今年は明治維新から150年となる。三選を目指して自民党の総裁選に出る安倍晋三総理大臣も、それを意識してか、出馬表明の際に「薩長同盟」という言葉を用いて気勢を上げた。 明治維新といえば、現代の政治家や企業家が、自身の行動をドラマタイズするために頻繁に引用するイベントだ。吉田松陰、坂本龍馬をはじめとした英雄が、日本という国家の夜明けのために活躍したイメージがあるからだろう。 しかし、その英雄たちが、「天皇による親政」を求めて行動を起こしたという重要な事実は忘れられがちだ。明治期の日本を描き、日本人の「明治観」に大きな影響を与えてきた司馬遼太郎の作品からも、天皇が(半ば意図的に)欠落していた。「司馬史観」に影響を受けた(政治家を含む)人々のなかには、天皇と維新の関係について意識が薄い人もいるかもしれない。 同時に戦後教育もまた、明治維新における天皇の役割、位置づけを過小評価してきた。 生前退位を