2012年03月05日11:30 「笑っていいとも」をノベライズする Tweet NOVELIZE OR DIE 第一回 「髪、切った?」 思わず口に出し、そう訊いた。 そう訊かずにはいられないほど、彼女はその自慢の黒髪を、 バッサリと切り落としていた。 「はい、今度のドラマの、役作りで…」 彼女はすこし、はにかんだように応えると、視線をテーブルに落とした。 先ほど手渡された番宣のポスターから、そのことは分かっていたはずだった。 そうか、もう主演を張れるほどに、成長したのか… 森田の脳裏に、はじめて彼女に出会った日の光景が、まざまざと蘇った。 誰からの紹介だったか、おそらくは事務所の先輩あたりだろう。 初出演の彼女は、緊張のあまり子鹿のように震え、 舌足らずの声は消え入りそうなほど小さかった。 間近で見ていた森田は、この震えがテレビに映りはしまいかと、心配したほど