知られるようになったスペインの画家。驚愕すべき描写力の持ち主だ。 ポスターを見てだれもが思うのは「これは本当に絵なの?」という問いだろう。写真と見まごうほどの克明さ。しかもポスターに載っているのは作品の「写真」だから、なお一層、写真との差がわかりにくい。 だが展覧会を見わたせば、写真とはまったく別物であるのがわかる。筆のタッチもあるが、それ以上にロペス自身が写真という形式を意識した上に、それに出来ないことをしようとして絵に向かっている、ということがわかってくるのだ。 初期の作品には、かなりシュールな雰囲気をもつものがある。具象的表現だが、現実との整合性は眼中にない。あるがままを写しとることに使命感を燃や