●代表作 ●「映画の理論」より69本 「カリガリ博士」より ●代表作 著書「映画の精神」1930年、 「視覚的人間 映画のドラマツルギー」1924年、 映画共同脚本「三文オペラ」G.W.パプスト 等 映画理論家、作家、詩学者、脚本家、映画監督、俳優 等で活躍したベラ・…
凡庸ならざる肖像画家の肖像 何もないものをいったいどのように造形すればいいのだろう? 『騎士団長殺し』を読み始めて、最初に気になったのは、「これは一体いつの話なのか?」ということだった。その答えは小説の終わり近くになってようやく与えられるのだが、それがわかったとき、やはりそうか、そういうことかと、暫しの衝撃の後、すぐさま深く納得したのは私だけではあるまい。この小説が要するにどういう作品なのかを考えてみようとする時、最終的な、もっとも重要な、と言っていい問題は、疑いなくこのことだ。だがもちろん、そこに辿り着くまでには、それなりの道筋が必要となる。 『騎士団長殺し』を読み終えて、最初に思ったことは、これは村上春樹自身による「村上春樹論」だ、ということだった。彼の小説はしばしば謎に満ちているといわれる。解けない謎、解かれないままで終わる謎また謎に。それゆえに読者や評論家は謎を解こうと躍起になり、
2023年3月10日、アニメ評論家・氷川竜介の新著『日本アニメの革新』(角川新書)が発売された。さっそく買って読んだのだが、いろいろ言いたいことが生まれたので、以下本文を解釈しながらいろいろ書いていく。 『日本アニメの革新』(角川新書)表紙 まずは著者について説明しよう。氷川は、アニメ評論家であり、(文章を読むタイプの)アニメ(や特撮の)ファンなら誰もが知るベテランライターの一人でもある。 1958年生まれで、日本初のテレビアニメ『鉄腕アトム』をリアルタイムで観た。77年、大学在学中に雑誌『月刊OUT』の「宇宙戦艦ヤマト特集」でデビューした。この特集は子ども雑誌以外で「アニメ」をメインに扱った最初期のものだ。また、当時は『宇宙戦艦ヤマト』ファンクラブの会長を務め、日本初のアニメ評論本とされる『アニメ大好き!──ヤマトからガンダムへ』(徳間書店)にも寄稿していた。氷川は、アニメライターという
取材=間瀬佑一、文・構成=すなくじら、写真=『君たちはどう生きるか』©︎2023 Studio Ghibli 映画とアニメーションの垣根が曖昧になりつつある昨今、その変化の最前線を映し出したのが2024年の数々の映画賞だった。 日本が誇るアニメーション界の巨匠、宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』が第96回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞。同賞の日本からの受賞は、同じく宮﨑が監督を務めた『千と千尋の神隠し』以来、21年ぶりとなった。本作が世界最高峰の映画祭で評価されたことは、アニメーションの新たな地平を切り開く出来事と言えるだろう。一方、インターネットを中心に社会現象にまで発展した『すずめの戸締まり』が同部門にノミネートされるなど、大衆性とアーティスティックな表現が交錯する現在のアニメーション事情を象徴する出来事も相次いだ。 こうした状況を受け、本座談会では映画ライターの杉本穂高氏、
「本を読まない人」から見た「読書論」水野 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』、とても興味深かったです。こうしたテーマだと、どうしても「本を読まない人はダメだ」という、読書家による「上から目線」の語り方に終始してしまうイメージがあります。でもこの本は、普段、本を読まない人の目線から書かれていて、そこが新鮮でしたね。 三宅 ありがとうございます。 水野 僕は、読書家が読書しない人を見下す態度が好きではないんですよ。本業が編集者でもあるので、そうした層にアプローチしないと、出版界の未来は明るくないと思っています。 三宅 読書が一部の好事家だけの趣味になってしまうと寂しいですよね。もっとたくさんの人に刺さるエンタメであってほしい、と私もどうしても思ってしまいます。以前会社員をしていたとき、心底それを感じました。たとえば会社の人との会話に「本屋大賞」や「直木賞」なんて言葉が出てくることはな
2月末に『アニメと戦争』(日本評論社)を上梓した。戦中から21世紀に至るまで、架空・現実を問わず「戦争」を取り扱ったアニメを取り上げ、そのアプローチの変遷を俯瞰した内容だ。 アニメについて語る書籍のカバーをどうするかはいつも難しい。特定の作品の図版を借りる方法はあるが、費用の問題もあるし、複数作品を扱っている本の場合は特定作品だけに看板を預けてしまってよいのか、という問題も生まれる。イラストを描いてもらう考えもあるが、描かれたそれはあくまでイラストであって、それがちゃんと「アニメ」を連想させるかどうかはなかなか難しい。これまでにインタビュー集含め著書を5冊上梓しているが、なかなかコレといった決定打はなく、毎回デザイナーを含めた様々な人の知恵を借りながらカバーを決めてきた。 ただ今回については、個人的な腹案があった。その時僕は、会田誠の《紐育空爆之図〈にゅうようくくうばくのず〉(戦争画RET
サンダーキャット、フライング・ロータス、ソランジュやジェイコブ・コリアー、果てはロックバンド、Alabama Shakesのフロントマン、ブリタニー・ハワードまでもが、ジャズのネットワークの中で音を鳴らしている――音楽評論家の柳樂光隆が監修したムック『Jazz The New Chapter 6』は、そう語っている。上記したミュージシャンの多くが近年の『グラミー賞』受賞者であること(しかも多部門にまたがっていること)を踏まえれば、ジャズをとりまく宇宙を考えることは、そのまま今の音楽を考えることにつながるだろう。 「ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平」を謳った、2014年の衝撃的な『Jazz The New Chapter』シリーズ開始から早6年。本シリーズを世に送り出してきた柳樂に、話を聞いた。もう一度、耳を世界に開くために。 音楽に関するテキストで、最も多く触れてきたのはライ
過去に『ジョジョ論』、『長渕剛論』、『宇多田ヒカル論』、『宮崎駿論』などの著作がある、1975年生まれの批評家・杉田俊介。文芸誌や思想誌で労働問題やサブカルチャーについて健筆をふるう彼がこの度上梓したのが、『ドラえもん論 ラジカルな「弱さ」の思想』だ。『ドラえもん』については過去にもいくつかまとまった批評や論考があったが、杉田は男性学やフェニミズム的な観点からジャイ子やしずかちゃんに迫っている。PC(ポリティカル・コレクトネス)的な、あるいはルッキズム的な解読格子によって、『ドラえもん』はどのような作品として捉えられるのか。著者の杉田にインタビューを行った。(土佐有明) のび太君とドラえもんは共依存的な関係 杉田俊介氏 ――ドラえもん論は、過去にも何人かの著者が書いていますが、自分ならこう書くというアイディアがあったのでしょうか? 杉田:『ドラえもん』の世界の核心を率直に書いた方が面白いと
「おたく」「チャイドル」「3M」といった数々の新語を生み出し、アイドル評論の先駆けとして文筆活動を続けてきた中森明夫。そんな中森氏の新刊『アイドルになりたい!』が筑摩書房より発売された。80年代より現在まで、約35年にわたってアイドルについて語り、『アイドルにっぽん』(新潮社)や『AKB48白熱論争』(幻冬舎、小林よしのり、宇野常寛、濱野智史との共著)といった書籍を刊行して来た氏が、新作に選んだテーマは“アイドル入門本”。アイドルを目指す女の子に向けて「アイドルの定義」「アイドルの仕事とは何か」「アイドルになる方法」などについて、読者に向けてレクチャーする内容となっている。 そんな中森氏に同書の内容について、そしてアイドルの未来について、話を聞いた。(岡島紳士) 若者とその親の二世代に読んでもらいたい ーーいつ、どんなきっかけで本書を書くことになったんでしょうか? 中森明夫(以下、中森):
「一行残れば勝ち」 斎藤 セレクションからして大変なお仕事でしたね。 渡部 選ぶだけでたっぷり半年以上かかりました。この本では、原典から抜いた惹句的な一行と僕の解題を読んでもらえれば、日本近代批評の主立ったところがわかるし、その惹句を付けた目次(後掲)だけでも、おおよそがわかると思います。 斎藤 私、これ買いだと思います。だって重要な批評ばっかりこんなに集めた本って、これまでにないですよね。 渡部 批評のアンソロジーは、『昭和批評体系』五巻本(番町書房)などが昔はあったし、いまも、岩波文庫に『日本近代文学評論』の二巻本がありますが、秋成・宣長から蓮實・柄谷まで七十本、ひとりの編著者が作った本はこれが最初だと思います。 斎藤 いまでは個人全集をひっくり返さないと読めない文章も多い。文庫の回転はこの頃えらく速いけど、真っ先に消されるのが文芸批評です(笑)。名前は知ってるけど、読んでないものも多
講演 「西部劇=残存するノワール 西部劇を殺したのは誰か――第8回 アナクロニズムの会」 2010年6月11日 吉田広明(映画批評家) フィルム・ノワールが西部劇に何らかの影響を与えたのではないか、というテーマでお話させていただきます。発想の源は、フランスの映画批評家アンドレ・バザンによる「西部劇の進化」という「カイエ・デュ・シネマ」の55年12月号に発表された論文です。バザンはその論文で、「第二次大戦以前に西部劇はある程度ジャンルとして確立した」と述べています。西部の神話、西部の歴史、アメリカの歴史と人物の心理描写の均衡がうまく確立したことで、西部劇は40年前後に完成した。その具体的な例として、ジョン・フォードの『駅馬車』(39)、キング・ヴィダーの『北西への道』(40)、ウィリアム・ワイラーの『西部の男』(40)などを挙げています。それらの作品に対して、新しい傾向の西部劇が現れているの
テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ ←伊藤剛氏から提供された表紙原画(画・和田洋介) 話を『テヅカ・イズ・デッド』に戻す。今までの文章をふまえて本書の論旨を私なりにまとめると、だいたいこのような展開になっている。 (1)マンガはつまらなくなった言説の検証 前回までのエントリでも述べたように、90年代に入り、団塊の世代(50代~)からオタク第一世代(40代~)にかけての論客の多くが、どうしたわけか口々に「マンガはつまらなくなった」と言い始めた。しかし現行のマンガは、一時ほどではないにせよやはり売れているし、伊藤からみて面白いマンガはたくさんある。必ずしもマンガ表現総体が衰弱しているとは思えないのだが、先行世代の論者は意識的にか無意識的にか「今のマンガ」を無視しているように見える。これはなぜか。 「つまらなくなった」ということは、「それまでは面白かった」ということである。であるなら
MIYADAI.com Blog (Archive) > 「『サブカルチャー神話解体』から20年、オタク研究の停滞」(仮題)の前半だけアップ « 『愛のキャラバン』の冒頭、ナンパを始めたキッカケを語ったパートの後半部分です | 廣松渉先生について語りました。前半部分だけ掲載します。やがて『情況』に全体が掲載されます » 「『サブカルチャー神話解体』から20年、オタク研究の停滞」(仮題)の前半部分だけアップロードします。 まもなく『Fandom Unbound: Otaku Culture in a Connected World』の日本語版が出ます。この日本語版には、英語版には収録されていない僕の論文が含まれています。 元々この英語本に収録する予定だったのですが、東浩紀君との米国講演旅行を契機に学術的(査読あり)定期刊行物『Mechademia』に掲載されることになったので、英語本への収録
サブタイトルは、「フレーム、キャラクター、モダン・アート」 去年の6月から12月にかけて開催された三回連続のWS「マンガ的視覚体験をめぐって――フレーム、フィギュール、シュルレアリスム――」をもとにした論集。 参考:伊藤剛・鈴木雅雄「マンガ的時間、シュルレアリスム的時間」感想ツイート - Togetter [トゥギャッター] マンガとシュルレアリスム美術を比較しながら、論じられたもので、非常に刺激的で面白かった。 第1部 マンガの時間、絵画の時間 消える男/帰ってくる男――マンガから見た絵画・シュルレアリスム 伊藤剛 瞬間は存在しない――マンガ的時間への問い 鈴木雅雄 第2部 マンガのコマ、絵画のフレーム マンガにおけるフレームの複数性と同時性について――コマと時間をめぐる試論(一) 野田謙介 分裂するフレーム――シュルレアリスム〈と〉マンガ 齋藤哲也 第3部 マンガをめぐる言説、美術をめ
ゾントハイマー「ワイマール共和国の政治思想」は戦間期ドイツのワイマール期の反民主的な右翼思想である保守革命について、概論的にまとめ上げた古典的な研究書である。保守革命についての概論書としては今でも読みやすくてお勧めできる。 これは既に新刊では手に入らない本なので、ここで紹介するのをためうところもある。だが現代の極右の源となる保守革命について日本ではあまり知られていないので、あえて取り上げたい。なので、まずはなぜこの本を紹介するのか?を先に説明したい。 現代の世界(主にいわゆる先進国)で、極右とされる立場が隆盛している。そうした極右的な思想には源となる先駆者があり、それは保守革命と呼ばれる。次にリンクするのはヴァイス「ドイツの新右翼」の翻訳者による講演ですが、すぐに手に入れられて読みやすいのでお勧めします。 長谷川晴生「ドイツ・ヨーロッパ新右翼の思想と行動 ――その対外認識を中心として――」
Microsoft社が開発したCopilot(コパイロット)という生成AIツールがあります。大雑把にいえばChatGPTのようなものです。無料版と有料版とがありますが、このところ、もっぱら無料版で遊んでいます。 音声入力とテキスト入力の2つの方法があって、音声入力では声や速度などが変えられるようになっています。同じ質問を2通りで試してみると、返ってくる答えはテキスト入力のほうが断然精度がたかく、音声入力では誤回答が延々と繰り返されたりすることもあります。「それ、違ってるよ」というと「そうですね」と、また間違った答えを返してきます。オーラル・コミュケーションの曖昧さを反映しているのでしょうか。遊ぶ分にはたのしいけれど。 生成AIの回答の真偽についてはなかなか微妙なところがあります。質問するほうがある程度の知識を持っている場合、その真偽を判断することはできますが、知識のない場合は正しいかどうか
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