レトリカの擁護 帰納法の提唱や4つのイドラ説をもって、フランシス・ベーコンを「近代科学の祖」としてしまうなら、いささか公平さを欠くことになってしまうだろう。第一、デカルトのクリティカ(あるいは数理的学)に反旗を翻しレトリカ(あるいは人文的知)を擁護したヴィーコが(→デカルト対ヴィーコ)、なぜ自分の守護聖人に他ならぬベーコン卿を選んだのかがわからなくなる。 未完に終わった『大変革』の手始めに、『学問の進歩』においてベーコンは学問の擁護と総点検を試みる。現行の学問に何が「欠けている」かを指摘するために、ベーコンは人間知性の分類から網羅的な学問体系(「知性の地球儀」)を構築する必要があった。これは、現在の学問のみならず、人間知性の可能性の総体、つまり未だ存在しないものもかつて存在したものも、すべて含めるという意味で「網羅的」であった。彼の批判が、スコラ学者がいかに「人間知性の可能性」を縮減し、