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ブックマーク / totodaisuke.weblogs.jp (18)

  • サブプライム危機の話(1) CDS の誕生

    (サブプライム危機について、ワシントンポスト紙の年末の特集から、ハイライトを抜粋し、解説を交えてお届けします) 話は1987年に遡る。今回のサブプライム危機の震源地になったAIG Financial Products社は、ジャンクボンドで一世を風靡したドレクセル・バーナムのエースだった3名の人間と、グリーンバーグ率いるAIGとの38:62の合弁会社として設立された。 【ドレクセルの「卒業生」は、実は金融界で広く活躍している。金融の先端でイノベーションを生むという顔と、同時にリスクを取ることをおそれず、時には先に走りすぎてしまう、という両面の顔を持つ。】 35歳のハワード・ソシンは金融、30歳のランディー・ラクソンはコンピューターの専門家。この二人に、経済学のPhDを持ち、複雑な金融取引を設計するのが得意だったバリー・ゴールドマンが加わった。彼らはドレクセル時代に金利スワップ取引を編み出し、

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    Schuld 2009/01/14
  • 破たんを免れたAIG (2)

    前エントリーで見たような経緯で公的支援が決まったAIGだが、米政府の思惑とは裏腹に、マーケットはまったく落着きを見せることがない。「次はどこか?」との憶測が憶測を呼び、「どこまで損が広がるのか」と、終わりが見えない不透明感が、事態をより悪化させている。すでに、「1930年代の大恐慌以来の最悪の危機」との評価がなされている。 当初は公的支援に否定的だった政府を動かしたものは、AIG は "too, too big to fail" だったという実情だろう。5兆ドルを超えるクレジット関連デリバティブのカウンターパーティ(引受先)として世界中の金融機関との取引が複雑に入り組んでいる同社の破たんは、世界を巻き込んだ未曾有の金融危機を巻き起こしうるとして、そのシステミックリスクは大きすぎると判断された。 しかし、この当局の一連の動きについては、いくつもの論点が提示されている。 一つは、その意思決定基

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    Schuld 2008/09/18
  • 破たんを免れたAIG (1)

    電撃的に政府による救済が決まり、破たんを免れたAIG。ここ数日間の内部の動きについて、今朝のWall Street Journal はドキュメント風に綴っている。以下、時系列で出来事のポイントを抜粋。 "Bad Bets and Cash Crunch Pushed AIG to Brink" (「悪い賭けとキャッシュ不足がAIGをギリギリまで追い込んだ」) Wall Street Journal, 2008/9/18 ・ 金曜の時点では、AIGはJPモルガンと買収ファンドのブラックストーンらと共同で、必要資金を計算していた。前日には200億ドル(約2兆円)とされていたが、不動産関連の証券が急激に値下がりしたことで、この日には倍の400億ドル(約4兆円)に膨れ上がっていた。 ニューヨーク州の保険監督当局は、同社に子会社から200億ドルの資金を調達することを許した。これによって、「あと200

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    Schuld 2008/09/18
  • 7 years later

    昼過ぎの便に間に合うかどうか微妙な時間だったけれど、どうしても欲しいがあったので、8時過ぎに宿泊先を出て、赤い線の地下鉄に乗り込んだ。朝寝が大好きな彼女も、この日ばかりは眠い目をこすりながら「私も行く」と言い、眉毛もかかないすっぴん顔のまま、着いてきた。 二日前、面接を受けに来ていた投資ファンドから、想定外の「不採用」を知らされた。すぐに帰る気がしなかったのは、ひとりになりたくなかったからだろうか。馴染みの格安航空券ではなく、先方が手配してくれた正規料金のチケットだったから、電話一で帰りの便を一日遅らせることは問題なかったが、たかが一日の延泊では心の傷は癒えた気がしなかった。 向かったのは、地下鉄で20分くらい北上したところにある、大学生協の屋。朝いちばんの授業前に小物を手に取る学生たちで慌ただしかったが、エスカレーターを降りて、目的のを手に取って、レジに並んで、支払いを済ますまで

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    Schuld 2008/09/12
  • 説得力

    プレゼンでも、交渉でも、はたまた普通のミーティングでもいい。説得力ある議論をするために、もっとも簡単にできることは、「弁護士と検察官になってみる」ことである。 法律のトレーニングを受けている人は、一つの事件・争点について、あるときは賛成の立場で熱く議論をし、あるときは反対の立場でクールに説得をする術を身につけている。 問題となる争点について、賛成する理由をたくさん書き出す。反対する理由を、同じ数だけ書きだす。両者の立場の違いを分ける質的なものは何か、考える。ずっと考えていくと気がつくことは、表面的な事象を見ているだけでは、「賛成だ」「いや反対だ」という水かけ論にしかならないが、より質的な事象まで掘り下げていくと、お互いの主張の依って立つ立場を理解し、それが180度対立するものではなく、多くの場合、優先する事柄の違いだったり、時間軸の違いだったり、価値観の違いであることに気がつく。それが

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    Schuld 2008/07/23
  • 重視しているのは株主ではなく、株価。

    「株主を重視しない経営」(日経済新聞社、江川雅子著)を頂いた。 これまでのコーポレートガバナンスの議論では、日企業が株主を重視してこなかった理由として、①間接金融が中心でメインバンクが経営者を規律づけてきた、②株式持合いの弊害、③日企業は従業員が力をもち、内部昇進した経営者が力をもってきた、といった理由が掲げられてきた。 これに対して書は、「戦後日企業の経営者が株主を重視しなくなったのは、株式市場の機能不全(発行市場の欠陥と、株価形成の非効率性)と投資家の短期的・投機的傾向が重要な要因である」という自説を、実証的に展開している。 そこで、考えさせられた。なぜ、米国の経営者は、株主を重視するようになったのだろうか? いくつか考えたこと: 米国の経営者は決して『株主』を重視しているわけではなく、『株価』を重視しているにすぎない。なぜなら、自分たちの報酬の大半が、株価に連動しているから

    重視しているのは株主ではなく、株価。
  • 生保アクティビストが生まれる日

    株主総会シーズンが到来し、世の中では「もの申す株主」と会社側との対決が話題になっている。 これに対して、一部の会社を除いて、株式会社ではなく「相互会社」という形式を取る生命保険会社は「総代会」というものを開催する。今朝の日経7面では、「生保総代会 改革道半ば」という記事で、ガバナンスが利かない生保の経営構造について書いている。 中長期的に健全な成長・発展を続けるためには、どんな組織であれ、経営陣がどれだけ善意に満ちており、かつ有能であれ、チェック・アンド・バランスを、働かせることは必須である。 そして、これまでは、総代会に参加する総代は、実質的に会社側が選んできた。これでは、経営者の高い倫理感と使命感以外には、経営者によい経営をさせることを担保するメカニズムは、存在しないといえよう。 これを、立候補制にしようというのが、新しい動き。比較的進んでいる明治安田生命などは総代221人のうち、21

  • 生命保険 立ち上げ日誌: 100万のカイゼン=イテレーション

    (* 書いている途中でアップされたままだったので、書き直しました) アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾスのインタビューを読んで、ネットビジネスの成功の秘訣と、ライフネット生命への示唆について考えさせられた: アマゾンの創業者、ジェフ・べゾスが偉大なイノベーターであると、つい信じてしまいがちである。しかし、べゾスが米国を代表する大企業の仲間入りすることができたのは、イノベーションとはほとんど無縁である。それはむしろ、「イテレーション」(反復)が理由である。アマゾンが何かを象徴するとすれば、それは最先端のネット企業が、ゆっくり時間をかけて育って成功する、ということである。コツは、100万とある細かいステップをコツコツやっていくことと、自分の間違いから早く学びそれを是正することである。 新しいビジネスというと、つい、何かとても「新しいもの」を作らなければならない、と思ってしまう。しかし、実際はそうで

  • 普通の業界へ

    友人から送られてきた、BCGの欧州保険業界のレポート("Creating Competitive Advantage --- The European Insurance Landscape")を読んだ。 日の生保業界ばかりを見ているうちに、いつのまにか、「セイホは特殊な業界だから」ということで、通常の経営戦略などの議論とは別に考えようとする癖が身についていることに気がついた。 しかし、欧州の100社以上の保険会社を分析したレポートを読んだ感想としては、「そうか、保険も普通のビジネスと同じように考えていいんだ」というものであり、これは当たり前のようでいて、ある種の新しい発見をもたらしてくれた。 いわく、持続的な競合優位性を築くためには、経営者は以下のことをやらなければならない: 株主価値創造のこだわり。細かい単位で収益性を正確に管理し、同時にその収益を支えるためにどれだけの資当に

  • 行政官の品格

    金融庁付きの新聞記者の方に勧められて、「金融システムを考える~ひとつの行政現場から」(きんざい、大森泰人著)を読んだ。とっても面白くて、離さず電車の中、お風呂の中、仕事の合間に読み進めた。 そもそも過去10年間でわが国の金融システムがどのような変遷を遂げてきたか、という基的な「歴史」についての勉強不足、また行政がどのように制度設計をしていくかについての無知があいまって、純粋に知識と理解を深めるために非常に役に立った。 加えて、金融システムという(アウトプットだけを見ると)無味乾燥なものにも、個人の強い思いや情熱やドラマが成立までにはたくさんあること、それに内在する複雑性に関する深い深い理解、公的な立場にありながら自らの(ときには物議を醸す)意見を世に積極的に発信していくその姿勢、そして一人のプロフェッショナルとしての世界観・価値観には、とにかく感銘を受けっぱなしだった。「大森氏のような行

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    Schuld 2008/02/20
  • 死亡保険の値下げ競争

    少し前からRSS登録している、米国の生保ブログのエントリーが面白かった。定期保険(掛け捨て型の死亡保険)の保険料がどんどん下がっている、という話題。わが国ではなかなか保険料の値下げは進んでいないのが実態なので、比較して読むと興味深い。以下、部分的に訳してみた: Insurance Information Institute (III) 調査によれば、2008年は2006年と比べて保険料が11%も下がる、買い手市場になる。10年前に始まったこのような下降トレンドは今後も続く見通しであり、保険がより手ごろな価格になる。 同社の計算によれば、2008年の50万ドル(約5,500万円)、20年定期の保険料は、40歳・非喫煙者・男性(標準健康体)であれば、約725ドル(約8万円)であるとのこと。同じ人が「優良健康体」に当てはまれば、保険料は約350ドル(38,500円)になる。40歳・非喫煙・女性の

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    Schuld 2008/02/20
  • 不安や怖れを直視する

    留学中、伝説的なヘッジファンドのオーナーと話をする機会に恵まれた。20年間、リターンがマイナスだった年がなく、もっとも悪い年でも、+3%の利回り。あなたはなぜ、このような驚異的な運用実績をあげることができたのですか?投資でもっとも大切なことは、何ですか? 彼の答えは、今でも印象に残っている。 「自分自身が不安に思っていること、怖れていることに対して、正直に耳を傾けることこそが、もっとも大切だと思う。 誰しも、どこかで「おかしいな」と分かっていながらも、『大丈夫、大丈夫』と自分に嘘をついて、言い聞かせてしまう。投資で失敗するのは、このパターン。 自分の不安や怖れを直視することほど、難しいことはない。しかし、これができるようになると、当に客観的な意思決定ができるようになる」 確かに、自分のこれまでの経験でも、「ん?」と思ったときに、「まぁ、きっと大丈夫」とその疑問を詰めなかった場合は、あとか

  • 生命保険の罠

    週末、会社に来ていて、近所の屋に立ち寄ったら一冊のが目にとまった。講談社新書から出た「生命保険の罠」。業界人には刺激が強そうだが、なかなか面白い。月曜の朝、会社に持ってきたら、別の同僚もすでに買っていた。 保険会社内部の運営実態を暴露するような部分については評価は分かれようが、一般の方には分かりにくい保険商品について、その仕組みに立ち返って問題点を指摘している部分については、「ごもっとも」と思う箇所が少なくない。 ● たとえば、60歳で払い込みが終わる終身型医療保険が使う、「60歳から、保障はそのままで保険料がゼロになります」というキャッチコピーについて。 「60歳までに、60歳以降の残りの人生の分も保険料を前もっていただいておく仕組みです。お客さまのその残りの人生は約50年あるものと想定しています。つまり、50年分の保険料を前倒しで払ってもらうことになっています」と伝えるべきでは?と

    生命保険の罠
  • アクティビズムを殺すな

    先週のスティールパートナーズの判決に続き、村上ファンド事件の判決が出た。事案や争点はもちろん異なるのだが、共通するのは、「アクティビストファンドが派手に動いて儲るのはけしからん。市場や社会の秩序を保つためには利益至上主義を断罪しなければならない」という正義感に基づいた価値判断ではないか。法律構成やあてはめは、その価値判断から導かれた結論を正当化するものに過ぎない。仮に裁判所がこのような価値判断を持っているのだとすると、それには賛成しかねる。 スティールの事案では、以下のように語られていた: 『抗告人関係者(スティール)は、投資ファンドという組織の性格上、当然に顧客利益優先の受託責任を負い、成功報酬の動機付けに支えられ、それを最優先にして行動する法人であり、買収対象企業についても、対象企業の経営には特に関心を示したり、関与したりすることもなく、様々な策を弄して専ら短中期的に対象会社の株式を対

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    Schuld 2007/07/20
  • 金融市場の効率性

    以前、「金融市場は効率的だから、世の中には『おトク』という商品は存在しない。あるのは、(機能やリスクを付加したり取ったりすると、価格が上がったり下がったりするという)トレードオフだけだ」といった趣旨のことを書いた。それに対して、「金融市場は効率的だなんて、なんて非現実的なことを言うんだ」という反論をいくつか頂いた。この点について、追加で説明したい。 まず、マーケットは短期的には効率的でない(間違っている)ことが多い。ヘッジファンドなどはこの短期の非効率性を突いて、サヤを抜きに行っている。バフェットも、「マーケットが効率的だというファイナンスの学者は、(継続的に勝ち続けるファンドマネージャーもいるという)現実を直視していない」とよく言っている。この点は、理解しているつもりです。 ただ、彼らはいずれも、中長期的には市場は効率的である=来あるべき株価に収斂していく、ということを信じている。ずっ

  • 会社なんて勝手だ。

    「会社のため」と「自分のため」をホンキで天秤にかけなきゃならない場面では、絶対に「自分のため」を譲ってはいけないよ、と痛感した私の原体験を二つほど。 コンサルティング会社で働いていた頃、総合商社に勤める親友を引き抜いた。ちょうどゴールデンウィーク前に前職を離れることになっていたので、久しぶりに休みをとって奥さんを旅行に連れて行きたいと話していた。新天地での挑戦は連休明けから、ということで。 すると、会社の人事から、「貴方に入ってもらおうと思っていた自動車メーカーのプロジェクトがもうすぐ始まる。だから、連休明けスタートでは困る。連休直前から出社して欲しい」。彼は泣く泣く、予定していた奥さんとの旅行をキャンセル。しかし、いざ出社してみると、このプロジェクトは顧客の都合でキャンセルされていた。彼は連休の間の5月1日、2日を、オフィスでやることもなく座っていたという。 同じく、コンサルティング会社

  • ハーバード留学記 その後: 無駄な時間を過ごせ

    最近になって、大学生と話をする機会が増えた。まだ1年とか2年なのに、コンサルになりたいとか、HBSに行きたいとか言っているのを聞くと、「何かが違うのでは?」と違和感を覚える。学生の頃からビジネスプランとかコンサル投資銀行面接特訓とかやっている人の話を聞いても同じ(僕のブログなりを読む人たちだから、自然とそういう人たちが集まってくるのだろうが) 学生時代というのは、長い人生で2度と来ない貴重な時間だ。何の責任を背負うこともなく、誰に急かされることもなく、ただ思うままに自分の関心があることに没頭できる。時間はゆっくり流れているし、何にでもチャレンジできる。無駄なような時間の中から、自分の中に何かが深く刻み込まれていく。いや、むしろ、それは無駄であることそれ自体に意味があるように思える。 自分自身、学生時代にもっと色々なことをやっておくべきだったなぁ、と思うことがある。それでも、まぁジャズ研

  • 正しい選び方

    週刊ダイヤモンドの12月9日号、「医療保険に気をつけろ!」は、医療保険の上手な選び方について、中立の立場から非常に詳しく分析した特集を掲載している。保険は誰もがいつかは加入を考えるものである以上、特集は買っておいて棚においておくことをお薦めしたい。 皆さんが知っておくべき大きなポイントは、以下の通り: 1. 我々は皆、公的な医療保険に加入しており、相当な保険料を払っている。この健康保険制度は非常によくできており(特に上限をcapする「高額療養費制度」)、入院したときに我々が自己負担する費用というのは、思ったほど高くない。(特集の冒頭であげられている例では、「胃ガンで入院して150万くらいかかると聞いていたが、20万円ですんだ」とのこと。) 民間の医療保険はあくまでも、このような強力な公的保障を補うもの、と理解すべき。保険会社の宣伝広告に、不安をあおられて過剰な保障を買ってはいけない。

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