親が認知症になったら家族でも定期預金は引き出せなくなる――。エッセイストの鳥居りんこさん(57)は、知人にそう言われたときの衝撃が忘れられない。 2年前に亡くなった鳥居さんの母親(享年84)は当時、有料老人ホームに入居。診断は受けていなかったが、認知症が疑われる症状が増えていた。95歳までの前提で入居費などを見積もり、母の預金額を確認していた。もし母の口座が凍結されて自分が立て替えなければいけなくなったらどうしよう、と焦った。 成年後見制度について調べたこともある。しかし申し立て手続きなどがあまりに煩雑で断念。「しかも、自分ではなく司法書士などが後見人に選ばれたら、その人に払う報酬も必要になる。そんな余裕はないと思いました」 実行したのは、母の定期預金を解約、普通預金に移すことだった。普通預金なら母の了解を得てキャッシュカードでおろせると考えた。母と2人で銀行へ。窓口で担当者から生年月日を