失礼いたします。早川書房でSFマガジンの編集に18年ほど携わり、現在は国内フィクション全般を統括する立場にある塩澤と申します。先日、弊社より刊行の東直己氏『バーにかかってきた電話』の映画化「探偵はBARにいる」の試写を観て、「翻訳ハードボイルドの書籍編集を志して早川書房に入社した僕の想いが、ほぼ叶えられてしまった気がしたのは確かです」というツイートをしたためました(@shiozaway)。自分がいかにSF者になりきれていないか、については以前〈本の雑誌〉に書かせていただきましたが(現在は『SF本の雑誌』所収)、今回は自分がいかに必然的に(自然発生的に)ハードボイルド者になりきったか、について書かせていただきたいと思います。 南信州の山奥の文武両道の優等生だった私は、実は陰で角川文庫の片岡義男(赤背)と西村寿行(黒背)を読みふけり(つまりハードボイルド的なものの、聖と俗の両極端)、このような