『セーラー服の歌人 鳥居 拾った新聞で字を覚えたホームレス少女の物語』(岩岡千景/KADOKAWA/アスキー・メディアワークス) あなたは「鳥居」という歌人をご存じだろうか? 揃えられ主人の帰り待っている飛び降りたこと知らぬ革靴 孤児たちの墓場近くに建っていた魚のすり身加工工場 目の前に立ち上る、静かな「絶望」。痛みと孤独の中で、生にしがみつく小さな悲鳴。そして残る諦観……たった31音という短歌の定型の中に、ナイフで心に傷をつけるようにして圧倒的な一瞬を封じ込めてしまう、鳥居はそんな短歌をよみ続ける歌人だ。 独学で短歌を学んだ彼女は、作歌をはじめてすぐの2012年に全国短歌大会で入選。2013年には掌編小説「エンドレス シュガーレス ホーム」で路上文学賞大賞を受賞するなど社会的評価の高まりとともに、次第にファンを広げている今注目の存在でもある。 このほど、そんな鳥居の第一歌集『キリンの子