折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto) あれほど緊張して硬くなり、持ち前のしなやかな滑りを失った羽生結弦の演技は初めて見た。12月23日の全日本フィギュアスケート選手権、男子ショートプログラム。最終滑走者だった羽生は、直前の6分間練習では成功していた最初の4回転+3回転が、3回転のみになってしまい、コンビネーションジャンプをつけられなかった。 次のトリプルアクセルから何とか立て直したが、滑りは小さくなって伸びを欠き、しなやかに情感を表現する本来の滑りは見られないまま。本人も「あんなに硬くなったのは初めてですよ」と苦笑するほどだった。「これまでショートプログラムの演技順は1番目か2番目だったので、いつもならもう終わっているころになっても自分の順番がくるのを待っている時間に対応できず、ちょっと