わたしたちが一緒にできること頭を殴られたようになり、呆然としてしまった。試写室から、家まで、帰った道筋を思い出せない。でも、なんで、こんなにショックを受けるんだろう。いつもの駅のホームで、わたしがスカーフを落としたのを、近くを歩く、二人の女性が、とっさに、指を指す。その彼女たちの顔。普段、自分の生活になんの疑いも違和感も持たないようにみえていた、道ゆく女性たちの顔が、今までと異なり、くっきりと、陰影をもって、見えて、ハッとする。この映画は、見えているのに、描かれてこなかったものを、描いてる。たぶん、ほんとうのことは、今まで描かれてこなかったのだ。女性同士が、さしで向き合い、その間に何も入ってこないなら、そこで起きていることは、一体何なのか。 「異性愛から、少し離れられるだけでも、ほっとするんだよね」と言った、ずっと前に仲違いしてしまった女友達の横顔が、浮かぶ。20代の最後のあたり、ずっと一