その朝。航空自衛隊幹部候補生のぼくは、前夜に大麻を吸いすぎて寝坊し大急ぎで統幕学校へ向かっていた。「近現代歴史観」の宿題も手付かずのままだ。またあの行き遅れの櫻井先生に叱られるのか─と思うと元気が出ないまま、学校の門をくぐった。 だが、教室に入ってみるといつもと雰囲気が違う。ふだんなら学級崩壊している候補生仲間はみな静かに席につき沈痛な面持ちだ。しかも後ろには父兄が何人も参観にきている。ヘンな帽子をかぶったホテルの女オーナーとか、おどろいたことに定年退職したはずの田母神のおじさんまでいる。ぼくのいぶかしげな視線にも「そんなの関係ねえ」といった感じだ。そして教壇に似合わない和服姿で立っていた櫻井先生は怒りもせず、ただ静かに「席につくように」とぼくにうながすのだった。 席につくと先生は悲しげな面持ちで言った。 「みなさん。自慰史観の歴史は今日が最後の授業になりました。戦後教育の弊害と鬼畜米英の
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