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ブックマーク / book.asahi.com (46)

  • 「フランス革命史」書評 庶民の記録で跡づける多様な姿|好書好日

    ISBN: 9784560098950 発売⽇: 2022/06/29 サイズ: 19cm/497,98p 「フランス革命史」 [著]ピーター・マクフィー 「市民革命」という言葉はやめませんか。数年前、ある思想史事典の編集委員で連名記事をつくる際、そう申し入れたことがある。日語のこの言葉には独自のニュアンスがあるにせよ、西洋語では「ブルジョワ革命」と翻訳するしかない言葉だからだ。日の教科書のように、西洋近代の政治変動をこの言葉で一括するのは、欧米ではごく稀(まれ)だ。 フランス革命を「ブルジョワ革命」とみなす通説にフランソワ・フュレが批判を寄せてから、半世紀ほどの年月を経た。階級闘争史観の次の次はどうなっているか。2016年にイエール大学出版局から原著が出版されたこのは、この問いに一つの方向性を示している。新旧の膨大な革命史研究の成果をバランスよく折衷的に吸収しながら、平易に、テンポ

    「フランス革命史」書評 庶民の記録で跡づける多様な姿|好書好日
  • 鳥飼茜さんの漫画「ロマンス暴風域」がドラマに 社会や周囲が求める“性”に苦しめられている人はたくさんいる|好書好日

    鳥飼茜さん 鳥飼茜(とりかい・あかね) 漫画家。1981年大阪生まれ。2004年デビュー。現在、「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で『サターンリターン』を連載中。また、22年7月5日からMBS/TBSドラマイズムにて『ロマンス暴風域』(扶桑社)の実写ドラマが全5回で放送されている。他の作品に『先生の白い嘘』(講談社)、『地獄のガールフレンド』(祥伝社)、『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』(KADOKAWA)などがある。 ドラマ化は予想外 ――社会が求める男性性にそぐわず閉塞感を抱く男性が、性風俗店で働く女性に恋をして、急にその男女関係が断絶するまでと、別れた後の彼の運命を描いた『ロマンス暴風域』。現在、ドラマが放送中ですが、ドラマ化の話を聞いたときはどんな気持ちでしたか? 2016年から18年まで連載していた漫画だったので、ドラマ化は予想外で、幸運が舞い降りたような気持ちになり

    鳥飼茜さんの漫画「ロマンス暴風域」がドラマに 社会や周囲が求める“性”に苦しめられている人はたくさんいる|好書好日
  • 映画「メタモルフォーゼの縁側」原作者・鶴谷香央理さんインタビュー BLがつないだ2人の小さな変化の物語|好書好日

    ©2022「メタモルフォーゼの縁側」製作委員会 鶴谷香央理(つるたに・かおり)漫画家 1982年生まれ。富山県出身。2007年に「おおきな台所」でデビューし、同作で第52回ちばてつや賞準大賞を受賞。『メタモルフォーゼの縁側』(全5巻、KADOKAWA)が初の単行となる。同作で「このマンガがすごい!2019 オンナ編第1位」「文化庁メディア芸術祭 マンガ部門新人賞」などを受賞。その他の単行に、初連載作品『don’t like this』(リイド社)や短編集『レミドラシソ 鶴谷香央理短編集 2007-2015』(KADOKAWA)がある。 Twitter:@tsurutani さえない女子高生・佐山うらら(芦田愛菜)と、夫に先立たれ一人暮らしの老婦人・市野井雪(宮信子)。年齢も生きてきた環境も肩書も……何もかもが違う2人をつないだのは、ボーイズ・ラブ(BL)! 雪がBL漫画の表紙に一目ぼ

    映画「メタモルフォーゼの縁側」原作者・鶴谷香央理さんインタビュー BLがつないだ2人の小さな変化の物語|好書好日
  • 解き明かされるネオリベラル主義のミッシング・リンク!――『統治不能社会』|じんぶん堂

    記事:明石書店 『統治不能社会――権威主義的ネオリベラル主義の系譜学』(明石書店) 書籍情報はこちら 「ネオリベ的」なるものの多義性 わたしたちは日々「新自由主義」という言葉の多義性に忙殺されている。たとえば大学・学校関係者を例にしよう。最近の「10兆円大学ファンド」に代表されるように、大学運営を市場の価値観へと同調させるよう強く迫る、市場の至上主義とも言うべき潮流に押される一方で、旧共産圏出身者から思わず郷愁の言葉が漏れ聞こえるほどの数値化、計画化とその報告作成に日々圧されてもいる。この計画経済的運営を「実質化」すべく学長および理事会に強権を与え、やりようによっては終身学長制をも可能にする独裁的なシステムが文科省のお墨付きのもと、当たり前のように導入されて久しい。市場主義と独裁、そして計画主義の奇怪なキメラである。しかし、このキメラの各部分をそれぞれネオリベ的と形容すれば矛盾を来すのも、

    解き明かされるネオリベラル主義のミッシング・リンク!――『統治不能社会』|じんぶん堂
  • 批評とは何か? 「ポスト」クリティークが叫ばれる時代に改めて問い直す(杉田俊介)|じんぶん堂

    記事:作品社 黒田清輝〈読書〉(部分)(1891) 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/) 書籍情報はこちら 一対一で、対峙する 批評とは何か。若い頃から批評を志しながら、恥ずかしいことに、いまだによくわかっていない。 ただ、次のことは考える。批評の原点には、一対一で対象に対峙する、という関係性がある。素朴で孤独な営みである。それは依然変わらずある。 対象はもちろん小説作品に限らない。ただ一人で、数多くの優秀な人間が関わった総合芸術のような巨大な作品にも向き合わねばならない。考えてみればそれはいささか異様なことでもある。めまいを覚えるような圧倒的な無力さがあるだろう。 しかし思えば、批評という営みのある一断面は、そうした無力さと切り離せないのではないか。既存の一般的な価値判断に頼れず、自分にとっての美的な価値を自分の言葉で創造し、産出しなければならな

    批評とは何か? 「ポスト」クリティークが叫ばれる時代に改めて問い直す(杉田俊介)|じんぶん堂
  • 「素人」が「投稿」し、自ら動員される参加型ファシズム 大塚英志『大政翼賛会のメディアミックス』|じんぶん堂

    記事:平凡社 書籍情報はこちら 「翼賛一家」というまんがが、戦時下にあった。昭和十五年末から、多くの新聞、雑誌に連載され、単行もいくつか出た。レコード化、ラジオドラマ化、小説化などもされた。これは今のことばで言えばメディアミックス作品である。 書はこの「翼賛一家」のメディアミックスについて考えるものである。(中略) 「翼賛一家」が戦時下における政治的動員の手段として意図され、仕掛けられた「メディアミックス」であった点は書で検証していくが、それまでの多メディア展開と異なる点が大きくいって三つある。 一つ目は、これがあらかじめ多メディア展開を想定したものである、ということ。つまり、最初から「メディアミックス」という企画であったということ。「翼賛一家」の場合、同名のまんがなり小説なり、何かまず一つのメディアで「原作」に相当する作品が大ヒットし、その人気に便乗する形で二次的にアニメーションや

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  • なぜ「女性哲学者」は非業の死をとげたか 『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』|じんぶん堂

    記事:白水社 世界で最も有名な「新プラトン主義者」の実像を描く! エドワード・J・ワッツ著『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』(白水社刊)は、男性社会を生きた女性数学・哲学者の評伝。「アレクサンドリアのヒュパティア」を政治社会階層・宗教と暴力との関係から解説。 書籍情報はこちら チャールズ・ウィリアム・ミッチェル《ヒュパティア》より 大斎の殺人 紀元後5世紀のローマ帝国は、市民たちが複雑な幻想を受け入れることを当てにしていた。人々は、自分たちが生きている国やその国を運営している人間には、逆らいがたい権力があるものと信じさせられていた。帝国官僚と地方エリートと教会指導者と帝国軍将校は結託して、自らが掌握した公共の秩序がいかに脆もろいものであるかを、脅迫と報酬と個人的な人脈によってひた隠しにしながら、帝国の諸都市を統御していた。エリートによる統制という幻想の維持に役立ったのはじつ

    なぜ「女性哲学者」は非業の死をとげたか 『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』|じんぶん堂
  • 本や映画をより楽しむための批評のやり方を一から解説! 北村紗衣『批評の教室』より|じんぶん堂

    記事:筑摩書房 チョウのように読み、ハチのように書くための批評入門 イラスト/とくながあきこ 書籍情報はこちら 芸術作品に触れる時の心構え 俺はチョウのように舞い、ハチのように刺す。 (I’m gonna float like a butterfly, and sting like a bee.) これはボクシングチャンピオンだったモハメド・アリの有名な決まり文句です。モハメド・アリは強いボクサーである一方、アフリカアメリカ人として人種差別反対運動にも取り組み、気の利いた鋭い台詞でファンを喜ばせる機知に富んだ人物でした。この文句はアリのトレーナーだったドルー・バンディーニ・ブラウンが考案したもので、一九六四年にまだカシアス・クレイという名前で知られていたアリがソニー・リストンと対戦した時に初めて披露されました。それ以降、アリの軽やかで鋭いスタイルを一言で示す台詞として広く知られるようにな

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  • 140年前に芽吹いた自由と権利の夢 あきる野市中央図書館「五日市憲法草案と自由民権関係資料」|じんぶん堂

    記事:じんぶん堂企画室 実際の五日市憲法草案(一部) 書籍情報はこちら 「開かずの土蔵」から見つかった謎の憲法 1968(昭和43)年、東京都五日市町(現・あきる野市)で、旧家の土蔵に眠っていたおびただしい古文書の山から、とんでもないものが見つかった。 明治憲法公布に先立ち、全国各地で100近く作られた憲法の私案(私擬憲法)の一つで、今では教科書にも載る「五日市憲法草案」と呼ばれるものだ。 発見したのは、東京経済大学の色川大吉教授(現・名誉教授)らとゼミの学生たち。この旧家、深澤家は江戸時代から多くの山林を持つ五日市の豪農で、屋敷跡に残っていた土蔵は、「開かずの土蔵」とも言われていた。 復元された深沢家屋敷想像模型図 そこに着目したのが、多摩の自由民権運動を調査していた色川教授だった。深澤家は明治10年代、その中心的存在だったことがわかっていたため、膨大な資料が残っていると期待された。実際

    140年前に芽吹いた自由と権利の夢 あきる野市中央図書館「五日市憲法草案と自由民権関係資料」|じんぶん堂
  • フーコー「性の歴史IV 肉の告白」 情欲は非意志的 自己内の解読へ 朝日新聞書評から|好書好日

    ISBN: 9784105067120 発売⽇: 2020/12/21 サイズ: 20cm/554,20p 性の歴史IV 肉の告白 [著]ミシェル・フーコー [編]フレデリック・グロ 書はミシェル・フーコーの『性の歴史』の第4巻である。フーコーは生前に原稿を書き上げ、出版社に委ねたという。しかし、著者の遺志によってこのは刊行されないままとなり、権利承継者の許可によってようやく日の目を見ることになった。30年以上の時を隔てて私たちの手元に届いた書は、あるいはフーコーの理解を変える可能性を秘めている。 そもそも『性の歴史』という著作自体が紆余(うよ)曲折を重ねている。セクシュアリティの歴史という、まさにフーコー的なプロジェクトの第1巻『知への意志』が刊行されたのが1976年である。そこから第2巻の『快楽の活用』と第3巻の『自己への配慮』出版までに、8年もの間が空いている(書いていてあらた

    フーコー「性の歴史IV 肉の告白」 情欲は非意志的 自己内の解読へ 朝日新聞書評から|好書好日
  • 「明日は生きてないかもしれない……という自由」書評 リブ先駆者による解放の書|好書好日

    明日は生きてないかもしれない…という自由 私、76歳 こだわりも諦めも力にして、生きてきた。 著者:田中 美津 出版社:インパクト出版会 ジャンル:社会・時事 明日は生きていないかもしれない……という自由 [著]田中美津 挑発的にいっちゃうが、田中美津を知らないでフェミニズムを語りたがる人はまぁモグリよね。 〈あの時代、パソコンなんかないから、「便所からの解放」と題したビラを謄写版で刷って、新左翼やベ平連の集会で撒いたのね。そうしたら女の人たちが、争うようにビラを取りに来て……〉。ときに田中美津27歳。これが日のウーマンリブのはじまりだった。2年後に出版された『いのちの女たちへ』(1972年)は日の女たちにとって解放の書となった。 そして47年。『明日は生きてないかもしれない……という自由』は、『この星は、私の星じゃない』(岩波書店・5月刊)に続いて出版された美津さんの短文&発言集だ。

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  • 「ファシズムの教室」書評 興奮・歓喜の危険 体験して学ぶ|好書好日

    ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか [著]田野大輔 白シャツをジーンズにインした200人以上の若い男女が整列し、「ハイル、タノ!」と叫ぶ。胸には変なマークが描かれたガムテープを全員がつけている。場所は大学の構内。彼らはいちゃつくカップルを取り囲み、「リア充爆発しろ!」と大声で責め立てる……。 どう見ても異様だし、不快ともいえる光景だ。しかしこれは、「ファシズムの体験学習」というタイトルの授業の一環なのだ。書では、この授業をつくりあげた著者が、授業の意図と工夫と効果、ファシズムの過去と現在について、詳細な説明を繰り広げている。 ファシズムの核にあるのは、強大な権力を握った独裁者が人々を無理やり従わせる恐怖政治ではない、と著者は述べる。確かにヒトラーのような権力者は存在するが、ファシズムに不可欠なのは、支配される側からの積極的な、時に熱狂的な支持なのである。 なぜ人々は支持するのか。命

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  • 塩田武士さん「デルタの羊」インタビュー 「40歳目前でアニメにハマった」作家が描く「日本アニメ」のリアル|好書好日

    文・写真:吉村智樹 塩田武士(しおた・たけし)小説家。 1979年 兵庫県生まれ。関西学院大学社会学部卒業後、神戸新聞社に入社し、2012年まで10年に亘り新聞記者を続ける。10年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞し、小説家としてデビュー。19年『歪んだ波紋』で第40回吉川英治文学新人賞。代表作は昭和最大の未解決事件を扱い映画化もされた『罪の声』。著作に『騙し絵の牙』『女神のタクト』『ともにがんばりましょう』『拳に聞け!』などがある。 Facebook アニメに開眼、新しい扉が開いた ――新刊『デルタの羊』はアニメーション制作現場の様子が生々しく描写されていますね。「当の話なのかな?」と思うほど、アニメを愛するクリエイターたちの想いが現実味を帯びて伝わってきました。 『デルタの羊』を書くために「鬼滅の刃」のプロデューサーであるアニプレックスの高橋祐馬さんや、「ポプテピピッ

    塩田武士さん「デルタの羊」インタビュー 「40歳目前でアニメにハマった」作家が描く「日本アニメ」のリアル|好書好日
  • マンガ同人誌、若者の表現メディア 1970年代の熱気伝える「村上コレクション」|好書好日

    「村上コレクション」内の、1970年代のさまざまなマンガ同人誌。作品集から評論誌まで、「ぼくたちのまんが」の姿を伝えるものになっている=いずれも京都国際マンガミュージアム提供 「同人誌というのは、ぼくたちのまんがの、最もぼくたちらしい部分だという気がします。ぼくたちにとって、まんがというのは、ぼくたちがそれを描くことも、それについて語ることも、自由自在にできるのだという意味で、まさにぼくたちのメディアであるわけですから」 これは「プガジャ」の愛称で親しまれた関西の情報誌、『プレイガイドジャーナル』1978年3月号の特集記事の冒頭に掲載された文章だ。執筆したのは、のちに同誌編集長も務めるマンガ評論家の村上知彦氏である。 京都国際マンガミュージアムには研究者やマンガ関係者から寄贈された、貴重な資料も収蔵されている。先述の「プガジャ」のほか、当時の同人誌・ミニコミ誌や雑誌などを多数含む「村上コレ

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  • イギリスの「国民食」から読み解く、移民と階級社会 『フィッシュ・アンド・チップスの歴史』|じんぶん堂

    記事:創元社 フィッシュ・アンド・チップス(撮影協力:東京・神楽坂Public House The Royal Scotsman) 書籍情報はこちら 「イギリス料理は美味しくないでしょう?」と言われて 一時期イギリスで生活したことがあると人に話すと、時折「べものが美味しくないと言いますから大変だったでしょう?」などと同情と揶揄がまじった質問を受けることがある。別段イギリスの文化を擁護する義理はないのだが、自身の経験と感覚には正直でありたいと思い、毎度「そんなことはなかった」と答えている。それで済まない場合は、逆にこう聞くことにしている。「ローストビーフやサンドウィッチはお嫌いですか?」。近代以降、日生活に組み込まれ、長年愛好されてきたイギリス伝来の料理は少なくない。このことからでも、日英の味覚には地続きの部分があると言えるのではないか、といった趣旨のことを話してみる。 だが、なか

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  • https://book.asahi.com/article/13860614

  • アニメの専門家はなぜ「京アニ事件」に沈黙したのか 平凡社新書『京アニ事件』より|じんぶん堂

    記事:平凡社 書籍情報はこちら アニメファンが攻撃されてきた歴史 第1章で、京アニ事件では、来ならコメントしたり解説したりするべき専門家の多くが取材を断ったことに触れた。実際に何人の専門家が取材を断ったのかをデータとして得ているわけではないし、京アニ事件において、私以外この話題を取り上げている例もほとんどないように思われる。あるいは、このことを問題にすること自体がタブーなのかもしれない。 それでも、事件報道に少なからず関わった私としては、問題としての大きさにかかわりなく、多くの専門家が事件に対するコメントを封印したという事実は、京アニ事件であらわになった特徴的な事象の一つとして指摘しておきたいと考える。 第1章で書いたように、専門家がコメントを避けた理由は、まず、事件の異常性、凄惨さを前にして、不用意に発言することによるリスクを避けようとしたこと。これは、評論家や研究者だけではなく、京ア

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  • GHQが「洗脳」?実態は 賀茂道子さん、保守論壇「自虐史観植え付けた」説を史料で探る|好書好日

    「ウォー・ギルト・(インフォメーション・)プログラム」という言葉が保守論壇で流行している。第2次世界大戦後の占領軍の計画で、日人は洗脳され、自虐史観に塗り替えられたというのだ。その全体像を膨大な史料から探った著作が公刊された。当に日人は洗脳されたのか。研究の結果から著者は「洗脳されたとは思えない」という。 「体系的な施策ではなかった」 著作は『ウォー・ギルト・プログラム――GHQ情報教育政策の実像』(法政大学出版局)。著者は賀茂道子・名城大学非常勤講師(日政治外交史)だ。 この言葉は、文芸評論家の故・江藤淳氏が1989年の『閉(とざ)された言語空間』(現在は文春文庫)で紹介した。GHQ(連合国軍総司令部)の文書から見つけた江藤氏は、「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」と表記した。現在の保守論壇はWGIPと略す。 ◇ 代表的な施策が二つあったとされる。GHQの一部門CI

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  • 「コロナ時代」マンガ文化に起きていること オンライン同人誌即売会さかんに…どうなるアナログ|好書好日

    世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID―19)。日でも感染拡大により、あらゆる業界が甚大な影響を受けている。マンガ界も例外ではなく、これまで見たことのないような変化が現れている。「コロナ時代」に起きているマンガ界の出来事をいくつか紹介したいと思う。 * 外出自粛が求められる中、室内で楽しめるマンガを読む人は増えている。出版科学研究所の発表によると、2020年3月の書籍雑誌の推定販売金額は前年同月に比べ5・6%減となる中、コミックスは約19%増加したという。期間限定のイベントとして雑誌のバックナンバーや単行の一部をオンラインで無料公開する出版社も多く見られた。 一方で、雑誌や単行の販売延期が相次いだのが大きな特徴だ。編集や印刷、流通などを従来のスピードで進めることが難しくなったためだ。 集英社は4月、『週刊少年ジャンプ』の編集部員が新型コロナウイルスに感染した疑いがあ

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  • 偽の系図や由緒書…まちの文化財に!? 江戸期作成の「椿井文書」研究が本に |好書好日

    現在の京都府井手町の12世紀半ばの景観を描いたとされる絵図の写し。原画は「椿井文書」と推定されている=京都府立京都学・歴彩館蔵 近畿地方の広い範囲で、旧家の系図や寺社の由緒書(ゆいしょがき)、村の絵図など、江戸時代後期に中世のものとして偽作された多数の文書(もんじょ)が、自治体の出版物などに物として紹介されていることが分かってきた。馬部(ばべ)隆弘・大阪大谷大学准教授(日中近世史)は、近著『椿井(つばい)文書――日最大級の偽文書』(中公新書)で、歴史学研究の現状に警鐘を鳴らしている。 馬部さんは大阪府枚方市の非常勤職員だった2003年、同市内の城郭について調べる中で、江戸時代にその場所の支配権をめぐる村同士の争いが起きており、一方が根拠とした中世の古文書が偽書であることに気づいた。偽文書を村に提供した南山城(京都府南部)の椿井政隆(1770~1837)という人物を調べていくと、彼が山

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