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  • 【医師が危ない】第5部 難局の向こうに (15)試練耐え巨木へ

    医療界では平成十八年を「医療崩壊元年」と呼ぶ。福島県で産婦人科医が逮捕され、奈良県では分娩中に意識不明になった妊婦が十九病院から転送を断られて死亡。昨夏も救急搬送の妊婦が九病院で断られ死産した。その一方で、疲れ果てた勤務医が各地で一斉辞職。十九年半ばから救急医療崩壊報道に火が付いた。 この取材を始めたのもそのころだ。それから一年。風向きは一変した。 新臨床研修医制度の導入に伴う医局の崩壊が引き金となり、仕事量の増大に耐えていた医師が悲鳴を上げ、政府は医師不足を認めた。この六月、医学部定員を五百人以上増やす方針が固まり、公立病院の財政支援見直し検討も決まった。 また、一部の三次救急病院では安易な時間外受診を防ぐため、緊急性を要しなかった急患には特別料金の徴収を始めた。 そんな中、高知医療センターでも六月、救急外来の当直体制が変わった。 これまでは、救急車からの直通電話対応をする「ベ

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    REV 2008/07/11
    「生き残るのは最も強いものや賢いものでなく、最も変化に対応できるものである」 
  • 【医師が危ない】第5部 難局の向こうに (13)「何もかも」は無理

    高知医療センター脳外科の森雅徳部長(56)、福井直樹医師(40)の脳卒中治療に懸ける熱い思いを聞きながら、私は複雑な気持ちになった。というのは、世間はその熱意を、それほどしっかり受け止めてくれているとは限らないからだ。 この取材中、がっかりしたことがあった。脳外科の不眠不休の奮闘を知人に話したところ、「そんな寝ていない先生に手術してほしくないですね」と、あっさり言われた。 自らの命を削って患者の救命をしているのだが、その思いは伝わりにくい。それどころか万が一、ミスが起これば「寝不足」は通らない。患者側からすれば「当直医は昼間、休養を十分取って夜中の急患に備えている」と思っても当然だろう。 患者ばかりではない。地域のかかりつけ医にも似たような現実がある。例えば、老人保健施設で休日や夜間に入所者が急変した時、来は嘱託医に連絡が行くはずが、意外とそうならない。 電話がつながらなかった

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    REV 2008/07/11
    これはよい。 すばらしい報道。
  • 【医師が危ない】第5部 難局の向こうに(14)あいまい、長時間労働

    高知医療センターの医師の一カ月の残業が二百時間という激務を、監視役の高知労働局(高知市南金田)はどう見ているのか。私の問いに幹部は言葉を選びながら答えた。 「もちろん問題がある可能性はあります。八時間を二十五日働くと二百時間でしょ。一カ月で二カ月分勤務しているようなものですから」 時間外労働は労使の合意、いわゆる三六(さぶろく)協定を結び、割増賃金を支払い、医師による健康指導などを受ければ認められる。月の上限は原則四十五時間だが、場合によっては特別条項で百時間を超えても違法ではない。 ―しかし、いくら特別条項でも二百時間は許されないでしょう。 「場合によっては法令違反ではないこともありますが、過重労働の防止という点からは当然、好ましくない。改善してもらうべきでしょう。ただ、人命を救うという職責から、結果的に長時間残業もやむを得ない場合があるかもしれません」 苦しむ患者を目の前に救

  • 【医師が危ない】第5部 難局の向こうに (9)異色の経営理念

    溝渕雅之医師(48)の新しい勤め先、岡山旭東病院(岡山市倉田)の現実に驚いていたら、院長、土井章弘医師(68)の実践もまた驚きだった。 最初のサプライズは、廊下の至る所に飾ってある絵画。「この絵はね、まず職員に喜んでもらいたいんです」 患者のためではないのかと聞くと、「それだと、職員はどうでもいいのか、となるでしょう。間違っているのでは」。 まさか、病院で「経営品質」の話が飛び出すとは。聞き慣れない言葉だが、「まず働く人間が幸せであってこそ、良い顧客サービスができる」という発想だ。 医師でありながら、この経営感覚。不思議に思っていると、溝渕医師が教えてくれた。院長は県病院協会会長であるとともに、県中小企業家同友会の代表理事でもあるという。経済界活動を重ねるうちに、経営者としての視点を獲得していた。 岡山大脳外科の講師を経て、昭和五十八年、四十八歳で香川県立中央病院の脳外科部長を辞

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    REV 2008/07/05
  • 【医師が危ない】第5部 難局の向こうに (7)幹部去り誤算次々

    島根県同様、瀬戸山元一氏の手腕に新病院開設の大役を委ねたのが高知県だった。 平成十二年四月、高知県立中央病院(四百床)と高知市民病院(四百十床)を統合する新病院の病院長予定者として着任した彼は五年後、全国初の大型統合に成功。高知医療センターを開院に導いた。 最大の難問は、病院に医師を送り込んでいる大学医局の壁だった。高知県立中央病院は岡山大、高知市民病院は徳島大主体の関連病院。性格の異なる病院の垣根をどう取り払うか。一つ間違うと、片方の大学の医師が総引き揚げになりかねないだけに、カリスマ性のある瀬戸山氏の招請は重要だった。 ある高知県内病院経営者は絶賛する。「国内で彼に勝るリーダーの素質を持つ人物はそういないと思った。夢を語れるし、学閥を封じる力も持っていた。素晴らしさを認めざるを得なかった」 行政関係者も「講演を高知で聴いた時は、当にすごいと思った。厚労省に人脈もあって、国策の

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    REV 2008/07/05
  • 【医師が危ない】第5部 難局の向こうに (3)現場救済策 次々

    ハイリスクで仕事のきつい診療科と、そうでない科では報酬格差を付けるべきだ―という話はあちこちで聞いた。公立病院勤務医の気持ちも長続きしないし、医師の卵も敬遠する。だが、実行するとなると、かなり難しいとも聞いていた。 「うちはもうやってますよ」。山形大医学部長の嘉山孝正・脳外科教授(58)はさらりと言った。 「医療危険手当ね。脳外科だけじゃなくて、リスクの高い診療行為を行った場合には手当を出しているんです。二年前の七月から、全国に先駆けてね」 高額の技術料が伴う手術には、技術料の一割を手術に立ち会った医師の数で分けているそうだ。麻酔科医も自分たちの技術料を分ける。夜中の緊急手術だけではない。昼間の予定手術もだ。 「何にでもというわけじゃないですよ。命にかかわる手術。特に血が出るものですね」 対象は脳外科、心臓外科、循環器内科、内視鏡手術の消化器内科など。 それだけではない。待機当

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    REV 2008/07/05
    サービス業は、「無料サービス」を意味しない。DoSで値引きを迫るのは、どうかと思う。対等条件下での事前交渉は仕方ないけど。
  • 【医師が危ない】第5部 難局の向こうに (8)天国と地獄の差

    六月、岡山市郊外にある岡山旭東(きょくとう)病院を訪ねた。高知医療センターを辞めた溝渕雅之医師(48)に会うためだ。彼の言う「メリハリのある生活」の現実を確かめたかった。 どんな病院なのか。調べると実力派だった。 脳疾患と整形外科に特化。百六十二床で職員は三百五十人。通常なら三百床規模の手厚いスタッフ数だ。医師は三十人おり、脳外科医は八人。十八年度の手術数は脳動脈瘤(りゅう)のクリッピングが七十五例で中四国一位。脳腫瘍(しゅよう)は六十四例で五位だ(週刊朝日ムック「いい病院2008」より)。 設備も充実。MRIが三台もあり、そのうち一台は高知県では高知大付属病院にしかない高性能機種。また、脳腫瘍の定位的放射線治療装置「サイバーナイフ」は、日で三番目の導入。がん発見に威力のあるPET―CTも二台稼働している。 そんな病院なら結構忙しいはずだが、「残業? 四月は十時間。五月は二十時間

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    REV 2008/07/04
  • 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 みんな忙しい (1)わき出るドクター

    昨秋、高知医療センター(高知市池)の取材を始めて十一日目。大病院を象徴するような場面に出合った。夜間の救急外来に、医師がわき出るように次々と“出勤”してきたのだ。 発端は午後八時すぎ。郡部の病院から九十代後半の腸閉塞(へいそく)患者が転送されてきた。「不整脈もあり、心臓のペースメーカーの手術も必要かもしれない」という情報とともに。 救急車対応当直は整形外科の大森貴夫医師(35)だったため、消化器外科の待機当番医(47)が呼ばれた。彼は高知市の中心部で開催中の研究会に出席していたが、抜け出てきた。 百歳間近。手術に耐えられるかどうかを検討していると、やはり呼び出された循環器センターの当直医(45)が、心電図を見ていて叫んだ。 「MIや!」 心筋梗塞(こうそく)のことだ。救急外来はざわめいた。心疾患は命にかかわる。腸閉塞よりも心筋梗塞の解決が先だ。もし見落として腸の手術に入り、急変で

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    REV 2008/05/05
    「きこりのジレンマって知ってます? 仕事師のきこりは注文が次々来るから、道具の手入れも、新しく買いに行く時間もない。延々切りっぱなしで、切れ味が落ち、体もくたくた。効率がどんどん悪くなるんです」
  • 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 第2部・過酷な現場④当直明けも延々

    (4)当直明けも延々 高知医療センター取材の二日目は午前七時半、仮眠室で寝ているところを、脳外科の溝渕雅之医師(48)からのPHSで起こされた。 彼の目は充血していた。昨夜、新たに来た急患は幸い脳卒中ではなかった。変性疾患か薬の副作用による激しい頭痛だろうということで落着。その後、別の当直医が診ていた患者の相談に乗り、仮眠したのは五時前だった。 だが、その後も、夜中に手術した患者の容体悪化で二度、救急ICUから電話で起こされたそうだ。 朝を買うため一階のコンビニに入った。頭はもうろう、欲なし。何を買えばいいのか思い付かない。彼を見ていると、ゼリー飲料とパンを手に取った。「朝はこういうのしか胃が受け付けんのよ」。疲れているため、言葉がぶっきらぼうだ。 二階医局のソファでべながら、彼は黙々と新聞に目を通した。こちらは、恥ずかしながら見る気力すらわかない。 十分後、朝のカンファ

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    REV 2008/03/04
    収入は共産主義、経費は資本主義、医療従事者の扱いは軍国主義、患者の権利は民主主義。
  • (5)想像超すヘリパワー 医師が危ない-密着、高知医療センター脳外科 第1部・残業200時間の世界

    (5)想像超すヘリパワー 高知医療センターの負担増に拍車を掛けたのは、ヘリコプターだった。 「室戸にヘリポートができたでしょ」と脳神経外科の溝渕雅之医師(48)。県立安芸病院から脳外科が消える直前、平成十八年二月のことだ。 「あのころから東部の急患が、どんどん来始めたんです。どこから来てるか聞いたら、救急車は安芸方面から。ヘリも、それまであまり来なかった室戸からの要請で、突然のように舞い降りてね。午前中だけで二回、室戸へ飛んだこともあったから」 高知医療センターの屋上にはヘリポートがある。遠方で重症患者が出ると、高知空港から高知医療センターへ飛んできたヘリに救急医が乗って現場へ直行。室戸なら二十五分で往復し、一階の救急外来へ直行する。 当然、救命率は上がるし、それまで救急車で一緒に付き添ってきた医師も、病院を何時間も留守にすることがなくなり、へき地医療にとっても恩恵は大きくなった

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    REV 2008/02/16
    ヘリは一回70万。利用は税金。
  • 高知新聞:高知のニュース:社説:【妊婦救急搬送】 きめ細かな対策急げ

    妊婦の救急搬送受け入れをめぐる深刻な現状が、総務省消防庁の調査であらためて浮かび上がった。  昨年、ことしと奈良県で相次いだような悲劇の再発を防ぐため、国は受け入れを拒否する医療機関側の事情を詳しく分析し、早急に対策を講じる必要がある。  調査結果によると、昨年一年間に妊婦の受け入れを医療機関から三回以上断られた例は、全国で六百六十七件に上る。そのうち十回以上は四十五件あった。ことし八月、死産に至った奈良県の妊婦のようなケースはいつ起きても不思議でない。  拒否理由で多いのは容体が重いなど「処置困難」、「手術・患者対応中」などだ。ただし、拒否の背景には、地域ごとにさまざまな事情があるだろう。  例えば、地域に「救急医療情報システム」があっても十分に機能していなかったり、救急隊と医療機関側の情報共有が不十分だったり、などだ。個別事情の分析を踏まえたきめ細かな対策が欠かせない。  根

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    REV 2007/10/30
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