『母なる証明』 原題:마더(2009) 英語題:Mother 面白かったし、凄いとは思うんだけど……何か釈然としないものが残る映画だった。もちろん映画好きなら必見の作品だし、ハッキリ言って「今、ポン・ジュノの新作を観に行かないやつはバカだ!」と言い切れるほど、この監督はもはや世界レベルで目が離せない作家であると思う。さらに、これほど賛否両論が分かれる作品もないだろう。その評価は、ぜひ自分の目で観て決めてほしい。ぼくも、観るまでこんな後味を持ち帰る映画だとは思わなかった。 (以下、映画全体の印象に触れているので、未見の方はご遠慮ください) ポン・ジュノという人は『殺人の追憶』(2003)にしろ『グエムル ─漢江の怪物─』(2006)にしろ、自分の手に余る題材に敢えて挑んで、その上で自分のヘンテコな持ち味に力業で引き寄せてしまうところが大きな魅力だった気がする。しかし、今回の『母なる証明』は、