◇恐れず進む自信になった 第32回吉川英治文学新人賞(吉川英治国民文化振興会主催)に、辻村深月さん(31)の『ツナグ』(新潮社)が選ばれた。「ツナグ」と呼ばれる使者に頼めば、死んだ人に1度だけ会えるという設定を通し、死の意味を問いかけた連作短編集。辻村さんは3日の記者会見で「作者の思惑を超えて、読者が自分の話として受け止めてくれた。今回の受賞は、読者に連れてきてもらったなという気持ちです」と語った。 辻村さんは2004年、『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞してデビュー。ファンタジーやSF色の濃い小説を執筆してきたが、最近は『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』(09年)など、現実に即した作品も手掛けるようになった。『ツナグ』は5編からなり、亡くなった母親に会う工務店経営者や、事故死した親友と再会する女子高生らを描いている。 選考委員の伊集院静さんは「今までは学園ものが多かったが、本作には