探検家 作家 角幡 唯介 効率よく成果を手に入れようという風潮が近年、ますます強まっています。 スマホやSNSで大量の情報が簡単に手に入るようになり、買い物や飲食や旅行など、何か行動をおこすときは、事前に情報を集めて不確実性を減らし、外れをなくすことが当たり前になりました。 しかし、集めた情報通りに行動をしても、現実はただの答え合わせになり、発見や驚きは失われます。 効率性の重視とは、要するに時間と労力の短縮のことですから、結果だけを追い求め、プロセスを軽視することと同じです。しかし、人生を豊かにするのは結果よりもむしろプロセスのほうではないかと、私は長年の北極探検から考えるようになりました。 きっかけは、はじめて北極を旅した2011年に遡ります。このときはGPSや衛星電話などを使い、軽くて丈夫な橇に栄養価の高い食料をつめこみ、カナダ北極圏を1600キロも踏破しました。 ゴールに到達するこ