2月14日、東芝は連結子会社の東芝ITサービスなど複数のIT(情報技術)企業が関与した架空取引についての調査結果を公表しました。これに先立ち、2月13日に、従業員が同取引を主導したとされるネットワンシステムズが、特別調査委員会の中間報告書を公表しましたので、こちらの報告書を一読いたしました。 まず、取引に関与していたいずれの会社においても、国税によって取引の疑義を指摘されるまで、架空循環取引が行われていたこと(取引に関与していたこと)は知らなかった(わからなかった)と発表しています。さらに、会計不正事件を起こさないために、徹底的に内部統制システムを見直しておられたネットワンシステムズでさえ、5年以上にわたる架空循環取引を発見できなかったのですから、多くの上場会社において架空循環取引を許容する環境が構造的に存在しているのであり、今現在でも、多くの会社で架空循環取引が繰り返されていることは間違
昨日(11月27日)の産経新聞「正論」では、早大の上村教授による「ゴーン事件は日本に何を問うか」と題する論稿が掲載されており、上村先生は冒頭「日産のゴーン会長については、さまざまな論評がなされているが、法的な問題を押さえない話が横行しているかに見える」と述べておられます。というわけで(?)、また少しばかり(拙いながらも)法的な問題に触れておきたいと思います。 本日(11月28日)の産経新聞朝刊では、前会長の金商法違反容疑事件で揺れる日産は企業統治改革の一環として「指名委員会等設置会社」への移行を検討している、と報じられています。指名委員会、報酬委員会、監査委員会を必須の機関とすることにより、代表取締役の業務執行の監督機能を強化することが狙いとのこと。ただ、移行のためには株主総会において定款変更(特別決議)が必要なので、ルノー社との協議次第、といったところでしょうね。なお、いつも拝読している
お昼にブログを書くことはほとんどありませんが、本日発売の週刊文春の記事を読みましたので、備忘録程度にひとことだけ感想を書かせていただきます。 これまで、当ブログで「素朴な疑問」として書き連ねていた多くの点が文春記事で解消されました。前会長追放のための1年におよぶ一部役員らの調査、日本版司法取引の施行という「偶然」の時代背景、そして、そこに関与する法律専門家(うーーん、またあの法律事務所 笑)、なるほど・・・。 やれ「指名委員会等設置会社への移行」だの「社外取締役を中心とした報酬委員会の機能」だのと、最近のガバナンス改革の目線で(お行儀よく?)物事を考えがちですが(私自身もそういった傾向にありますが)、やっぱり機能したのは「裏ガバナンス」だったと痛感いたしました。関係者の皆様(とりわけ日産で法務一筋でやってこられた専務執行役員および元副社長である監査役の方)には敬意を表します(ただ文春の記事
昨日(10月22日)の日経法務面では、コーポレートガバナンス・コンサルティング会社の名誉会長に就任された前経団連会長さんのインタビュー記事が掲載されていました。日本企業では、まだまだ社外取締役は十分に機能していないが、「ようやく先進的な企業も出始めた」とされています。社外取締役が中心になって、いわゆるサクセッションプラン(後継者計画)を作り、複数の候補者をインタビューして決めるのだそうです。また、社外取締役にふさわしい人物としては「経験豊富な元経営者で、企業統治の知識も備えた人が望ましい」とのこと。 このたびのガバナンス・コードの改訂でも、後継者計画の作成やCEOの選解任手続の透明化が要請されているので、企業が前向きに取り組むこと自体は賛成です。ただ、社外取締役が中心になって社長を選任することでかならずしも「中長期的な企業価値が向上する」ことはありません。当然のことながら人選に失敗して企業
6月18日(月)の日経法務面でも海外拠点における不正調査に関連する特集記事が掲載されているようです。不正リスクだけに限られませんが、グループ会社ガバナンス、とりわけ海外グループ会社の経営管理については、事業戦略として多くの会社で関心事になっていますね。 そういった意味で、6月8日の日経朝刊に掲載されていた「損保の海外統治 三者三様」なる見出しの記事はたいへん興味深いものでした。日本の損害保険大手3グループの海外事業の統治戦略の違いが際立っている、とのことで、各社の将来における収益力を左右する海外統治に各社が工夫をこらしている状況が紹介されていました。そこで、上記記事をもとに、各社トップのコメントも含めて、記事の内容を下記のとおり図表にまとめてみました。 日本の多くの企業でも、海外グループ会社の経営管理については、上記の3つの選択肢の中で悩んでおられるケースが多いのではないでしょうか。また、
先週の企業法務の話題はGDPR(EU一般データ規則)でもちきりでしたが、今週はなんといっても日本版司法取引の施行(6月1日)ではないでしょうか。日曜日(5月27日)の日経朝刊「ニュースフォーキャスト」でも、日本版司法取引の導入に関する特集記事が掲載されていました。当ブログでも、ずいぶんと前から改正刑事訴訟法に関するエントリーを書いてきましたが、3月に最高検の「運用に関する考え方」(法律のひろば2018年4月号に掲載)が策定されて以降は、とりあえず静観しよう、と考えるに至りました。 そうはいっても、今朝の日経記事にあるように、企業の関心がとても高いようです。大手法律事務所には「社内規定で社員が司法取引に勝手に応じないよう義務付けることはできるか」といった問い合わせが絶えないそうです。検察官から司法取引を提案される場合もあるでしょうし、また、会社自身から社員に司法取引を勧められる場面もあるでし
当ブログにお越しの方々はすでにご承知のことと思いますが、日本取引所は3月30日付けで「上場会社における企業不祥事予防のプリンシプル」を公表されたようです(日本取引所のリリースはこちらです)。パブコメとこれに対する取引所の考え方もリリースされており、プリンシプルを理解する際に役に立ちそうですね。さて、皆様方の会社にとって、「不祥事の芽」とはいったいどのような事情を指すのでしょうか。 ところで、この予防のプリンシプルでは、原則5では「グループ全体を貫く経営管理」、そして原則6では「サプライチェーンを展望した責任感」について言及されています。原則1から4までとは少し毛色が違うような気もしますが、(これは個人的見解ですが)、このグループ管理とサプライチェーンにおける予防責任という点にこそ、不祥事の「根本原因」に迫るヒントが隠されているように考えています。 企業不祥事発覚時に組織される社内調査委員会
日産自動車、亀田製菓、東レ、ミクシィ、三菱マテリアルと、連日のように企業不祥事に関する調査報告書が開示されています。また、神戸製鋼の第三者委員による調査は2月まで続行されるようで、年末にかけて多くの調査委員会報告書がマスコミの話題になりました。12月28日には、某社(証券コード2388)において、不適切会計事案に関する第三者委員会報告書をもとに、会計監査人が「限定付適正意見」を表明する事態に発展しています(限定付適正意見は今年3件目でしょうか、監査法人も限定付適正意見を表明することに躊躇がなくなるかもしれませんね)。 そのような中で、あまりマスコミでは取り上げられていませんが、たいへん秀逸であり、皆様にご一読をお勧めしたいのが12月27日にリリースされたJA全農神戸食肉偽装事件に関する特別調査委員会報告書です。JA全農の常勤監事さん等が委員に含まれているので日弁連ガイドラインに準拠した第三
内部通報の外部窓口を担当していて、最近通報が増えていると感じるのが幹部社員の長時間労働です。昨日(12月26日)の毎日新聞ニュースでも、ジタハラ(時短ハラスメント)によって自動車販売会社の店長さんが過労自死に至った、との疑惑に関する報道がありました。来年は、ジタハラはさらに深刻な問題として取り上げられるようになりそうです。 ところで本日、東レ(子会社)品質検査データ改ざん事件に関する有識者報告書が公表されましたので、さっそく全文に目を通しました。外部有識者による報告書ですが、第三者委員会ではないので、自ら改ざんに関する事実認定や原因分析を行ったわけではありません(社内調査やその後の対外対応に至った会社行動が妥当だったかどうかを検証することが目的だそうです)。しかし、上記報告書によって社内調査の詳細、東レ社としての原因分析の結果等が判明したので、事件の内容がとても理解できました。 いろいろと
今朝の朝日新聞(東京版、大阪版とも)に、東芝決算問題に関する私のコメントが掲載されておりますが(数日前にブログで書いた「三方よし」の見解です)、実際に財務諸表監査、内部統制監査の結果が公表されたことに関連して、内部統制報告制度の原則論から、私なりの意見を述べたいと思います。なお、内部統制報告書は、マスコミ報道にあるような「有価証券報告書に付随した」報告書ではなく、あくまでも独立した報告書です(金融庁立案担当者が著者とされている「総合解説内部統制報告制度」税務研究会出版局2007年 59頁)。 昨日(8月10日)、東芝さんの2017年3月31日現在の内部統制報告書について、会計監査人であるPwCあらた監査法人さんは「不適正」との意見を表明しました。私も、あらためて昨日EDNETにリリースされた内部統制監査報告書を読んでみました。マスコミでは、同社の3月期連結財務諸表の監査において「限定付き適
昨年10月ころから「先生、またこんな新しい指針ができるんですよ。どう対応したらよいものか・・・」と大手監査法人の幹部の方々からご相談を受けていたのがIESBA(国際会計士倫理基準審査会)の「違法行為への対応」という国際倫理規程の新設問題です。今年7月15日から倫理規程の適用開始(その後、倫理規程の改正を受けた国際監査基準の改訂)ということが決定しておりますが、あまり世間で話題にならないなぁと思っておりましたところ、ようやく最新の中央経済社「企業会計」2017年6月号に特集座談会記事が掲載されました。IESBAの前ボードメンバーでいらっしゃる加藤厚先生や国際会計に詳しい法律学者の弥永真生先生をはじめ、豪華なメンバーでの座談会です。 公益通報者保護法(および今後の法改正)への対応といった、私自身が関心の深い項目への議論もなされ、たいへん興味深く拝読させていただきました。ここで座談会の内容につい
本日発売のAERA(4月17日号)は東芝大特集とのことで、日経ビジネスに対抗するかのごとく東芝関係者からの証言がたくさん掲載されていて興味深い内容です。実名での東芝元社長批判や、「業績悪化と会計不正の原因はまったくベツモノ。勝手に世間がストーリーを作り出すから話がややこしくなる」と解説する学者のご意見など、なかなかリアルで充実しております(さて、11日の決算発表はどうなるのでしょうか?会計監査人の意見は出るのでしょうか?) そんな東芝大特集の中に、「見下された新日本監査法人-なぜ不正会計を見抜けなかったのか」といった見出しの記事が見開き2頁で掲載されています(ちなみに私の意見はほかでも述べているように、「見抜けなかった」のではなく「見抜いたけれども声に出して言えなかった」というものですが、いかがでしょうか)。新日本監査法人のシニアパートナーの方のご意見も、実名で掲載されています。 AERA
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