グローバル経済の矛盾、民主主義の危うさ、日本人の死生観など、現代の重要な問題を思想家・佐伯啓思さんが文明論的視座から論じた『さらば、欲望~資本主義の隘路をどう脱するか』からの抜粋をお届けします。第1回はロシアのウクライナ侵攻をめぐる論考です。 ※記事の最後に佐伯啓思さんの講演会のご案内があります(会場参加&オンライン 7月5日19時~) * * * ソ連解体で問われた「ロシア的なもの」 もう10年ほど前になるが、大学院の授業後にひとりの留学生がやってきて、こういう。 「日本はどうして英語教育の充実など英語ばかりに熱心なのですか。自国の言葉だけで話が通じるというのはすばらしいことではないですか。なぜ、日本は自分たちの言葉や文化をもっと大事にしないのですか」 少し返事に窮した。まったくその通りだと思う。そこで、君はどこから来たのかと聞くと、 ウクライナからだ、という。いかにウクライナが