木村光江「強姦罪・強制わいせつ罪の研究―ジェンダーの視点から」(平成18年3月)P52 六 単純所持の当罰性 特定少数への送信を処罰することとなると、それとの権衡上、そもそも単純所持を処罰する必要が生ずるのではないかとの疑問がある。なぜなら、不特定多数への頒布目的の所持は、個人的な単純所持との区別が客観的にも主観的にもある程度明白に区別が可能であるのに対し、特定少数への送信目的での所持は、単純所持との区別が理論的にも、また事実上も極めて困難だからである 単純所持の当罰性については、旧法制定時においても大きな論点となった。サイバー犯罪条約上は、単純所持罪についての留保が可能であるから、これを留保すれば、当面問題は生じない。 しかし、3つの点で検討すべき課題があるように思われる。 (イ)前述のように、特定少数者への送信を処罰する規定を設けると、当該行為は、事実上単純所持を処罰することと区別が極