デザイン思考は、ビジネス用語の中でもっとも「誤解」されやすい言葉だ。ぼくは常々そう感じています。コモディティ化、シンギュラリティ、アライアンス、KPI、コンバージョン……。これらは、 「デザイン思考」より、一見して意味が分かりづらい言葉です。だから、これらにはじめて触れたとき、ぼくたちは何の先入観も持たず、理解に努めようとします。つまり、いきなり「誤解」することはありません。ところが、本書のテーマである「デザイン思考」はちょっと違います。 「デザイン」にしろ「思考」にしろ、言葉として馴染(なじ)みがある。だから、それら2つを組み合わせた「デザイン思考」という言葉も、なんとなく意味が分かった気になる。ビジネスシーンにもだいぶ浸透してきて、最先端のIT企業がこぞって取り入れているのも聞いたことがある。でも、 「一言で説明して」と言われたら、答えに窮してしまう――そんな人が少なくないのではないか