トランプ第二期政権が掲げる「米国第一主義」は、中東政策をバイデン政権の混乱から転換させる看板として喧伝されるが、このスローガンは新たな戦略というより、既存の枠組みをトランプ流に再解釈する修辞に近く、バイデン政権とトランプ政権の限界は近似的である。 「米国第一主義」の修辞と実態 第二期トランプ政権は「米国第一主義」を掲げ、米国の経済・地政学的利益を最優先するという修辞を掲げている。JD・バンス副大統領は2025年6月の海軍士官学校演説で、従来の「国家建設」や内政干渉からの脱却を宣言し、サウジアラビア、カタール、UAEとの数兆ドル規模の投資や武器取引、フーシ派やハマスとの直接交渉を成果として強調する。しかし、2025年1月のガザ停戦合意は、バイデン政権の2024年5月提案を基盤に、トランプの強硬な発言(「ハマスが人質を解放しなければ地獄が待っている」)と特使スティーブ・ウィットコフの関与で加速