受刑者との授業 驚くべきことに、授業は最初からいきなり効果を上げた。1時間目の教材は絵本『おおかみのこがはしってきて』(ロクリン社)だ。登場人物であるアイヌの父親と子ども役になってもらい、みんなの前で朗読してもらう。 ひらがなばかりのやさしい本だが、彼らは緊張しきって必死で読む。終わると受講生から盛大な拍手が沸く。 すると、その瞬間に変わるのだ。うろたえながらも照れくさそうに笑い、能面のような顔にふっと表情が生まれる。それまで交流不能としか思えなかった少年たちの間に、いきいきとした感情が流れだす。 人から拍手などもらったことのない人生だったのだろうか。おまえはダメだと否定され続けてきたのかもしれない。その瞬間、きっと小さな自己肯定感が芽生えたのだ。 そんな絵本の授業を経て、3時間目からは詩を書いてもらった。「どんなことを書いてもかまわないです。何も書くことがなかったら、好きな色について書い