医療界では平成十八年を「医療崩壊元年」と呼ぶ。福島県で産婦人科医が逮捕され、奈良県では分娩中に意識不明になった妊婦が十九病院から転送を断られて死亡。昨夏も救急搬送の妊婦が九病院で断られ死産した。その一方で、疲れ果てた勤務医が各地で一斉辞職。十九年半ばから救急医療崩壊報道に火が付いた。 この取材を始めたのもそのころだ。それから一年。風向きは一変した。 新臨床研修医制度の導入に伴う医局の崩壊が引き金となり、仕事量の増大に耐えていた医師が悲鳴を上げ、政府は医師不足を認めた。この六月、医学部定員を五百人以上増やす方針が固まり、公立病院の財政支援見直し検討も決まった。 また、一部の三次救急病院では安易な時間外受診を防ぐため、緊急性を要しなかった急患には特別料金の徴収を始めた。 そんな中、高知医療センターでも六月、救急外来の当直体制が変わった。 これまでは、救急車からの直通電話対応をする「ベ