胃粘膜の細胞は粘液を分泌して表面を覆い強酸性の胃液から自らを守っています。粘液には表面に近い表層粘液細胞が分泌する「表層粘液」と、その内側にある腺粘液細胞が分泌する「腺粘液」があり層状に重なっています。 信州大学大学院医学系研究科の中山淳教授らの研究グループはすでに(2004年)、膜粘液に糖の分子「α型N−アセチルグルコサミン(αGlcNAc)」を先端に持つ糖鎖があり、これが胃癌の原因となるピロリ菌の増殖を抑えていることを明らかにしていました。 今回、同研究グループは、胃粘膜での糖鎖の役割をさらに解明するため、ピロリ菌に感染していない状態でαGlcNAcを体内で生産できない遺伝子改変マウスと通常のマウスを比較する実験を行った結果、改変マウスは全て5週間で胃粘膜の炎症が起き、30週で胃癌を発症しました。また、ヒトの胃癌とその前段階の腫瘍でαGlcNAcの量を調べたところ、全くないか少なくなっ