著者の朴裕河さんは1957年、ソウル生まれの女性。日本に留学して慶應義塾大学を卒業し、早稲田の大学院にも学んだ。専攻は日本近代文学。題名にある和解とは、植民地支配をめぐって加害者である日本と被害者たる韓国の間のこと。本書は07年度の大仏次郎論壇賞を受賞した。 日本語版あとがきに、こうある。 「韓国語版では韓国批判をやや強く、日本批判をいくぶん控え目にしていた。しかし日本語版を出すにあたって、日本への批判を少し加筆した。その理由は、この本をその場に必要な本にしたかったからである」(237ページ)。 著者のこのスタンスに、酔流亭はまず敬意を表する。批判的知性とは、こうしたものだろう。 そして著者の批判は日韓双方の社会にある偏狭な民族主義へ向かうのだが、著者の言葉にかかわらず、韓国のナショナリズムに対して、批判はより厳しいように思われる。それは朴さんが韓国の人であって、自国の問題にまず向き合わな