横須賀市船越町のパン店で飼われ、地域に愛される猫がいた。交通事故で後脚1本を失っても懸命に生き、17年の命を全うした。15日に息を引き取った後、店先には自然と献花台ができていった。元気だったころの姿をしのび、行き交う人々が今も手を合わせている。 「きっと、チロちゃんは招き猫だったのよ」。見知らぬ通行人からもかわいがられ、「人との出会い」という幸福を呼んだ愛猫に、飼い主の川島増子さん(87)はほほ笑んだ。近くの動物病院で生まれたばかりの小さなメス猫を引き取った。真っ白い毛並みに大きな目がそろい、ピンクの鼻が形よく据わる。「チロ」と名付けた。 京急田浦駅そばのパン店は幹線道路に面している。周りに小学校や工場があり、朝夕は人通りが多い。店先で寝転ぶチロの姿は通行人の癒やしだった。 7年前の正月のこと。普段通り外で遊んでいたチロが左後脚を引きずって帰ってきた。「交通事故で脚がつぶれてしまった