ならば、従来品の約3倍の価値のある製品を開発すればいいのかというと、そう単純な話でもない。心理的バイアスはつくり手のほうにも作用するからだ。 新製品の開発担当者は、当該製品の最高の理解者である。生い立ちから長きにわたって製品にかかわり、さまざまな長所を知り尽くしている。ただ、この熱心さに落とし穴がある。 ある人やものとの接触回数が増えれば増えるほど好感度が高まる現象を「単純接触効果」と呼ぶが、この効果が開発担当者の目を曇らせる。製品開発を通して何度も当該製品に接するうちに思い入れが強くなり、顧客も同じように新製品の価値を理解してくれると思い込む可能性があるのだ。 ハーバード大学のジョン・グルビル教授によると、結果的に売り手は自社で開発した製品やサービスの価値を3倍に過大評価するという。 じつはプリウスが市場に広く受け入れられ始めたのは2003年発売の2代目からで、初代はトヨタのイノベーショ