「これはスタートでしかない」。安倍晋三首相は3日、北朝鮮に対する制裁の一部解除を決めた関係閣僚会議後、厳しい表情で語った。拉致問題をめぐる日朝交渉は「再開と決裂」の繰り返しだった。拉致問題解決に意欲的な安倍政権に対し、北朝鮮は金正恩第1書記体制に完全に移行した。首相周辺は「今が拉致問題解決の最後のチャンス」とにらむ。それだけに、賭けに出た首相は外務省をはじめ政府関係者に入念な極秘協議を命じていた。 ◆重ねた極秘協議 4月12日、愛知県の中部国際空港。外務省の小野啓一・北東アジア課長は、通訳の部下1人を連れ、中国・大連行きの飛行機に乗り込んだ。大連行きの直行便は成田空港からも出ているが、マスコミの目を避けるために出発地を変えた。 拉致被害者の再調査をめぐり、小野氏は昨年末からベトナム・ハノイや中国・上海などで北朝鮮と極秘に協議を重ねていた。3月末に日朝局長級協議が1年4カ月ぶりに再開してから
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