日本の映画界で、映画監督や製作者などが次々と告発され、#MeToo運動の波が広がっている。日頃映画を楽しんでいるわれわれ観客も、このような業界の問題について態度を迫られつつある。 そんな昨今、海外でまた大きな動きが起こった。日本で2020年に公開され、局所的ながら大きなインパクトを与えることになった、フランスの恋愛映画『燃ゆる女の肖像』(2019年)。この作品で圧倒的な演技を見せ、これまでにも多くの賞を獲得している人気俳優アデル・エネルが、子役時代から長年身を置いていた映画界から引退し、舞台での活動に専念することを表明。少なくない映画ファンを落胆させているのだ。 このたびのエネルの決断は、ドイツのメディア「FAQ」のインタビュー(*1)のなかで述べられた。さらにそのなかでエネルは、「去ることは闘うこと」と発言している。しかしなぜ、映画界からの引退が「闘争」になるのだろうか。ここでは、その発
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