360 のない生活は、すべての文明の燃え尽きたあとの地球一面にひろがる砂漠を往く旅に似ている。ここは希望も絶望もなくただ乾いている。目的地はなく、帰る場所もない。生命の一切は死に絶え、晩年の巨大な太陽が地表を赤々と照らしている。おれの肉体もたぶん朽ち果ててこの星のどこかの砂になった。ただ意識だけがあり、それすら徐々に失いつつある。旅などではないかもしれない。ただ風に運ばれていく砂漠の変化が、移動しているという錯覚を抱かせるのかもしれない。なんの指標もなく曖昧なこの世界で、自分がひとつところに立っているなどとも思えないのだが。 おそらくは乾く前ここにあったすべてはなにひとつなくなっていない。ただ形を失い砂になり、混じり合い砂漠になった。時計もカレンダーも砂になったから、ここに時間はない。指すべきものが砂になれば、意味も言葉も砂になっていく。抽象概念も砂まみれになってやがては砂漠に沈む。ただ星