あれは五年ほど前だったかな、技術系のイベントで講演していたその人は、どこにでもいそうな感じのごくごく普通の中年男性でした。スーツ着て通勤電車に乗ってそうな感じの、真面目そうなおじさんといった印象。 話し方は少し神経質そうな感じでしたが、そこで彼は自分のことを『プログラマー』とは呼ばずに、『シミュレーション屋』であると定義していたのが印象的でした。 どういうことかというと、プログラムを組んでそれが自分の意図した通りに動作することを確認して満足している訳ではなく、さらにそこから思いもよらない動きにつながっていく過程をじっと観察していくのが楽しい、とかそんな意味のことをおっしゃっていたような気がします。 きっとあのアプリケーションも、自分の手から離れて自律的に動いていく様子を、たとえそれが犯罪行為の温床となるようなことがあっても、ずっと遠くから眺めていたかったのでしょう。 前にも一度書いたことが