やむを得ないこととは言いながら、人を斬った慎之介は逆に恨みを買い、命を狙われることになる。彼が逃げ込んだ先はあやめ横丁という町だったが、ここで暮らす人たちはみな訳ありの者ばかりだった・・・。 命を狙われ、あやめ横丁から出てはいけないといわれた慎之介。だが、慎之介ばかりではない。ここで暮らす人たちもまた、あやめ横丁から出ては暮らしていけない事情を抱えていた。ひとりひとりの事情が明らかになるにつれ、やりきれない気持ちになるのは慎之介ばかりではない。私も同じ気持ちになった。特に太吉の身の上に起こったできごとは、読んでいてつらかった。幼い心に、どれほど深い傷を負ったことか・・・。 つらいできごとを味わい、心に傷を負った者たちだから、人を思いやる気持ちも強いのだろう。あやめ横丁の人たちはみなやさしい。居心地がいいあやめ横丁だが、やがてそこを出て行かなければならない慎之介・・・。知り合った伊呂波やあや