強運を引き寄せてきたサッカー人生 暑さが和(やわ)らいできた初秋の折り、男は東京都足立区にある舎人(とねり)公園陸上競技場にいた。Jリーグの若手選手中心で行なわれるサテライトリーグの一戦が間もなく始まるところだった。スタンドは満席でも、入場者数は1750人。5万人を収容するトップチームの競技場とは比べるべくもない。芝生も凹凸が目立った。試合前のアップ、彼が蹴ったボールは明後日(あさって)の方角に飛んでしまう。軽く舌を打ちし、恨めしげに芝を踏みしめた。 スタンドに陣取った客のひとりは、その仕草が癪(しゃく)に障ったようだ。 「ピッチのせいにすんなー。下手くそなキックしやがって! だからサテなんだよ」 観客の辛辣(しんらつ)な反応は、その選手に対する期待の裏返しでもある。 男は24歳の若さでワールドカップのピッチに立っている。それはあらゆるサッカー選手が憧れる舞台だ。以来3年、脂がのった年を迎