恣意的に捏造される物語 誰しもが聞き覚えのあるジャクリーン・ケネディの愛称を題名に冠すからといって、公開中の映画『ジャッキー ファーストレディ最後の使命』(原題:Jackie)が、伝記映画だと勘違いしてはなるまい。 パブロ・ラライン監督の最新作は、近年ハリウッドで流行りのいわゆるバイオピック(biopic=伝記映画)とは一線を画すだけでなく、むしろ伝記であろうとする誘惑に、最後まで勇敢に抗い続ける映画だからだ。 ハリウッドが繰り返し描いてきたジョン・F・ケネディ大統領の暗殺事件を、今度は大統領夫人に焦点を当てて、いささか悲劇的なメロドラマに仕立てあげるのかという予想を、映画『ジャッキー~』は、冒頭から裏切ってくれる。 暗殺の1週間後、様々なジャーナリストが書いた記事が、さも事件の真相であるかのように社会に流通する様子に、苛立ちを隠せないジャッキーの姿で、映画は幕をあける。彼女は、ついに自ら