震災からの街再建を進めてきた宮城県名取市閖上地区が26日、まちびらきを迎える。津波で住民の1割以上が犠牲になった反省の上に、かさ上げされた新しい市街地は築かれた。8年2カ月前のあの日、この場所で起きたことを、二度と繰り返さぬように――。 閖上公民館は街の中心にあった。2階建て、海からの距離は1・2キロ。指定避難場所になっていた。 当時の公民館長は、閖上で生まれ育ち、2年前まで閖上中校長だった恵美(えみ)雅信さん(71)だ。強い揺れの後、避難してきた元教え子の女子高生から「ラジオで午後3時10分に津波が来ると言っている」と聞かされ、グラウンドにいた人たちに2階に上がるよう、声をかけた。 だが、その時刻を過ぎても何も起きない。 避難放送を伝えるはずの防災行政無線は、沈黙したままだ。地震による故障のためだったが、人々は知る由もない。「貞山堀の陸側に津波は来ない」と思い込んでいる人も少なくなかった