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ブックマーク / itlaw.hatenablog.com (11)

  • SES契約における期間途中の撤収の責任 東京地判令3.12.20(令2ワ20021) - IT・システム判例メモ

    顧客からのクレームに納得できず、SES契約の期間途中に(ほかの案件も含めて)要員を撤収させたこと適否が問題となった事例。 事案の概要 X社は、下記の図のとおり、A社、B社、C社からそれぞれシステム開発に関する業務を受託し、それぞれの案件に対応する要員a、b、cを、Y社から調達し、その業務を担当させていた。1カ月当たりの単価を定め、比較的短期間(1カ月から3カ月)の契約期間が定められ、必要に応じて延長、更新が行われていたので、いわゆるSES契約といえる形態だったといえる。 このうち、A社にアサインされたaに関し、A社からパフォーマンスが低いとのクレームを受けたXは、2020年5月8日、Yに対し、A社は契約途中の5月22日を以て解除を希望していることなどを伝えた。 クレームの内容が、「GitRailsのコマンドがわからないレベルだ」などというものであったが、Yは「現場レベルでの作法の話だろう

    SES契約における期間途中の撤収の責任 東京地判令3.12.20(令2ワ20021) - IT・システム判例メモ
  • アジャイル開発と開発言語の合意・未完成の責任 東京地判令3.9.30(平31ワ3149) - IT・システム判例メモ

    アジャイル開発の紛争事例。ポイントは、①契約の性質は請負か、②開発言語や納期などの債務の内容の合意、③損害の範囲。 事案の概要 X(設立予定会社の発起人)は、Yに対し、設立予定会社の営業に用いるウェブサイト(件ウェブサイト)の開発を委託し、件契約を締結した。開発報酬は月額2000米ドル、メンテナンスは月額800米ドルと定められた。いわゆるアジャイル方式で行うことが合意され、契約書は後追いで取り交わされた。 件ウェブサイトは、件契約締結時点において第三者が開発した原型が存在しており、それに追加・改良していくことが前提となっていた。 Xは、Yによる開発が遅延し、件ウェブサイトがまったく機能しないとして、Yに対し、件契約の債務不履行による損害賠償及び不法行為に基づく損害賠償として、既払代金相当額、逸失利益額、慰謝料、弁護士費用など、合計で約2000万円を請求した。 ここで取り上げる争

    アジャイル開発と開発言語の合意・未完成の責任 東京地判令3.9.30(平31ワ3149) - IT・システム判例メモ
  • 幹部による同業他社への引抜行為 東京地判令4.2.16(令元ワ17950) - IT・システム判例メモ

    大手コンサルティングファームの幹部が、競合に転職後、チームメンバーらに転職するよう勧誘した行為が、社会的相当性を逸脱するものであるかが争われた事例。 (件は、「IT・システム判例」ではないが、IT業界全般で起こりがちな話で注目を集める事案なので当ブログでも取り上げる。) 事案の概要 件の原告は、国際的プロフェッショナルネットワークグループのメンバー企業で、日においてコンサルティングサービスを提供するX(合同会社)で、被告のYは、Xの元業務執行社員で、セキュリティ関係の部門(aチーム)の責任者を務めていた。 Yが、Xの在任中及び退職後に、部下らを自らの転職先であるeに転職するように勧誘したことについて、Xは、社内規程や誓約書に反するものであるとして、債務不履行または不法行為に該当すると主張し、規程に基づく損害約4000万円、調査費用等約6000万円等を含む約1億1000万円の損害賠償を

    幹部による同業他社への引抜行為 東京地判令4.2.16(令元ワ17950) - IT・システム判例メモ
  • ハッキングによる暗号資産流出の責任 東京高判令2.12.10金商1615-40 - IT・システム判例メモ

    不正アクセスによってビットコインが外部に不正送付されたユーザが、暗号資産(仮想通貨)交換業者に対して損害賠償等を求めた事案において、利用規約中のパスワード管理に関する免責条項によって免責されるか否かが問題となった事例。 事案の概要 Xは、Yが運営する仮想通貨*1の取引、売買等を行うサービス(件サービス)を利用するためにユーザー登録を行った(Xのアカウントを「件アカウント」という。)。 平成30年1月27日に、何者かが韓国のIPアドレスから件アカウントにログインをし、短時間の間に件アカウントに保管されているビットコイン(合計で、約7.9BTC)が外部に送付(窃取)された。 件サービスでは、外部コインアドレスに仮想通貨を送付するときには、二段階認証を行う必要があり、二段階認証は、ログインパスワードの入力に加えて、ワンタイムパスワードを入力する方法だった。ワンタイムパスワードの発行方法

    ハッキングによる暗号資産流出の責任 東京高判令2.12.10金商1615-40 - IT・システム判例メモ
  • ハッシュタグ使用と商標的使用 大阪地判令3.9.27(令2ワ8061) - IT・システム判例メモ

    他社のブランド名のハッシュタグを使用したメルカリの出品者に対して,商標権侵害を認めた事例。 事案の概要 Xは,指定商品を「かばん類」などとする商標「シャルマントサック」(標準文字。件商標)の商標権者であり,Y(個人)は,自らが製造するかばんなどの商品をメルカリに出品して販売していた。 Yの商品紹介ページには,以下のように「#シャルマントサック」というハッシュタグ表示があった。 Xは,件商標と同一ないし類似する表示を行っているとして,件商標権に基づいて,表示行為の差止め(商標法36条1項)を求めた。 ここで取り上げる争点 (1)商標の「業として」の使用 商標法2条1項では「業として」商品を生産等する者が使用するものを「商標」としている。Yは,余暇を使用して趣味のバッグを製作していたにすぎないから「業として」には当たらないと主張していた。 (2)商標的使用の有無 Yは,ハッシュタグは,ウ

    ハッシュタグ使用と商標的使用 大阪地判令3.9.27(令2ワ8061) - IT・システム判例メモ
  • 1ライセンスでの使用可能な範囲の解釈と,違約金合意の有効性 東京地判令3.3.24(平30ワ38486) - IT・システム判例メモ

    ソフトウェアの1ライセンスで許諾される利用可能な範囲と,通常料金の10倍という高額な違約金を定める条項の有効性が問題となった事例。 注:知財高判令3.11.29(令3ネ10035)にて,原審が維持されている。特に特筆すべき個所はない。 事案の概要 Xは,メタボリックシンドロームに着目した健康診査及び保健指導に関するデータ作成用のプログラム(件プログラム)の著作権者である。件プログラムには,平成30年のアップデート前の件旧プログラムと,アップデート後の件新プログラムがある。 Xは,Y社と,平成20年8月に件旧プログラムの使用許諾契約1ライセンス分(件平成20年契約)を締結し,Yは,件旧プログラムを使用していた。その後,平成30年3月に件プログラムがアップデートされ,Yとの間で件新プログラムの使用許諾契約(件平成30年契約)が締結された。件平成30年契約では,契約で明示さ

    1ライセンスでの使用可能な範囲の解釈と,違約金合意の有効性 東京地判令3.3.24(平30ワ38486) - IT・システム判例メモ
  • 脆弱性対応(Heartbleed)の責任の所在 東京地判令元.12.20(平29ワ6203) - IT・システム判例メモ

    クレジットカード情報漏えい事故に関し,その原因の一つと考えられる脆弱性対応が運用保守業務に含まれていたか否かが争われた事例。 事案の概要 Xは,Xの運営する通販サイト(件サイト)を第三者に開発委託し,運用していたが,その後,2013年1月ころまでに,Yに対し,件サイトの運用業務を月額20万円で委託した(件契約)。件サイトはEC-CUBEで作られていた。なお,XからYへの業務委託に関し,契約書は作成されておらず,注文書には「件サイトの運用,保守管理」「EC-CUBEカスタマイズ」としか記載されていない。 2014年4月には,OpenSSL*1の脆弱性があることが公表されたが*2,件サイトでは,OpenSSLが用いられていた。 2015年5月ころ,Xは,決済代行会社から件サイトからXの顧客情報(クレジットカード情報を含む)が漏えいしている懸念があるとの連絡を受け(件情報漏えい)

    脆弱性対応(Heartbleed)の責任の所在 東京地判令元.12.20(平29ワ6203) - IT・システム判例メモ
  • 取締役退任後の引継義務履行としてのパスワード開示請求 大阪高判平31.3.27(平30ネ1767) - IT・システム判例メモ

    在職中に業務に関するインスタグラムのアカウントを担当していた取締役に対し,パスワードの開示等を求めた事案。 事案の概要 Yは,X社の代表取締役として,個人のgmailアドレスを用いてインスタグラムのアカウント(件アカウント)を作成し,Xが販売していた商品の写真等を投稿していた。Yは他にも,元ラグビー日本代表選手であったことから,件アカウントには仲間のラグビー選手の写真なども投稿されていた。なお,件アカウント名の一部には,Xのブランド名が含まれていた。また,アカウントのホーム画面にはXのウェブサイトのリンクが設置されていた。 Yは平成29年5月1日にXの代表取締役を退任し,取締役も辞任した。その後,Xは,件アカウントにログインできないことから,商品の写真を投稿することができず,利用者が減少して営業上の損害を被ったとして,Yに対し,取締役辞任に伴う引継義務(民法645条,会社法330条

    取締役退任後の引継義務履行としてのパスワード開示請求 大阪高判平31.3.27(平30ネ1767) - IT・システム判例メモ
  • リツイート行為と著作者人格権最判令2.7.21(平30受1412) - IT・システム判例メモ

    話題となっていたリツイート行為と著作権・著作者人格権侵害に関する事案の最高裁判決。 事案の概要 下記の原審(知財高判平30.4.25)のエントリでも紹介したが,ざっと繰り返すとつぎのような事案である。 itlaw.hatenablog.com 職業写真家であるXは,Xの著作物である写真(件写真)を,アカウントAがツイッターアカウントのプロフィール画像に設定したこと,アカウントBが件写真を含むツイートをしたこと,アカウントCらが当該ツイートをリツイートしたことについて,著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権侵害に当たるとして,米ツイッター社に対し,発信者情報の開示を求めた事案である。 一審(東京地判平28.9.15)では,リツイート行為については,著作権侵害,著作者人格権侵害ともに否定したが,原審では,リツイート行為について,複製権侵害,公衆送信権侵害を否定したものの,リツイート行

    リツイート行為と著作者人格権最判令2.7.21(平30受1412) - IT・システム判例メモ
  • モバゲー会員規約における免責条項の差止 さいたま地判令2.2.5(平30ワ1642) - IT・システム判例メモ

    B2Cサービスの規約中における「当社は一切損害を賠償しません」という条項が消費者契約法が定める不当条項に該当するかが争われた事例。 事案の概要 件は,消費者契約法(法)13条1項所定の適格消費者団体であるNPO法人Xが,Y(DeNA)が運営するポータルサイトM(モバゲー)が提供する会員規約に,法8条1項に定める不当条項が含まれているとして,Yに対し,法12条3項に基づいて,下記条項のうち7条3項及び12条4項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示の停止等を求めた事案である。 7条(会員規約の違反等について) 1 M会員が以下の各号に該当した場合,当社は,当社の定める期間,サービスの利用を認めないこと,又は,M会員の会員資格を取り消すことができるものとします。(略) a 会員登録申込みの際の個人情報登録,及びM会員となった後の個人情報変更において,その内容に虚偽や不正があった場合,または重

    モバゲー会員規約における免責条項の差止 さいたま地判令2.2.5(平30ワ1642) - IT・システム判例メモ
  • コインハイブ事件控訴審判決 東京高判令2.2.7 - IT・システム判例メモ

    マイニングツール,Coinhiveをサイトに設置し,閲覧者にツールを実行させていたことについて,不正指令電磁的記録保管罪の成否が問題となった事件の控訴審判決。一審無罪判決から約10カ月たったところ,高裁で逆転有罪となった。弁護人・平野敬先生より判決文を見せていただいた(ブログで紹介することについても了解を得ています。)。 事案の概要及び原審の判断 当ブログで原審を紹介したので,そちらを参照いただきたい。 itlaw.hatenablog.com 原審では,刑法168条の2第1項の「不正指令電磁的記録」の該当性について,その要件である「反意図性」は肯定したが,社会的に許容されていなかったとまでは言えないとして,「不正性」を否定するとともに,目的要件も否定し,無罪とした。 ここで取り上げる争点 原審同様,反意図性(「その意図に沿うべき動作をさせず,又はその意図に反する動作をさせる」」)と不正性

    コインハイブ事件控訴審判決 東京高判令2.2.7 - IT・システム判例メモ
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