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ブックマーク / saebou.hatenablog.com (15)

  • 一番セックスしない奴が勝つスラッシャー映画~『首』(ネタバレ・下ネタ注意) - Commentarius Saevus

    北野武監督『首』を見てきた。 www.youtube.com 織田信長(加瀬亮)の家臣たちの権力闘争を軸に能寺の変とその後の展開を描いた時代劇である。史実に忠実かどうかはあまり考えず、家臣たちの憎々しく暑苦しい人間関係や策謀を描くことに重点を置いている(このへんちょっとコーエン兄弟の『ミラーズ・クロッシング』に似ていると思った)。暴力描写も最初から最後までけっこうすごいが、笑うところはたくさんある。とくに豊臣秀吉(監督人)、羽柴秀長(大森南朋)、黒田官兵衛(浅野忠信)のやりとりはまるでコントみたいである。 一応時代劇…なのだが、なんか一番セックスしない奴が生き残るスラッシャーホラー映画みたいな作品である。スラッシャームービー(slashじゃなくてslasherのほう。まあこの映画はslashでもあるのだが)といえばセックスにふけるティーンエイジャーが殺され、性的に純潔なファイナルガール

    一番セックスしない奴が勝つスラッシャー映画~『首』(ネタバレ・下ネタ注意) - Commentarius Saevus
  • ベルファストの厳しい現実と役に立ちすぎる哲学~『ぼくたちの哲学教室』 - Commentarius Saevus

    『ぼくたちの哲学教室』を見てきた。ベルファストにあるホーリークロス男子小学校の哲学教育を撮ったドキュメンタリー映画である。 www.youtube.com ホーリークロス男子小学校はベルファストのアードインにある小学校で、ワーキングクラスのカトリックの子どもたちが多く通っている。北アイルランド紛争で地域全体が疲弊したため、暴力犯罪やドラッグ、自殺が多発している。そんな中、子どもたちが暴力や犯罪にハマらないよう、ホーリークロス男子小学校では校長のケヴィン・マカリーヴィー先生を中心に哲学教育やメンタルヘルスのケアに力を入れている。 マカリーヴィー先生がかなり強烈なキャラで、哲学の先生なのだが、昔はいろいろお酒や暴力でトラブルを起こしたこともあり、そこから立ち直ったらしい。エルヴィス・プレスリーの大ファンで、スマホの着信音は常にエルヴィスだ。筋トレも欠かさないコワモテの先生でもある。マカリーヴィ

    ベルファストの厳しい現実と役に立ちすぎる哲学~『ぼくたちの哲学教室』 - Commentarius Saevus
  • 学校演劇をする予算すらもらえない演劇好き高校生たちの奮闘を描いた青春もの~『マイ・ビューティフル・デイズ』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『マイ・ビューティフル・デイズ』を見てきた。カリフォルニアの高校で演劇をしている生徒たちと教員を描いた青春ものである。 www.youtube.com 主人公であるスティーヴンズ先生(リリー・レーブ)は、独白コンテストに出場する生徒たちを車で引率することになる。メンバーは優等生で仕切りが上手なマーゴ(リリ・ラインハート )、才能豊かだが精神不安定で行動障害の薬をのんでいるビリー(ティモシー・シャラメ)、ゲイで感じの良いサム(アンソニー・キンタル)の3人である。それぞれ個性的な生徒たちだが、ビリーは所謂スクールボーイクラッシュでスティーヴンズ先生に夢中である。若くて不慣れなところもあるスティーヴンズ先生のもとで、はたしてコンテストは無事に終わるのか… これ、私は勘違いしていて高校演劇部の話だと思って見に行ったのだが、演劇部どころか、芸術予算がカットされたせいで学校演劇ができなくなり、演劇が好

    学校演劇をする予算すらもらえない演劇好き高校生たちの奮闘を描いた青春もの~『マイ・ビューティフル・デイズ』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 今月よりwezzyでヘイズ・コードとそれ以前の映画についての特集を始めます - Commentarius Saevus

    今月よりwezzyでヘイズ・コードとそれ以前の映画についての特集を始めます。1回目は「知られざるプレコード映画の世界(1)~実は奥深い映画規制「ヘイズ・コード」」ということで、実際にみんなあまり読んだことはないのであろうヘイズ・コードについての解説です。来月以降、いくつか面白いプレコード映画を紹介したいと思っています。 wezz-y.com

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  • 日本のレズビアン版『エンジェルス・イン・アメリカ』~『ことばにない 前編』 - Commentarius Saevus

    こまばアゴラ劇場でムニ『ことばにない 前編』を見てきた。宮崎玲奈作・演出で、前編だけで4時間半(休憩2回)という大作である。 主人公は演劇をやっている朝美(豊島晴香)、ゆず(ワタナベミノリ)、かのこ(巻島みのり)、美緒(浦田すみれ)が主人公だ。朝美は結婚を控えているが、婚約者から演劇活動をあまり良く思われていない。ゆずは父親が病気で手術を受けることになる。レズビアンのみのりは恋人の花苗(和田華子)が心の病気で、かなり具合が悪いこともあるのを気にかけている。この4人は学校時代に演劇部だったのだが、顧問だった山川先生が亡くなってしまい、遺品として息子の雄也(黒澤多生)から山川作の戯曲が送られてくる。山川先生はその戯曲をかつての教え子たちに上演してほしいと考えていたらしいのだが、この作品は山川先生がレズビアンだったということを書いたものだった。山川先生の姪である美由(田島冴香)は保守派のアンチL

    日本のレズビアン版『エンジェルス・イン・アメリカ』~『ことばにない 前編』 - Commentarius Saevus
  • 台本はよく出来ているが、個人的に非常にいけ好かない映画だと思った~『アルプススタンドのはしの方』 - Commentarius Saevus

    『アルプススタンドのはしの方』を見てきた。高校演劇で賞をとった戯曲の映画化である。元の舞台は未見である。 www.youtube.com もともとが高校演劇の戯曲ということで、短い作品だ。演劇部のあすは(小野莉奈)とひかる(西まりん)、元野球部の藤野(平井亜門)、優等生の宮下(中村守里)を中心に、高校野球の観戦をしながらいろいろな人間関係が浮き彫りになっていくというような会話劇である。試合の様子は一切映らず、この4人と数名の他の生徒や教員のやりとりだけで展開する。 非常によくできた台で、演技などもしっかりしてまとまりのある映画なのだが、私は個人的な趣味として全く好きになれなかった。というのも、この作品は高校生が強制的に高校野球を見に行かされることを「良いこと」として正当化する話だからである。あすはとひかるは全く高校野球に興味がないのに学校の命令で観戦させられており、最初の部分ではそうし

    台本はよく出来ているが、個人的に非常にいけ好かない映画だと思った~『アルプススタンドのはしの方』 - Commentarius Saevus
  • オマージュがごっそり詰め込まれた楽しいアニメ映画~『バッドガイズ』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    ドリームワークスのアニメ作品であるピエール・ペリフェル監督『バッドガイズ』を見てきた。 www.youtube.com だいたい人間ばかりの社会の中にぽつぽつ動物のキャラクター(しかも多くはあんまり好かれていない感じの動物)がいるという世界観で展開するアニメである。ウルフ(サム・ロックウェル)、スネーク(マーク・マロン)、ピラニア(アンソニー・ラモス)、シャーク(クレイグ・ロビンソン)、タランチュラ(オークワフィナ)はみんな嫌われ者の動物たちで、アウトサイダー同士で組んだ窃盗団「バッドガイズ」として悪名高かった。ところがひょんなことから全員つかまってしまい、ウルフが刑務所行きを逃れるために行った策略の結果、バッドガイズはモルモットで慈善家として有名なマーマレード教授(リチャード・アイオアディ)のところで善良になるためのトレーニングを受けるが… たぶんクエンティン・タランティーノの映画などを

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  • 限りある残りの人生をどう生きるか?~『長ぐつをはいたネコと9つの命』 - Commentarius Saevus

    『長ぐつをはいたネコと9つの命』を見てきた。『シュレック』フランチャイズの新作で、2011年の『長ぐつをはいたネコ』の続編である。 www.youtube.com 長ぐつをはいたネコことプス(アントニオ・バンデラス)は無鉄砲な暮らしぶりがたたってネコが持つ9つの命のうち8つを失ってしまった。ドクターストップをかけられ、自分の命を狙っているらしい怪しいオオカミ(ワグネル・モウラ)にもつけ回され、不安になったプスは捨てを保護している家に転がり込む。そこでネコのふりをしている名前のない犬である通称「ワンコ」(ハーヴィ・ギイェン)に出会うが、ひょんなことから願いがかなうという願い星を探しに行くことになる。プスはワンコとかつての恋人キティ(サルマ・ハエック・ピノー)とともに願い星を探しに出かけるが、さまざまなライバルが願い星を狙っていた。 かわいいキャラクターが登場し、子どもも見られるアニメ映画

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  • リアルな近世、修道女大暴れ映画~『ベネデッタ』 - Commentarius Saevus

    ポール・バーホーベン監督の新作『ベネデッタ』を見てきた。 www.youtube.com 17世紀、イタリアのペーシャにある女子修道院に入ったベネデッタ(ヴィルジニー・エフィラ)は幼い頃から信心深く、やがてイエスの幻影を見るようになる。ベネデッタは性的虐待から逃げて修道院に入ったバルトロメア(ダフネ・パタキア)を助け、やがて恋仲になる。情熱的に神を信じるベネデッタは評判になり、やがて女子修道院長に任命されるが、同性愛と異端の疑いをかけられることになる。 フェティシズムの対象としての神を描いた映画で、けっこうナンスプロイテーションっぽいところもある。面白いのは、作におけるベネデッタは良いところもあれば欠点もあり、おそらくある種の狂気に陥っている複雑なキャラクターなのだが、(無神論者である私ですら)その狂信を応援したくなってしまうようなところがこの映画にはあるということだ。ベネデッタは情熱的

    リアルな近世、修道女大暴れ映画~『ベネデッタ』 - Commentarius Saevus
  • 『トップガン マーヴェリック』のわりを食った感じの歴史もの~『ディヴォーション: マイ・ベスト・ウィングマン』(配信) - Commentarius Saevus

    『ディヴォーション: マイ・ベスト・ウィングマン』をNetflixで見た。実在するアメリカ軍の黒人パイロットで、非白人としてアメリカ軍史に残る業績をあげたジェシー・ブラウンと、そのウィングマンだった白人のトム・ハドナーをめぐる史実に基づいた作品である。 www.netflix.com 1950年代、トム・ハドナー(グレン・パウエル)と、初めてアメリカ海軍生え抜きの黒人パイロットとなったジェシー・ブラウン(ジョナサン・メジャース)がクオンセット・ポイント空軍基地に赴任してくる。ジェシーは既に家庭があり、仲間とつるむよりもと過ごすのを大事にしていたが、キャロル(ニック・ハーグローヴ)やトムとは親しくなる。ところが最初の任務の出張先でキャロルが事故死してしまう。トムと組んだジェシーは朝鮮戦争で戦果をあげるが、ジェシーの乗機が墜落してしまう。トムはコックピットから出られなくなったらしいジェシー救

    『トップガン マーヴェリック』のわりを食った感じの歴史もの~『ディヴォーション: マイ・ベスト・ウィングマン』(配信) - Commentarius Saevus
  • 第13回情報プロフェッショナルシンポジウムでウィキペディアの話をします - Commentarius Saevus

    12/1(木)から12/2(金)にかけて科学技術振興機構東京部別館で開かれる第13回情報プロフェッショナルシンポジウム(INFOPRO16)にて、2日目午前中のシンポジウムに登壇して日語版ウィキペディアの話をいたします。10時開始で、「トーク&トーク 情報社会から融合社会へ− 仮想と現実が融合する社会での情報のガバナンスと信頼性を考える」という題目のセッションです。主にウィキペディアの信頼性とかの話をする予定ですが、こんな情報系のセッションに呼ばれたことは今まで一度も無いので緊張しています… この日は英日翻訳ウィキペディアン養成プロジェクトで学生たちが作ったウィキペディア記事に関するポスター発表もする予定です。これまたポスターを作ったことが無いので緊張しています。 こちらにチラシがありますので、ご覧下さいませ。

    第13回情報プロフェッショナルシンポジウムでウィキペディアの話をします - Commentarius Saevus
  • これならシェイクスピア劇をそのままやったほうが…『アウグストゥス-尊厳ある者-』&『Cool Beast!!』  - Commentarius Saevus

    宝塚の『アウグストゥス-尊厳ある者-』と『Cool Beast!!』を無観客有料配信で見た。 kageki.hankyu.co.jp 基的にアウグストゥスこと若きオクタヴィウス(柚香光)のキャリア序盤を描いたものである。カエサル(夏美よう)の独裁官就任からアントニウス(瀬戸かずや)とクレオパトラ(凪七瑠海)の自殺までを描いている。オクタヴィウスとポンペイウスの遺児ポンペイア(華優希)の恋愛と友情の中間みたいな絆がかなり前面に出てきている。 全体的にあまり史実にものっとっておらず、シェイクスピア劇準拠というわけでもなく、若いオクタヴィウスがいろいろなトラブルに直面して苦労して少し大人になって終了、というような感じのお話である。1時間半強しかないのでわりと物足りない感じだし、そもそもオクタヴィウスを主人公にこの時代を描いて面白いのかな…というのもちょっと疑問に思った。というのも、カエサル暗殺

    これならシェイクスピア劇をそのままやったほうが…『アウグストゥス-尊厳ある者-』&『Cool Beast!!』  - Commentarius Saevus
  • あのこは実は貴族じゃない~『あのこは貴族』 - Commentarius Saevus

    『あのこは貴族』を見た。www.youtube.com 東京の松濤で育った榛原華子(門脇麦)と、地方で育って東京に出てきた時岡美紀(水原希子)の暮らしがひょんなところで交錯するさまを描いた作品である。美紀は勉強して慶應義塾大学に合格するが、親の仕事がなくなったため学費が払えず中退し、水商売などで少しずつキャリアアップを目指す。華子は大金持ちの息子である青木幸一郎(高良健吾)と婚約するが、幸一郎は昔、慶應義塾大学で知り合いだった美紀と会っていたことがわかる。 最近の日映画の中では、階級とか地方格差を上のほうまで含めてものすごくちゃんと描いた作品である。貧しいほうを描くということであれば最近もうまくやっていたものはあるし、昔は上のほうの階級をちゃんと描いた作品というのもあったと思うのだが、この映画は現在の日の視点で細かい階級格差と地方格差を丁寧かつリアルに描いている。さらに上の階級の中での

    あのこは実は貴族じゃない~『あのこは貴族』 - Commentarius Saevus
  • 佐藤由美子さんの「日本語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」について - Commentarius Saevus

    ここ数日よく読まれているらしい、佐藤由美子さんの「日語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」というエントリを読みました。こちらは月末の学会で発表するための準備のようなものだということです。 yumikosato.com こちらについて、日語版ウィキペディアに歴史修正主義がはびこっているとか、間違いだらけだということについては私もとくに異論はないのですが(間違いだらけで信用できないということは私もメディアに出るたびに言っているし、できるところは対処してます)、いくつかけっこう大きな事実誤認や、ウィキペディアの手続きに関する理解不足と思われるところがあります。ブログのコメント欄に書いて指摘したのですが、スパムフィルタか何かに引っかかったのか反映されていません。学会で発表するということであればウィキペディアじたいの仕組みについて誤解があるままだとあまり良くないだろうと思うの

    佐藤由美子さんの「日本語版ウィキペディアで「歴史修正主義」が広がる理由と解決策」について - Commentarius Saevus
  • 生きるための哲学〜テアトル・ド・アナール『従軍中のウィトゲンシュタインが…』 - Commentarius Saevus

    新宿のSpace雑遊でテアトル・ド・アナール『従軍中のウィトゲンシュタインが…をみてきた。当のタイトルは異常に長い『従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行──およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならないという言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか? という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語』というもので、谷賢一のオリジナル戯曲だそうだ。 第一次世界大戦中、ヨーロッパ東部戦線の塹壕で戦闘の準備をしている5人の男たちについての芝居である。この中に若き哲学者ウィトゲンシュタインがおり、ホモフォビアが蔓延する塹壕でいじめられ、死と隣り合わせの状態で生きるために哲学する。自分をいじめている男がイギリスに残してきたボーイフレンドのデイヴィッドとちょっと

    生きるための哲学〜テアトル・ド・アナール『従軍中のウィトゲンシュタインが…』 - Commentarius Saevus
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