人気の痒み止めの薬「王珍膏」を扱う瓶屋のあるじ新兵衛が殺された。その斬り口は、少し前に殺された身元不明の男のものと同じだった。ふたりのつながりをたどるうちに、封印されていたはずの過去のできごとがしだいに浮かび上がってきた・・・。ぼんくらシリーズ第3弾! よくこれだけたくさんの人を登場させたものだと感心する。単行本には付録として人物相関図がついていたので、本当に助かった。 身元不明の男の事件と瓶屋のあるじの事件。複雑な人間関係やすれ違う人の心が、これらの事件を引き起こしたのかもしれない。その辺の事情を、作者は巧みに描いている。人は、相手を思いやる温かい心を持っている。だがそれと同時に、人は心の中に暗く冷たい闇も抱えている。闇が心を支配したときに、人は鬼になる・・・。 かなりボリュームのある作品だが、作者はよくまとめたと思う。構成力は抜群!それに描写も巧みで、読んでいると自分も登場人物のひとり
ある事件がもとで心に深い傷を負い、神田の三島屋という袋物屋を営む叔父夫婦のもとで暮らすことになったおちか。彼女は、人びとが心の内に抱える「不思議」を聞き出していた。ある日おちかは、「紫陽花屋敷」と呼ばれる空き屋敷にまつわる不思議な話を聞く。そこには、意外な「不思議」が隠されていた・・・。表題作「暗獣(あんじゅう)」を含む4話を収録。三島屋変調百物語シリーズ2。 まずひと言。うまい!本当に宮部さんはうまい!それぞれの話の中に込められた作者の思い。そのひとつひとつが、読んでいてしっかりと伝わってくる。きちっとしたテーマを持ち、ストーリーを構成していく。読み手をしっかりと物語の中に引き込んでいくその巧みさには、ただただ感心するばかりだ。 どの話も甲乙つけ難しという感じだが、特に心に深く響いたのは「暗獣」だった。くろすけがなぜ生まれたのか?そして、くろすけの宿命とは?人とくろすけとのふれあいがほの
花菱英一の両親は、結婚20周年を機に念願のマイホームを購入する。その家は、もと写眞館だった築33年の怖ろしく古い家だった。「小暮写眞館」の看板をそのままにしていたため、ある日心霊写真が持ち込まれる。英一は、その謎解きに乗り出すが・・・。4編を収録。 心霊写真・・・。英一により、その写真に隠されたさまざまな人たちの思いが明らかになっていく。人それぞれ、いろいろな生き方がある。山あり谷あり。そんな人生が写真の中に凝縮されていて、読んでいて胸に迫るものがあった。そのほかにも、小暮写眞館の幽霊騒動の中で見えてきた英一の弟、ピカの苦しみにはホロリときた。「何気ないしぐさや言葉の中に、これほどの苦悩が秘められていたのか!」そう思うと、本当に切なかった。生と死についても、考えさせられた。 どの登場人物も性格や心情が細やかに描かれていて、作品を幅も深みもある魅力あるものにしている。700ページありとても長
その風は天狗風と呼ばれた。その風が吹いたとき、娘が神隠しにあったように忽然と姿を消した。不思議な力を持つお初は、右京之介とともに姿を消した娘たちの行方を追うが、得体の知れない何者かがふたりの前に立ちはだかった・・・。霊験お初捕物控2。 文庫本で564ページ。怖ろしく長い作品だが、構成力がとてもよく、長さをまったく感じさせない魅力ある話の展開になっている。次々に行方不明になる娘たち。そのときに吹く不思議な風の正体は?お初と右京之介がしだいに真相に迫っていく様を、息詰まるような気持ちで読んだ。また、登場する人たちの描写もていねいで、読んでいるとその人物像がくっきりと浮かび上がってくるようだった。 この世の中、怖ろしいのは妖怪や幽霊などではない。人の心や、人の思いから作り出される怨念だ。そのことをいやというほど思い知らされた。人は、仏にも鬼にもなれる。そのきっかけはほんの紙一重の差しかない。だが
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