第零景 † 失うことから全ては始まる。 その時が来たら 私は血も心も捧げます 正気にては大業ならず 憎い 憎い憎い 武士道はシグルイなり。 ↑ 第一景 駿府城御前試合 † 出場剣士十一組二十二名 敗北による死者八名 相討ちによる死者六名 射殺二名 生還六名 中二名重症 手島竹一郎氏家伝 写本「駿河大納言秘記」より 天下はすでに泰平 かかるご時世に東照大権現様ゆかりの この駿府城の庭先を血で汚せば 御公儀への叛意と受け取られましょう さすれば お家の一大事 されば… 御前試合の剣士になりかわり それがしがお見せつかまつる 真剣試合のもたらすものは つまるところこのようなもの それとも殿は… 駿河五十五万石を引き替えにされても このようなものが御覧になりたいと仰せられるか? 暗君… 寛永六年一月 家中の者二名切腹 不屈の精神を持った剣士にあっては 自己(おのれ)に与えられた過酷な運命(さだめ)