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  • 『むしコラ』 エイリアンもびっくり、不思議なセンチュウがスズメバチから見つかる

    2007年05月30日掲載 【エイリアンもびっくり、不思議なセンチュウがスズメバチから見つかる】 エイリアンという映画をご存じだろうか。シガニーウィーバー主演で話題となったSF映画であり、あたかもシロアリを連想させるような、不気味なエイリアンが人類を襲うというものである。特にマザーと呼ばれるエイリアンの母親はすさまじく、巨大に肥大した腹部から次々にエイリアンの卵を産んでいる姿は、おぞましいものであった。女王の腹部が巨大化するのはシロアリでは有名であるが、最近の研究により、さらにすさまじい例がスズメバチに寄生するセンチュウでみつかった。 ことの起こりは、スズメバチの生態調査で春先のスズメバチを調べていたところ越冬あけの女王蜂の腹部に異常なものが見つかったことによる(写真1)。 これは、腹部にぎっしりとつまった卵のように見えたが、何であるかわからなかった(写真2)。幸い、センチュウの専門家が身

    『むしコラ』 エイリアンもびっくり、不思議なセンチュウがスズメバチから見つかる
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    agrisearch 2017/07/24
    2007/5/30 「これは寄生性のセンチュウ(Sphaerularia sp.)であり、卵のように詰まって見えたのは、センチュウの生殖器官が千倍ほどにも肥大した物であることがわかったのである。」後にスズメバチタマセンチュウと命名。
  • 『むしコラ』 コメツキムシのDNAバーコーディング/種は遺伝子だけで判定できるのか?

    2016年04月07日掲載 【コメツキムシのDNAバーコーディング/種は遺伝子だけで判定できるのか?】 DNAバーコーディングとは、遺伝子を使って種同定をするための世界的プロジェクトです。わたしたちは、日のコメツキムシ科についてバーコードデータベースを作りました。コメツキムシの種同定はとても難しいので、バーコードが今後役立つだろうと思ったからです。ところがそのデータを分析してみると、思いがけず「種は遺伝子だけで判別できるのか」という大きな問題に関わりそうな結果が得られてきました。 なぜコメツキムシなのか コメツキムシ科は、どの種も特徴に乏しい形と色(だいたい茶色か黒色のモノトーン)をしているので、種同定がとても難しいグループと見なされています。そのくせ、叩き網などではたくさん採れてくるし、農作物に被害をもたらす種も多いので、環境調査や害虫防除に関わる方々はずいぶん手を焼いているようです。

    『むしコラ』 コメツキムシのDNAバーコーディング/種は遺伝子だけで判定できるのか?
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    agrisearch 2017/01/04
    2016/4/7
  • 『むしコラ』 トビイロウンカに強いイネが持つ抵抗性遺伝子の正体

    2016年04月14日掲載 【トビイロウンカに強いイネが持つ抵抗性遺伝子の正体】 イネの大害虫であるトビイロウンカは、針状の口を突き刺して師管液を多量に吸汁することによりイネを枯死させ、深刻な被害をもたらします。ところが、南インドやスリランカのイネの中には、トビイロウンカに強い品種があることが知られています。では、トビイロウンカに強いイネ品種はどのような抵抗性遺伝子を持っているのでしょうか? トビイロウンカはイネを寄主植物とする害虫で、毎年、梅雨時期に中国南東部などから日に飛来して増殖し、深刻な被害をもたらしています。2013年に調査された西日11県での被害額は、約105億円に達すると見積もられています。以前は殺虫剤で被害が抑えられていましたが、近年、主要な殺虫剤であるイミダクロプリドが効きにくいトビイロウンカが飛来するようになり、代替殺虫剤の選定や他の防除法の開発が必要になっています

    『むしコラ』 トビイロウンカに強いイネが持つ抵抗性遺伝子の正体
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    agrisearch 2017/01/04
    2016/4/14 「BPH26遺伝子は師部での吸汁阻害に関与していることが示唆されました」
  • 『むしコラ』 青い光が虫を殺す

    2015年06月09日掲載 【青い光が虫を殺す】 害虫の防除方法には様々なものがあります。薬剤を使って虫を殺してしまう方法が一番よく用いられていますが、光に対する虫の反応を利用して害虫の行動を制御する方法もよく知られています。私たちの研究室ではそれらとは全く違う、「光を当てるだけで害虫を殺す」という新しい防除の可能性を見つけ出しました(Hori et al. 2014)。 青色光による殺虫効果の発見 害虫の被害を減らす方法の一つに、光を使ったものがよく知られています。スーパーなどの建物の壁に、青い照明が取り付けられているのを見たことがあるでしょうか? あれは紫外線や青色の光に虫が引き寄せられる性質を利用して、寄ってきた害虫を高電圧で殺すものです。また、果樹園などでは防蛾灯と呼ばれる照明が普及しています。果実に被害を与える夜行性の蛾(果汁を吸うので吸蛾類などと称されます)に緑~黄色の光を当て

    『むしコラ』 青い光が虫を殺す
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    agrisearch 2015/07/17
    著者: 渋谷和樹・堀雅敏 (東北大学大学院農学研究科)「キイロショウジョウバエの蛹に467nm…の光を当てると、なんと90%以上の蛹が成虫になることができずに死んでしまったのです」、羽化に失敗か?
  • 『むしコラ』 戦うオスと求愛するオス、選ぶメス

    2015年04月10日掲載 【戦うオスと求愛するオス、選ぶメス】 クワガタやカブトムシのオスが持つ大顎や角は、なわばりやメスをめぐるオス同士のケンカに用いられています。私たちが今回紹介するオオツノコクヌストモドキという4mm程度の小さな甲虫もまた配偶者を獲得するために、オス同士が大顎で戦います。ケンカに強いオスがメスにも好まれるとこれまで考えられてきましたが、実際はそう単純ではなく、メスとオスとの様々な駆け引きが行われていることが私たちの研究から明らかになってきました。 性選択は大きく2つ、同性内選択と異性間選択に分けることができます。同性内選択は同性の個体がもう一方の性の個体をめぐり競争することで生じます。この場合、争うのは主にオスで、なわばりや配偶者をめぐるケンカなど、オス間競争が見られます。異性間選択では、一方の性が自身の適応度を上げるために配偶相手を選ぶことで生じます。選ぶ側の性は

    『むしコラ』 戦うオスと求愛するオス、選ぶメス
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    agrisearch 2015/07/17
    オオツノコクヌストモドキ
  • 『むしコラ』 リュウキュウクロコガネのフェロモンと「怠けメス」

    2015年04月09日掲載 【リュウキュウクロコガネのフェロモンと「怠けメス」】 メスフェロモンに誘引されて勢いよく飛んできたリュウキュウクロコガネのオスは、メスの背にダイレクトに着地し、交尾します。一方、集合してオスを待つメスの中には、全くフェロモンを出さない「怠けメス」も混じっています。なぜなのでしょうか。フェロモンを塗布したダミー(綿球)をこのコガネムシ発生地にセットすると、メスと同じようにオスを引き寄せ着地させることができます。この実験の結果から、オスがなぜメスに着地できるのか、そして集合に怠けメスが混じっている理由、メスが集合する性質が進化した理由を考えます。 宮古島の西平安名岬は夕日が美しい景勝地です。6月頃、この岬に群生するクサトベラの上に、リュウキュウクロコガネ(以下クロコガネ)が集合を作ります。夕方早めに集合している個体のほとんどはメスで、その多くは腹部の末端に風船のよう

    『むしコラ』 リュウキュウクロコガネのフェロモンと「怠けメス」
  • 『むしコラ』 クワガタムシにおける性的二型の発生制御メカニズム

    2015年04月10日掲載 【クワガタムシにおける性的二型の発生制御メカニズム】 クワガタムシはオスとメスで非常に異なる姿をしていることで知られています。オスは俗に「ハサミ」と呼ばれる一対の発達した大顎を持っていますが、メスではこの大顎発達は見られません。同じ種であるにも関わらず、このような全く異なった姿へと成長する背景にはどんな発生メカニズムがあるのでしょうか? 図1: 今回の研究に用いられたメタリフェルホソアカクワガタCyclommatus metallifer メス(左)に比べてオス(右)は非常に発達した大顎を持つ。スケールバー: 20mm。 Gotoh et al. 2014中の図を改変して引用 (クリックで拡大します) 生物の中にはオスとメスで姿が著しく異なる「性的二型」をもつ種が数多く見られます。例えば美麗な羽をもつクジャクや、巨大な角を持つヘラジカなど、オスだけで派手な装飾や

    『むしコラ』 クワガタムシにおける性的二型の発生制御メカニズム
  • 『むしコラ』 捕食者が昆虫と花の多様性を進化させる?

    2015年04月08日掲載 【捕者が昆虫と花の多様性を進化させる?】 昆虫と花には「昆虫は花粉を運び、代わりに蜜をもらう」という協力関係があります。ところが多くの場合、花で昆虫を待ち伏せる捕者が、彼らの協力関係の間に入り込んでいます。捕者は昆虫と花にとって、ただの「邪魔者」なのでしょうか?コンピューター・シミュレーションによる研究から、捕者の存在が、昆虫と花の多様性を進化させるカギとなっている可能性が示唆されました。 ハチやチョウなどの多くの昆虫が花の蜜や花粉を餌として利用します。一方で植物は、花に訪れた昆虫の体に花粉を付着させることで、花粉を他個体のめしべへと運んでもらい、受粉させることができます。このような昆虫と植物の互いに利益のある関係は送粉共生と呼ばれています。送粉共生系は非常に高い多様性を持つことが知られており、多様化のメカニズムが研究されてきました。 実際の送粉共生系は

    『むしコラ』 捕食者が昆虫と花の多様性を進化させる?
  • 『むしコラ』 キイロショウジョウバエの交尾行動と概日リズム

    2015年04月07日掲載 【キイロショウジョウバエの交尾行動と概日リズム】 ほぼすべての生物はその体内に約24時間を測る概日時計をもっています。概日時計は一日の周期で変化する地球環境に適応するために,生物が進化の過程で獲得した能力です。例えば24時間周期の行動リズム(昼行性や夜行性)は概日時計でコントロールされています。概日時計は環境にリズム(昼夜のサイクル)がなくても、24時間を測ることができますが,環境にリズムがあるとそれに同調することができます。私たちは,モデル生物であるキイロショウジョウバエを用いて,オスメスの交尾行動と概日時計の関係について研究しました(Hanafusa et al. 2013)。 概日時計のリセット 図1: 概日時計とその環境同調因子 概日時計にとって光や温度が最も重要な環境同調因子であるが、そのほかにも同調因子として働くものがある。 (クリックで拡大します)

    『むしコラ』 キイロショウジョウバエの交尾行動と概日リズム
  • 『むしコラ』 虫で虫を滅ぼす方法: 不妊虫放飼法による害虫の根絶

    2013年12月23日掲載 【虫で虫を滅ぼす方法: 不妊虫放飼法による害虫の根絶】 最近、サツマイモ害虫であるアリモドキゾウムシが、不妊虫放飼法と呼ばれる防除法により沖縄県久米島で根絶されました。離島とはいえ比較的広い島(60 km2)で、どのように害虫を根絶したのか疑問に持たれた方もおられるでしょう。ただ、ゾウムシの根絶を語るには、このコラムではあまりにもスペースが限られています。血と汗と涙のアリモドキゾウムシ根絶ドラマは他に譲ることとし、ここでは不妊虫放飼法で核となる不妊化にまつわる話題を紹介したいと思います。 はじめに 図1: サツマイモの世界的な大害虫であるイモゾウムシ(Euscepes postfasciatus)(左)とアリモドキゾウムシ(Cylas formicarius)(右)。 (クリックで拡大します) これまで沖縄を訪れたことがない方でも、紅芋が沖縄を代表する野菜の1つ

    『むしコラ』 虫で虫を滅ぼす方法: 不妊虫放飼法による害虫の根絶
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    agrisearch 2014/02/10
    アリモドキゾウムシ、久米島で根絶
  • 『むしコラ』 研究室紹介: 京都大学大学院 人間・環境学研究科 市岡研究室

    2013年12月23日掲載 【研究室紹介: 京都大学大学院 人間・環境学研究科 市岡研究室】 市岡研究室では、東南アジアの熱帯雨林に生息する昆虫の生態や生物間相互作用の解明を目指した研究を行っています。アリやチョウの多様性と生態、林冠部に生息する昆虫群集の構造、数年に一度様々な分類群の樹種が同調して開花・結実する「一斉開花」と植性昆虫の群集動態との関係、キノコの分布とキノコ昆虫の群集構造の関係などがこれまでに扱ってきた題材です。ここでは、アリと緊密な共生関係をもつ「アリ植物」とさまざまな生物との間の相互作用についての研究の一部を紹介します。 写真1: アリ植物の1種Macaranga hypoleucaの新葉に集まる共生アリCrematogaster decameraと、シジミチョウArhopala zyldaの幼虫。白い粒々がFood body。葉の縁にある赤い花外蜜腺からの分泌物も

    『むしコラ』 研究室紹介: 京都大学大学院 人間・環境学研究科 市岡研究室
  • 『むしコラ』 近親交配を好む虫と避ける虫

    2013年12月24日掲載 【近親交配を好む虫と避ける虫】 近親者と交尾すること(近親交配)は避けるべきだと一般に考えられています。これは近親交配によって生まれてきた子にはしばしば有害な影響(近交弱勢)が見られるためです。しかし、近親者は自分と同じ遺伝子を持っている可能性が高いため、遺伝子の伝搬効率という観点からはむしろ近親交配は有利となり得ます。ここでは、近親交配を避けるか受け入れるかという観点から、昆虫の行動を紹介します。 近親交配した方が得な時 近親交配を避けるべきか否かは近交弱勢の強さと遺伝子の伝搬効率の兼ね合いで決まります。ある程度近交弱勢が強い時は近親交配を避け、弱い時は受け入れることが適応的な行動となるわけです。では、実際にはどの程度適応度が低下するなら近親交配を避けるべきなのでしょうか? 単純なモデルによると父親と母親が同じ兄弟同士のペア(以下Full-sib)の場合、適応

    『むしコラ』 近親交配を好む虫と避ける虫
  • 『むしコラ』 農耕地の周辺環境: 露地栽培で土着天敵を利用するときに考慮すべきこと

    2014年01月01日掲載 【農耕地の周辺環境: 露地栽培で土着天敵を利用するときに考慮すべきこと】 国土面積の多くを占める中山間地では農林業が重要な産業です。中山間地の農耕地周辺には森林や草地などの自然もしくは半自然植生(以下、周辺林野)が広大に広がります。こうした周辺林野は、隠れ家や餌を提供することにより害虫の天敵を維持しています。そうすることで、天敵を一時的に農耕地へ供給し、結果として農耕地で発生する害虫の抑制に役立っていることが、これまでの研究から明らかになっています。このような土着天敵による病害虫被害の軽減は、われわれ人間が知らないうちに多様な生物から受けている恩恵でもあります(生態系サービスとよばれる自然の恵みのひとつ:病害虫制御サービス)。周辺林野が持つこうした機能を上手に活用することで、環境に負荷の少ない農業を持続的に行うことができるかもしれません。 しかし一方、全ての天敵

    『むしコラ』 農耕地の周辺環境: 露地栽培で土着天敵を利用するときに考慮すべきこと
  • 『むしコラ』 GFPよりも使いやすい遺伝子組換えマーカーを目指して

    2013年12月19日掲載 【GFPよりも使いやすい遺伝子組換えマーカーを目指して】 ショウジョウバエでは遺伝子組換え体を色や形などの見た目で判別できますが、他の昆虫では組換え体の判別はGFPなどの蛍光マーカーで行われています。しかし、蛍光マーカーを用いたスクリーニングは、蛍光顕微鏡が高価であることに加えて、実際やってみると大変骨の折れる作業であることをご存知の方もいるでしょう。 ショウジョウバエ以外の昆虫で遺伝子組換え実験をしている人は、ハエは肉眼で簡単にスクリーニングできるのでうらやましいと一度は思ったことがあるのではないでしょうか。 今回私たちは、様々な昆虫に適用可能で、組換え体を見た目(色)で判別できるマーカーを作り出すことに成功しました。(Osanai-Futahashi et al. 2012) 組換え体のスクリーニングは大変 私が所属する農業生物資源研究所・遺伝子組換えカイコ

    『むしコラ』 GFPよりも使いやすい遺伝子組換えマーカーを目指して
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    agrisearch 2014/02/10
    「様々な昆虫に適用可能で、組換え体を見た目(色)で判別できるマーカー」
  • 『むしコラ』 「生物を生きたまま電子顕微鏡で高解像度観察する」~昆虫が分泌する物質を規範とした"防護服"ナノスーツの開発~

    2013年12月23日掲載 【「生物を生きたまま電子顕微鏡で高解像度観察する」~昆虫が分泌する物質を規範とした"防護服"ナノスーツの開発~】 生物表面の微細構造の観察/解析には、走査型電子顕微鏡が有効な機器として用いられて来ました。しかし、高倍率・高分解能で表面微細構造を観察できる電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)では、試料を高真空環境(10-5~10-7Pa)に曝さなかえればならないので、生物が含む水分やガスなどが奪われて微細構造がたやすく変形してしまいます。そのため生物試料に様々な化学的前処理を施した後に予備乾燥したり、あるいは真空度を10-2Pa程度に下げた低真空SEMを用いるなど機器側の開発も行われたりしてきましたが、前者は微細構造が崩れ、後者は解像度が下がってしまうなどの問題が生じます。生物という濡れた試料を高倍率・高分解能観察することは困難で、ましてや生きたままの生物の観

    『むしコラ』 「生物を生きたまま電子顕微鏡で高解像度観察する」~昆虫が分泌する物質を規範とした"防護服"ナノスーツの開発~
  • 『むしコラ』 共生界の遺伝的フランケンシュタインモンスター

    2014年01月01日掲載 【共生界の遺伝的フランケンシュタインモンスター】 農業害虫として悪名の高いミカンコナカイガラムシは、別種の細菌を内部に宿した細菌がさらに昆虫の細胞の中に入り込むマトリョーシカ人形のような入れ子状共生系を持っています。この共生系の進化には、これら3種の以外の生物も深く関わって来たことがゲノム解析により明らかになりました。 入れ子か否か 図1: コナカイガラムシと入れ子状共生系。(A)ミカンコナカイガラムシ、(B)腹部の菌細胞塊(赤)、(C)入れ子状共生系、ベータ細菌(赤)の中にガンマ細菌(緑)が入り込んでいる。青色は宿主細胞の核。画面中央で2個の菌細胞が隣接している。 (クリックで拡大します) 綿ぼこりのようなふわふわで小さく扁平な体を覆い、動きは非常に緩慢な虫が植物の表面に集団を作っているのを見たことはないでしょうか? おそらく彼らはコナカイガラムシです(図1)

    『むしコラ』 共生界の遺伝的フランケンシュタインモンスター
  • 『むしコラ』 イモムシ体表にスポット紋様が生じるメカニズムの解明

    2014年01月17日掲載 【イモムシ体表にスポット紋様が生じるメカニズムの解明】 動物の体表には目玉のような模様がよく見られます。このような紋様の多くは捕者に対するシグナルといわれていますが、その形成メカニズムの詳細は知られていませんでした。今回私たちは、カイコの突然変異体やキアゲハなどの幼虫を用いて、幼虫体表のスポット紋様が生じるメカニズムを解明しました1,2)。 イモムシ体表に見られるスポット紋様 蝶や蛾の幼虫の背側の体節には、スポット状の紋様がみられることがよくあります。目玉のように見える1対の紋様(図1A: カイコの祖先種とされるクワコ幼虫の紋様)や、目立つ斑点が並んだ紋様(図1B: キアゲハの幼虫)など、これらは警告的なシグナルとして鳥や小型の動物の捕から免れる働きをしているといわれています。このようなスポット紋様は、幼虫の体表の表面に分泌されるクチクラ層に描かれていますが

    『むしコラ』 イモムシ体表にスポット紋様が生じるメカニズムの解明
  • 『むしコラ』 コオロギから見た昆虫概日時計の多様性

    2014年01月20日掲載 【コオロギから見た昆虫概日時計の多様性】 体内時計(概日時計)はバクテリアからヒトまで進化的に保存されており、地球で生命活動を営む上で基盤となる重要な仕組みです。この時計を用いて、生物は環境の変化を予知することができます。多様な環境に適応して生息する昆虫では、時計も多様化が進んでいると考えられています。私たちは、昆虫体内時計の多様化の理解を目指して、コオロギの体内時計の仕組みの解析を進めています。 図1: フタホシコオロギ雄成虫 フタホシコオロギ成虫は明瞭な夜行性の活動リズムを示す。そのリズムを制御するのは視葉という組織に存在する概日時計である。 (クリックで拡大します) 概日時計の背後には、約24時間の時を刻む「時計遺伝子」が関与しています。時計遺伝子には複数種あり、それぞれ体内時計の歯車のような役割を担っています。それらの時計遺伝子のいくつかが一日周期で発現

    『むしコラ』 コオロギから見た昆虫概日時計の多様性
  • 『むしコラ』 ゴキブリに栄養を供給する細菌の行く末は?

    2014年01月30日掲載 【ゴキブリに栄養を供給する細菌の行く末は?】 非常にタフな害虫というイメージがあるゴキブリですが、実は一人では生きていくことができず、細胞内に共生しているブラタバクテリウム(Blattabacterium cuenoti)という細菌からアミノ酸やビタミンなどの栄養をもらって生きています。この細菌は、今から約一億八千万年前にゴキブリの祖先に感染し、母から子へと絶やすことなく受け継がれてきました。しかし、一部のゴキブリのグループはこの細菌を失っているのです。長大な年月を片時も離れることなくゴキブリと歩みをともにしてきたこの細菌にいったい何が起こったのでしょうか? ブラタバクテリウムの役割 図1: オオゴキブリ脂肪体切片のHE染色像。ブラタバクテリウムを含む菌細胞が脂肪体内に点在し、薄紫色に染まっている。 (クリックで拡大します) ブラタバクテリウムはほぼ全てのゴキブ

    『むしコラ』 ゴキブリに栄養を供給する細菌の行く末は?
  • 『むしコラ』 オルガネラ様共生細菌で身を守るミカンキジラミ

    2014年02月10日掲載 【オルガネラ様共生細菌で身を守るミカンキジラミ】 昆虫と微生物の共生のかたちのひとつに、微生物が宿主を外敵から守る「防衛共生」がありますが、この関係は進化的に不安定と考えられてきました。ところがさきごろ、私たちは、カンキツ類の大害虫であるミカンキジラミが、毒を作る共生細菌を自らの一部として安定な関係を築き、これを武器に天敵から身を守っているらしいことを明らかにしました。 図1: (左) ゲッキツ上のミカンキジラミ成虫。(中) ミカンキジラミ5齢幼虫。腹部に見える黄色いクロワッサン型の構造が、共生器官「バクテリオーム」。(右) バクテリオームの断面。表層細胞内にカルソネラ(赤色)、内腔内にプロフテラ(緑色)が多数収納されている。 (クリックで拡大します) 昆虫と共生する微生物は、その機能にもとづき、宿主のえさに乏しい栄養分を供給する「栄養共生体」、毒を合成して宿主

    『むしコラ』 オルガネラ様共生細菌で身を守るミカンキジラミ