ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (9)

  • 人生は、競馬だ『優駿』

    とはいっても、けして美しい話ではない。一頭のサラブレッドを中心にした群像劇だが、どいつもこいつもロクでもない。女はビッチで男は亡者、それも銭だったり馬だったり権力だったり、様々な欲と修羅を抱えている。 だが、人間臭ければ臭いほど、サラブレッドが崇高に見えてくる。夢だの祈りだの、粘ついた欲望を綺麗に言い換えただけの願望を背負い込まされた馬が可哀想だ(この「馬が可哀想」というのも、わたしの勝手な想いだね)。そういう人間の弱さや悪意・狡猾さと、サラブレッドの美しさと闘争心が、見事なまでに対比をなしている。 構成が見事だ。優駿「オラシオン」を真ん中に、牧場主の息子、馬主、娘、秘書、そして騎手それぞれの視点が、章ごとに入替わり、全部で十章を為している。これは第1レースから第10レースを指しているのではないかと。そして、最終レースの日ダービーが終章、すなわち第11レースを暗示しているのかも。 それぞ

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    ROBOT_KUN
    ROBOT_KUN 2013/06/26
  • 「学校」をテーマにした本といえば

    好きなを持ち寄って、まったりアツく語り合うスゴオフ。今回は東洋大学の教室をお借りして「学校」をテーマにした作品をオススメしあう。 面白いなーと思ったのは、いろいろな「学校」があること。学校を舞台にした物語だったり、学校の課題図書で読んだことがあったり、人それぞれ。「学校といえばコレでしょ」と皆さんの頭にある“学校”に、それぞれの思い出や希望や毒が、正直に反映される。人によって「ど真ん中」「直球」「弩メジャー」のが違う。これは、いかに学校が多様かを物語っている。 まずは「ど定番」といいつつも多種多様の「学校」から。 灰谷健次郎『兎の眼』。新卒の女教師と、心を開かない少年の話。少年は蝿にだけ心を許す。なぜ蝿か?貧乏で、近所にゴミ処理場しかない家庭で、蝿しか飼えないから。これが物語後半になって花開く。わたしも読んだことがあるが、少年に寄り添っていた。これが大人の、親の視線からするとまた別。

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    ROBOT_KUN 2013/06/06
  • 夫婦はどこまで分かり合えないか『素晴らしき結婚生活』

    「この人は、誰なんだろう?」そう思う瞬間がある。 一緒になってずいぶんだから、記憶も感覚もずっと共有してきたから、お互い分かり合っているというのは、錯覚だ。何かのはずみで感情の齟齬が破裂すると、目の前の女が分からなくなる。とはいうものの、意見の不一致やら感情のもつれは、お互いさま。そういうのに自分を慣らしていくのが結婚生活なのだろう。 だが、夫が殺人鬼であると知ってしまったら、慣れることができるだろうか。二十七年の結婚生活、二人の子どもを大人に育て上げ、平凡だが満ち足りた日々が、ある出来事をきっかけに、「暗い容赦のない」ものへと変わる。 スティーヴン・キング特有の、緊張感のもっていきかたが素晴らしい。日用品や何気ない仕草を濃密に描写していくうち、抜き差しならぬ圧迫感を共有させるやり口は、長いことキングから遠ざかっていたにもかかわらず、懐かしい恐怖を味わわせてくれる(作が収録されている『ビ

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    ROBOT_KUN 2013/05/18
  • 巨匠ボルヘスが選んだ文学全集『バベルの図書館4 フランス編』

    ボルヘスが編んだ傑作短篇集に、どっぷり漬かる。 アメリカ編、イギリス編ときて、今回はフランス編なのだが、ボルヘスが狙ってヤったのかどうかは別として、お国柄というか、対照的というか、臭うくらい性質が際立っている。 ポーやメルヴィルの狂気と揶揄を堪能するのがアメリカ編なら、ウェルズやサキの残酷な寓意に震えるのがイギリス編になる。特に、トリックや意外なオチの宝庫はイギリス編で、後世のミステリ、幻想譚のネタバレ集になっている。初読なのに懐かしさがこみ上げる。 フランス編で目を惹くのが、悪意。人のもつ純然たる悪意が、あからさまに描かれる。厭らしいことに、憎しみや妬ましさといった“不純物”が入っていないのだ。まじりっけなし、真っ直ぐな邪悪に触れてしまえる。ブラックユーモアといえばサキ(イギリス編)が有名だが、ブロワの場合、登場人物に敵意を抱いているとしか思えない。無邪気ともいえる書き口で、無慈悲な運命

    巨匠ボルヘスが選んだ文学全集『バベルの図書館4 フランス編』
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    ROBOT_KUN 2013/05/11
  • 大事なのに、学校で教わらないこと『生きる技術』

    『生きる技術』とは、社会で生き延びる技術であり、世を渡るコツである。 くだらないところで、つまらない意地をはって、身をほろぼしてしまわないように、予め読んでおくといい。そういう意味で「タメになる」だから、息子の朝読にオススメしよう。 古今亭志ん生や司馬遷、マーク・トウェインからモンテーニュまで、「とっておき」の文章を集めたアンソロジーだが、一筋が通っている。それは、どの人生にも効くところ。つまり、立場や年代に応じて、読み替えができるんだ。 たとえば、斎藤隆介の「大寅道具ばなし」。大工に惚れ込んだ職人衆の聞き語りなのだが、この一文(一聞?)に惹かれる。「買えるから買おうじゃ駄目だ、買えなくても買っちまうんだ」と一念発起して、少ない稼ぎから捻出して、道具の良い奴良い奴を集めていくのだ。 仕事の腕は道具で決まる。道具さえ良ければいい、というのではなく、出来の上限は道具が設けるというのが真意ら

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    ROBOT_KUN 2013/05/06
  • 今すぐ使える『明日からつかえるシンプル統計学』

    まちがえるな、統計学は道具だ。統計は学ぶものではなく、使うもの。 これはわたし自身への戒言。だから、使い方を誤らない程度に理解していればいいし、そのために教科書をイチから読み込む必要も、Rをマスターする必要もない。もちろん様々な武器(統計手法)が使えるに越したことはないが、次のような問題と向き合っているなら、書をオススメする。 あと500人お客を呼び込むためには、いくら広告費が必要か? カスタードケーキがチョコパイに勝つには、「味の改良」と「販促キャンペーン強化」のどちらが有効か? クラス全体の成績が低迷している。国語と数学の両方が苦手な生徒だけ補習したほうがいいのか、全員に国語の補習をしたほうがいいのか 前任者から引き継いだデータが大量にあるが、それぞれの関係や着眼点がまとめられてない。どこから手をつければいいか? 社内のKPI(Key Performance Indicator :

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    ROBOT_KUN 2013/04/11
  • わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 子どもに死を教える三冊

    良い機会があった。遠い親戚が亡くなったのだ。 「良い」なんて不謹慎だけど、このご時世に大往生だから感謝しないと。家族総出で葬式に行く。テレビなどに任せず死の教育をやってきたつもりだが、百聞一見、葬式こそ最高の現場だ。 子どもに伝えたいたった一つのことは、以下に尽きる。 あんたまだ生きてるでしょ だから、しっかり生きて、それから死になさい しっかり生きてないと、ちゃんと死ぬことすらままならない…このメッセージをそのまま言っても分からない。まず、自分の「生」を大切にさせる。できるようになれば、家族の、ひいては他人の「生」へも目配りができるようになる。 自己であれ他者であれ、「生」を大切にできるようになれば、それを支える「生活」も大切にするだろうし、「生」を生み出す「性」も同様に扱えるようになる(はずだ)。 生の反対は死でない。しかし、死について考えることは生きる質(文字通りの "qualit

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    ROBOT_KUN 2013/04/06
  • 早川書房 X 東京創元社の100冊

    好きなを持ちよって、まったりアツく語り合い、最後はオススメ交換会。 今回は「早川書房・東京創元社」で集まったり集めたり、過去最大級の賑わいなり。ご協力いただいた早川書房さま、東京創元社さま、ご参加いただいた皆さま、主催者・スタッフの方がた、ありがとうございます。ズバピタさん、7時間に及ぶtwitter実況、大感謝です。メガ便利ですがギガ大変だったはず。 ハンティングの結果、得られた気づき、そしてわたしのプレゼンと、書くことも沢山ある。このエントリでは、以下の順にまとめよう。 1. 早川書房 X 東京創元社の100冊 2. 小中学生のための早川書房 X 東京創元 3. kindleと『薔薇の名前』 1. 早川書房 X 東京創元社の100冊 まずはプレゼン、プッシュ、放流された獲物たち。会場、facebook、twitterから、事情により持ってこれなかったり放流できなかったものも含め、新刊

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    ROBOT_KUN 2012/11/03
  • 狂わないための料理「わが百味真髄」

    料理に打ち込むのは、あれで発狂を防いでいるようなもの」坂口安吾は檀一雄をこう評するが、人は否定する。この言葉はわたしに当てはまる。料理のおかげで狂わないでいる。 むろん、レシピと首っぴきの素人料理は承知のこと。しかし、買出しから下ごしらえ、調理と盛り付けをしているあいだ、“目の前の料理”に没頭できる。料理だけでなく、順に卓に上るよう計らい、同時に、調理器具を洗いながら片付ける。すると、あれほどしつこかった気が、綺麗さっぱり消えている。料理をしてなかったら、このに押しつぶされていただろう。 グルメ・エッセイは多々あれど、「自分で」作ってみようと背中を押されるのは檀一雄だ。「ちょい足し」や「ズボラ飯」などインスタント料理も多々あれど、「愛する人に」べてもらおうという気になるのは檀一雄だ。「檀流クッキング」然り、書もそう。自分で作って、みんなにべてもらいたいものばかり。 ただし

    狂わないための料理「わが百味真髄」
    ROBOT_KUN
    ROBOT_KUN 2012/10/26
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