参院選で与党が大勝した結果、直近では秋の臨時国会でTPP審議が、数年ぐらいのスパンで改憲論議がされると、それぞれ相当ごたごたするのではないかと思うが、まだ多少の時間はあると思うので、ここでtwitterで概略だけ書いていた幾つかの国際動向について紹介して行きたいと思う。 まず最初に、少し前の話になるが、5月31日にドイツ憲法裁判所が著作権に対して表現の自由が優越し得るとする判決を出している。 この判決の概要は、ドイツ憲法裁判所のプレスリリース(ドイツ語)の最初の段落に、 Steht der kunstlerischen Entfaltungsfreiheit ein Eingriff in das Tontragerherstellerrecht gegenuber, der die Verwertungsmoglichkeiten nur geringfugig beschrankt,
昨日3月8日にTPP関連法案が閣議決定され、TPP政府対策本部のHPで公開された(概要(pdf)、要綱(pdf)、法改正案(pdf)、新旧対照条文(pdf)、参照条文(pdf)参照)。内容としては審議会の資料として今まで見て来たことがほぼそのまま条文化されているが、念のため、中でも知財関連の法案がどのような条文になったかを見ておきたい。 (1)著作権法改正案 著作権法改正案の内容として含まれているのは、第357回などで書いた通り、著作権の保護期間延長、著作権侵害の非親告罪化、アクセスコントロール回避規制、配信音源の二次利用に対する使用料請求権の付与、法定損害賠償の5点だが、この内条文の問題にならない著作権保護期間延長と非常にマニアックな配信音源の二次利用に対する使用料請求権の付与については条文まで詳しく見る必要はないと思うので、その他の3点について見て行く。 まず、非親告罪化については、こ
去年と異なり、今回は何故か1月4日から1月29日までの募集となっている「知的財産推進計画2016」の策定に向けた意見募集に対し、私が提出した意見をここに載せておく。 今年は募集が1月になった所為で、知財本部の検証・評価・企画委員会の知財紛争処理システム検討委員会や次世代知財システム委員会の検討の方向性がそれぞれまだ良く見えていない中での知財計画パブコメとなっているが、これらの委員会がどうあれ、今年の知財政策上の最大のトピックは問答無用でTPP問題であり、私の提出した意見も(1)a)のTPP問題に関する部分を今の状況に合わせて書き改めている。(他の点では、知財計画2015の記載(第338回参照)に合わせてリバースエンジニアリングの話を(1)e)として追加したり、4K無料放送のコピー制御の話(phileweb.comの記事及び東洋経済の記事参照)を(2)c)につけ加えたりし、また、全体的に記載
前回に引き続き、今回もウィキリークスが公開した2015年10月5日時点のTPP協定知財章最終条文のリークから特にインターネットサービスプロバイダー(ISP)の責任に関する部分を取り上げたいと思う。 リーク条文(pdf)中の関連条文とその翻訳は長くなるので最後にまとめて載せるが、第341回で取り上げた2015年5月時点の条文案と比べて、細かな括弧がなくなっているだけでほとんど変化はなく、米豪の追加提案もそのまま付属という形で代替規定として残された。また、チリへの配慮だろうか、もう1つ関連する付属として米チリFTAのISPの責任制限に関する規定も代替とできるという条文も加わっている。 本当に細かなことが気になる方には実際の条文にあたってもらいたいと思うが、ここで重要な点は、多少微妙なところはあるものの、協定本文を普通に読む限り、さらに付属の米豪追加提案か米チリFTAに基づく2つの代替規定もあり
先週6月19日に知的財産戦略本部会合が開かれ、知的財産推進計画2015(pdf)(概要(pdf)、工程表(pdf))が決定された。 例によって、作ることに何の意味があるのか分からない検討項目集に過ぎないが、現時点で政府が何を考えているのかを見るのには便利な資料ではあるので、ここで知財計画の文章が今年どうなったかを見ておきたい。(去年の知財計画2014の内容については第315回、今年私が出したパブコメについては第336回参照。なお、知財本部会合の資料は、まだ案がついたままの状態だが、本部会合での変更はなかっただろうし、この資料で見ても問題ないだろう。) いつも通り地道な運用改善に関する項目を飛ばして法改正に関わる部分を抜き出して行くと、まず、前回取り上げた知財訴訟制度の見直しについて、第18ページに、 (知財紛争処理システムの機能強化に向けた検討) ・我が国の知財紛争処理システムの一層の機能
この8月26日に英語特区を筆頭に極めて頭の悪い政策項目の並ぶクールジャパン提言(pdf)が政府のクールジャパン推進会議でまとめられた。 この提言は、そのことがなければtwitterでつぶやくだけで放っておこうと思ったくらい本当にどうでもいいことしか書かれていないのだが、1ヶ所だけ特筆に値することが書かれているので、念のためブログでも取り上げておこうと思う。 その部分は、第13ページの、 3 規制緩和でクリエイティブを応援する 若者のクリエイティビティの発揮を促すために、過剰な規制や無駄な不自由を減らしていく。若者が創造性を自由闊達に発揮し、そのクリエイティビティが他者にも伝播するような環境づくりを行う。 クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。また知財
既にITmediaの記事になっているが、昨日ウィキリークスが8月30日時点のTPP知財章草案をリークした。TPP(環太平洋パートナーシップ)協定の条文案に関する限りほぼ初めてのリークらしいリークであり、非常に手の込んだ偽物という可能性もなくはないが、その内容は大方の予想通りであり、私は本物だろうと踏んでいる。 リークされた条文案の内容は非常に多岐に渡り問題点も多いのだが、今回は、著作権関連で影響が大きいと私が考えている保護期間延長、法定賠償、非親告罪化関連部分の条文が具体的にどうなっているのかを見ておきたいと思う。 まず、それぞれポイントとなる部分の条文案を抜き出すと以下のようになる。 Article QQ.G.6: [US/AU/PE/SG/CL/MX propose; VN/BN/NZ/MY/CA/JP oppose: Each Party shall provide that, wh
今回も前回に引き続き海外動向の1つということでドイツの著作権法改正絡みの話をまとめて書いておきたいと思う。 (1)著作権侵害警告濫用抑止・利用者保護のため弁護士費用を制限する再度の著作権法改正 公布・施行がまだであることに注意が必要だが、weltの記事(ドイツ語)やドイツ法務省のリリース1(ドイツ語)に書かれている通り、この6月27日に著作権侵害警告の濫用を抑制するための著作権法改正案がドイツ連邦議会を通り成立している。 今回の法改正案(ドイツ政府の提出法案(pdf)とドイツ連邦議会法務委員会の修正提案(pdf)参照、ドイツ連邦議会のリリース1(ドイツ語)、2も参照)で、侵害警告を規定するドイツ著作権法の第97a条は以下のような形になる。(「不当業務対策法案」というその正式名称が示す通り、この法改正案は必ずしも著作権問題だけを対象とするものではないのだが、ここでは著作権に関係する部分だけを
第293回:主要政党の2013年参院選マニフェスト(政権公約)案比較・規制強化慎重反対派元国会議員候補リスト(知財・表現規制問題関連) どの政党も前回の衆院選のときと比べてほとんどスタンスの変更はないのだが(前回衆院選時の比較は第283回参照)、 自民党・選挙公約(pdf)(総合政策集(pdf)) 公明党・重点政策(pdf)(重要政治課題(pdf)) 民主党・重点政策(pdf)(政策集) みんなの党・アジェンダ(pdf)(要約版(pdf)) 日本維新の会・公約(pdf) 社民党・公約(pdf) 共産党・選挙政策(pdf)(各分野政策) 生活の党・公約 みどりの風・公約 新党大地の訴え(pdf) と参院選マニフェスト案がほぼ出そろったので、念のため一通り知財・情報・表現規制問題関連の項目について見ておきたいと思う。 (1)マニフェスト案比較 各政党のマニフェストから知財・表現規制問題に関する
第291回:米国通商代表部のTPP日本参加パブコメに提出されたアメリカの著作権ロビー団体である国際知的財産協会(IIPA)の意見書 自民・公明・維新の三党から国会に単純所持規制を含む児童ポルノ規制法改正案が提出され、6月14日には都議会選挙の告示があり、来月には参議院選挙が控えているなど、気になることは山のようにあるのだが、この6月9日までアメリカ通商代表部が募集していたパブコメに提出されている意見の中に知的財産に関するものもあり、TPP交渉におけるアメリカの知的財産に関するスタンスを知る上で非常に参考になる資料だと思うので、ここで取り上げておきたいと思う。 このアメリカ通商代表部のTPP協定交渉への日本の参加における交渉ターゲットに関する意見募集(募集ページ参照)は既に締め切られているが、特に秘密とされない限り提出意見は提出意見公開ページで見ることができる。(それで日本政府としてどうしよ
第290回:インターネット・ホットラインセンターの権限強化を図りTorブロッキングを推奨する警察庁・総合セキュリティ対策会議の報告書 既にガジェット通信の記事で84oca氏(twitter)が書かれているように匿名の検討会で匿名化技術がけしからんと言っている時点で噴飯ものなのだが、警察庁の昨年度の総合セキュリティ対策会議が取りまとめた2つの報告書がこの5月7日にようやく公開された。(internet watchの記事も参照。) 無論前々回 、前回と取り上げた児童ポルノ排除総合対策案の方が大問題だが、この総合セキュリティ対策会議の報告書の方もかなりの問題を含んでいる上にパブコメすら取っていないというあまりにもあまりなものなので、ここで突っ込んでおきたいと思う。(なお、この報告書については公表されたときにtwitterでもコメントを書いた。) (1)「官民が連携した違法・有害情報対策の更なる推
この11月16日に衆議院が解散され、12月4日公示、16日投開票という総選挙日程が示された。残念ながら、今回も著作権問題が選挙の争点となることはないだろうが、多少なりとも誰かの参考になるかも分からないので、ここで番外として前回総選挙から3年あまりの間に議論され、成立して来た各種著作権法改正に関係して名前が出て来た国会議員のリストを載せる。 (1)ダウンロード犯罪化を含む著作権法改正関係 この3年あまりの間で一番大きな問題を含む法改正はダウンロード犯罪化だと私は思っている。10月1日の施行以来今のところ逮捕者は出ていないようで、遠隔操作ウィルスによる冤罪問題でそれどころじゃないというのもあるかも知れないが、法改正をして何もしないというのも今の警察の振る舞いから見てあり得ないだろうし、何かしらの形で逮捕者が出るのは時間の問題だろう。 この著作権法改正案はこの6月15日に衆議院文部科学委員会及び
自公がダウンロード犯罪化法案を次期通常国会に提出する方針というロクでもないニュースもある中(時事通信のネット記事参照)、スイス政府が、さらなる著作権規制の強化をしないこととする報告書をまとめたということが話題になっているので、今回は、このスイスの話を紹介しておきたいと思う。 まず、スイスの法務・警察省の2011年11月30日のリリースには、以下のように書かれている。(いつも通り、以下の翻訳は拙訳。) Urheberrechtsverletzungen im Internet: Der bestehende rechtliche Rahmen genugt Bern. Das Internet hat die Nutzung von Musik, Filmen und Computerspielen fundamental verandert. Auf das kulturelle Scha
この6月8日に衆議院文部科学委員会で内閣提出の著作権法改正案(内容については第266回参照)の主旨説明が再度行われ、来週(定例日とすると最も早くて6月13日(水)だろうか)には採決が見込まれている(internet watchの記事も参照)目下この内閣提出の著作権法改正案に対し自公がダウンロード犯罪化のための修正提案を行うことはまず間違いない情勢で、与党の民主党がこれにどう対応するのか私も本当に不安である。 このダウンロード犯罪化問題について、先日MIAUあるいは津田大介氏が業界団体の議員向けロビー資料を入手し公開してくれた(MIAUのツイートあるいは津田大介氏のツイート参照)。既に海外の法制がどうとか言う次元の問題ではなくなっている気もしているが、この資料の海外の法制に関する記載には到底看過し難い歪んだ理解が多々見られるので、ここでざっと欧米主要国におけるダウンロード違法化・犯罪を巡る状
先週6月15日に、衆議院文部科学委員会及び本会議で、自公提案のダウンロード犯罪化がねじ込まれる形で内閣提出の著作権法改正案が可決され、法案は参議院に回された。 内閣提出の著作権法改正案の内容(第266回参照)に関しても私は問題なしとしないが、てんたま氏(Twitter)がそのブログ記事で以下のような要綱の一部を紹介しているが、自公がねじ込んだこのような内容の修正案はほとんど無法極まるデタラメと言っていい。 著作権法の一部を改正する法律案に対する修正案要綱 第一 罰則の整備 著作権法第三十条第一項に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となっているものに限る。)であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。以下同じ。)の著作権又は著作隣接
今週も様々な動きがあったが、3月23日に日弁連が「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の見直し(児童ポルノの単純所持の犯罪化)に関する意見書を公表している(日弁連のリリース、意見書本文(pdf))。個人的にはネットとの関係における踏み込みの点で少し物足りないところもあるが、法律の専門家集団らしく、今後の法改正の議論をする上で非常に良い立脚点となる意見であり、様々なところで既に触れられているが、念のためここでも少し紹介しておきたいと思う。(個別の団体の意見の紹介なので、やはり番外とする。) その趣旨は、意見書(pdf)の最初に書いてある通り、 1 現行法における児童ポルノの定義を限定かつ明確化すべきである。 2 現行法の児童ポルノの定義を限定かつ明確化したうえで,児童ポルノの単純所持を禁止すべきである。ただし,犯罪化することには,反対する。 というものである。
第201回で元となった答申案のことを取り上げたが、東京都青少年保護条例(正式名称は、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」)の改正案がこの2月24日に東京都から都議会に提出された。この改正案の全文をhimagine_no9氏が都議会図書館から複写され(Scribdへのリンク、氏のサーバーのpdf文書(内容は同じ)へのリンク)、JFEUG氏がOCRを用いて比較資料を作成されている。 これらのリンク先から直接読んで頂ければ良い話なのだが、条例改正案は改め文で読みにくいので、ここでも、元の青少年条例の改正部分を示すという形でその全文を転載しておきたいと思う。(特に新しい情報が含まれている訳ではないので今回は番外とした。また、折角作ったので、JFEUG氏のファイルのさらに訂正版のテキストファイルへのリンクもここに張っておく。) 詳しくは下に載せる条例案本文を直接読んでもらえればと思うが、この東京
児童ポルノ法の規制強化の動きに対して、当たり前の話であるが、ネットを中心として反対運動が巻き起こっている。やはり、マンガ・アニメ・ゲームといった架空の表現に対する規制の導入に対する反発は凄まじく、単純所持規制の方がかすんでしまっているくらいだが、単純所持規制も、そのネットにおける危険性を考えるとやはり絶対に導入してはならないものである。 この話についてはいろいろなことを調べているところだが、憲法論をやっているブロガーはあまり多くないので、今回は、第70回の補足として、このような規制と憲法上の「表現の自由」との関係をまとめておきたいと思う。 普通なら憲法の教科書をひもとく必要などないはずなので、「表現の自由」を、言葉通りおおよそ発表の自由だと考えている人も多いのではないかと思う。大体の場合はそれで十分なのだが、この「表現の自由」がいわゆる「知る権利」も含むものと解されているということは、イン
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