避難指示が解除されている畑に菊の苗を植えた根本友子さん=福島県大熊町で2021年4月12日、和田大典撮影 政府が海洋放出の方針を決めた東京電力福島第1原発の処理水。海で生計を立てる漁師や漁業団体は「ごり押しだ」「漁業者の思いを踏みにじる行為」と政府方針を非難している。苦悩を深めているのは海に関わる人々だけではない。原発が立地する福島県大熊町の農業委員会会長、根本友子さん(73)もその一人だ。「仕方がないのかもしれないけれど、やはり割り切れない」。根本さんは今回の決定を複雑な思いで受け止めている。 福島の海では、原発事故後に続いた漁の試験操業が3月で終わり、4月からは本格操業に向けて動き出したばかり。その直後の政府の決定に、原発から約6・5キロ離れた請戸(うけど)漁港(福島県浪江町)の漁師、高野武さん(70)は「海洋放出はやめてほしいという我々の声は届かなかった。風評被害が出たら賠償します、