欧州が危機に見舞われていなかったのは一体いつのことだったろう。それを思い出すのがだんだん難しくなってきた。 EU(欧州連合)はギリシャにおける”火事”を消し止めたものの(とはいえ燃えさしはまだくすぶっているのだが)、今度は対応しきれないほどの数の難民の流入に直面することになった。ロシアがウクライナを侵略したことで既に深刻化していた対ロ関係は、ロシアがシリアに軍事介入したため、さらにややこしさを増している。そして英国がここ数年目指してきたEU加盟条件の再交渉は、「Brexit(ブレキジット=英国のEU離脱)」という結果になりかねない一か八かの事態に展開しようとしている。 この「恐怖の巣窟」は別にして、貿易協定の締結は容易なはずだった――。欧州のリーダーたちは2013年、EC(欧州委員会)に対して米国とのTTIP(環大西洋貿易投資協定) 交渉を始めるよう指令を出した。そのとき彼らは協定の締結に
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