奏多が学校から帰ってきて、玄関の鍵を開けているとき、宅配便が届いた。 「あおぞらファーム」というロゴが印刷されたダンボール箱は、大きくはないけれどずっしりとしている。見覚えのある箱だ。なかみは有機栽培の柚子で、以前は毎年のように、祖父が取り寄せていた。 送り状ラベルを見ると、届け先が奏多の名前になっていて、依頼人は祖父だった。 (何かのまちがいじゃないかな) 奏多は首をかしげた。 数年前からもの忘れが多くなった祖父は、今年に入って急に症状が進み、夏には専門の施設に入居した。家族の顔もわからなくなる病気だと聞いていたものの、まっ先に自分が忘れられてしまったときは、ショックだった。 施設へは、夏休みに両親と一緒に訪ねたきりだけれど、車椅子に座った祖父は、表情もとぼしく、ほとんど何もしゃべらなかった。 とても宅配便を手配できるとは思えない。 奏多は、送り主の農園に電話してみることにした。 「はい