東日本大震災を語る言葉はすっかり、紋切り型になってしまった。復興、絆、忘れない、足りない支援、風評被害、払拭、関心の低下……。 震災5年、NHKの特集番組に連日出演した糸井さんは、ひとり、紋切り型に抗っていた。悲しい音楽とナレーションで切り取られた被災地の姿が映される。 糸井さんは「悲しみしか伝わってこない」と話し、スタジオの空気を混ぜ返す。番組が描く「デザイン」を批判し、違う視点の言葉を投げかけていた。 糸井さんは固まってしまった言葉から、被災地との関わりを考えている。糸井さんの言葉から見えてくるもの、それでも見えてこないこと。どんな言葉で、震災、原発事故と向き合うのか。 「言葉の復興」ってなんだろう「言葉の復興」とは何を意味するのか、と私は聞いた。 糸井さんは率直に言葉を紡いでくれた。 「震災5年ってなにか。ぼくはわからなかったんです。目先の復興だけじゃダメだって話はそれこそ、震災の翌