なぜ「面白い物語」は面白いか? トートロジーみたいだが、小説を読んでて、そんな疑問を抱いたことはないだろうか。ひたすら浸っているときは気付かないが、読了後、どうしてあんなに夢中になっていたのか不思議に思ったことはないだろうか。 わたしはある。一般に面白い小説に共通する特徴を洗い出したり、特定の人が面白がる「面白がりかた」を考えることで、おぼろげながら、「面白い物語の法則」のようなものを見出していた。あるいは、脚本術やストーリーメイキング、『マンガの創り方』といったネーム作りのハウツー本から、創作のための実践的なノウハウをもらっていた。 だが、たいていはヒューリスティックで「売れた作品を分析するとこうなっている」という経験則が最初にあり、その理屈は後からとって付けたように書かれている。そうではなく、「人はなぜ物語を好むのか?」というそもそも論から始めたい。もちろんアリストテレス『詩学』のよう