第146回芥川賞を受賞し、記者会見のぶっきらぼうな質疑応答で話題となった田中慎弥さんは、2009年4月から2011年4月まで朝日新聞山口版で「となりのソファ」というエッセーを連載していました。その最終回を、期間限定で公開します。 ★芥川賞の記者会見はこちらから ◇ 小さな旗 田中慎弥 2011年4月11日掲載 今日が最後なので何かそれらしいことを書こうと思っていたところへ、東北・関東を襲う地震。作家なのだから、世の中の重大な出来事には背を向けて、こんな非常時になんと不謹慎な、と眉をひそめられるようなことを書かなくてはならない筈(はず)だが、テレビに映し出される、もの言わぬ地震と津波の圧倒的な威力を見ていると、自分が何かを言ったり書いたりしたところでなんの意味もないのではないか、と感じてしまう。 ここで言う、なんの意味もない、というのは、自分が災害に対して何も出来ない、ということだけではな
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