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ブックマーク / cocolog-nifty.hatenablog.com (15)

  • 夏目漱石『こころ』の K はなぜ先生をぶん殴り車夫にならなかったのか - 山下泰平の趣味の方法

    大人になると読み方がかわる 『こころ』の K はどのような人間なのか K のような苦学生はたまにいた 夜学校の先生になったのは合理的な判断ではあった 苦労すれば強い人になれる 苦学の世界は二つあった 先生と K の旅行 大人になると読み方がかわる 夏目漱石による小説『こころ』は、名作とされている。 初版復刻版 こゝろ (岩波文芸書初版復刻シリーズ) 作者:夏目 漱石岩波書店Amazon 有名な作品なだけに、色々な人が様々なことを書いているが、誰もが否定できないのはとにかく面白く読めてしまうことだろう。『こころ』は新聞連載小説であるため、一日の掲載分の終盤には、次回への期待を煽られるようなことが書かれている。ついつい続きを読みたくなってしまうような構造で、このあたりは職業作家夏目漱石の面目躍如といったところであろう。 ただし漱石の初期作品とは異なり、『こころ』には書きながら考えているよう

    夏目漱石『こころ』の K はなぜ先生をぶん殴り車夫にならなかったのか - 山下泰平の趣味の方法
  • 明治時代の苦学生を騙す貧困ビジネス - 山下泰平の趣味の方法

    苦学生を失敗させて儲けよう 明治の三〇年あたりから昭和一五年くらいまで苦学が流行し続けた。苦学とは自ら稼ぎながら学資を得て学校を卒業することである。 戦前の苦学生は基的に失敗する。なぜなら苦学を失敗させるような仕組みが、明治三五年には構築され長く維持されたからだ。世の中の至る所に罠が仕組まれており、多くの若者たちが騙され続けた。一種の苦学失敗システムとでも呼ぶべきもので、中でも多くの苦学生を苦しめたのが苦学者支援団体だった。 こわい 苦学者支援団体の仕組 苦学者支援団体はタコ部屋労働(地獄部屋)と就職詐欺、そして偽装サークルを組合せたような組織で、ここに入った時点で八割方苦学は失敗に終ってしまう。もちろん苦学者を狙ったタコ部屋も就職詐欺も偽装サークルもあったのだが、苦学者支援団体の仕組みは少し複雑だった。 彼らがどのように苦学生たちを騙していたのか具体的に紹介すると、例えばこれを読んでい

  • 国立国会図書館デジタルコレクションが便利すぎて知能が無理になり頭が狂いそうになったのでなんとかした - 山下泰平の趣味の方法

    国立国会図書館デジタルコレクションを使い始めてもう15年になる。昔は牧歌的な時期もあり、面白そうなタイトルを選び、チビチビ楽しみながら読むといった感じであった。ところが国立国会図書館デジタルコレクションが際限なく良くなっていくため、どんどん読み方が変っていった。 今の国立国会図書館デジタルコレクションは便利すぎるため、アクセスする資料の数がものすごいことになってきている。ここ数日のアクセスした資料を抽出してみたら、平均すると1日500あたりで、もう人間の能力では処理できない。 どう読んでいるのかというと、先にブラウザのタブで必要なものが掲載されていそうな資料を10-20程度開いておいて読み進め、必要ならページをめくるとデータを読み込む時間が発生するので、別のタブに移動してまた読むみたいなのを繰り返している。この読み方だと基的にタイトルや著者といった情報は頭に置かない。データの断片があるだ

    国立国会図書館デジタルコレクションが便利すぎて知能が無理になり頭が狂いそうになったのでなんとかした - 山下泰平の趣味の方法
  • 国立国会図書館デジタルコレクションの遊び方 - 山下泰平の趣味の方法

    国立国会図書館デジタルコレクションは最高である。 「国立国会図書館デジタルコレクション」が面白い まずは遊んでみる 使いまくりたくなったら準備しておくと効率が良い 無料でできる 検索演算子だけ覚えておく 国立国会図書館デジタルコレクションの使い方を知っておく 国立国会図書館オンラインに登録しておく メモ環境を作る 有料でできる パソコンを用意する できれば良い椅子とモニタがあったほうがいい 速度を意識して使う 速くなるとどうなるのか そこに全てはない ものすごいものをどうでもいいことに使うということ 「国立国会図書館デジタルコレクション」が面白い 「国立国会図書館デジタルコレクション」が面白い。 dl.ndl.go.jp 「国立国会図書館デジタルコレクション」では著作権など権利状況に問題がないことが確認できた約36万点の資料が無料で公開されており、ようするに古いが無限に読めるサービスだ。

    国立国会図書館デジタルコレクションの遊び方 - 山下泰平の趣味の方法
  • ゴールデンカムイの不死身の杉元と明治の不死身キャラの類似性とその進化について - 山下泰平の趣味の方法

    ゴールデンカムイが完結した。せっかくなので全部読んだ。主人公がやたらに「俺は不死身の杉元だ!!」と叫ぶのを読むうちに、そういえば明治時代にも不死身キャラがいたなと思い出し、少し似ているところがあるなと、軽い気持で書き出したのがこの記事なのだが、またもや18000文字くらいになってしまった。これでもかなりはしょった所があるので、詳しいことが知りたい人は、途中で紹介している私のを読んでいただければ幸いである。 令和の不死身、明治の不死身 昔の不死身キャラたち 理屈の世界における不死身 盗作される粂平内 平内の不死身の活かしかた 明治のパワーインフレ さらなる不死身キャラの登場 創作者たちの善意は続く 令和の不死身、明治の不死身 ゴールデンカムイが面白かった。 ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) 作者:野田サトル集英社Amazon 面白い作品は、多くの人から愛され

    ゴールデンカムイの不死身の杉元と明治の不死身キャラの類似性とその進化について - 山下泰平の趣味の方法
  • 夏目漱石の「吾輩は猫である」を笑って読破するためのガイド - 山下泰平の趣味の方法

    この記事はそれなりに時間をかけて書いたのだが、面白がってどうでもいいことを調べている間に、世の中は大変なことになっていた。 最早「吾輩はである」を読もうぜッ!! なんて雰囲気でもなさそうだ。ただし気が滅入って仕方がない時には、全然関係ないことをするのがお勧めなので、そのまま公開することにした。 最初に書いておくと私は漱石が好きなので、いつもよりも客観性に欠けたところが多くなっている。あと無駄に長い。当初はコンパクトにまとめようと考えていたのだが、どうでもいいことを調べながらダラダラ書いているうちに長くなり、結果的に15000文字程度になってしまった。どうもいいことが満載のこの記事を最後まで読めたとすれば、夏目漱石の「吾輩はである」なんて余裕で読破できると思う。他の作品を読みたい人はこちらも参考どうぞ。 cocolog-nifty.hatenablog.com 吾輩はであるを読もう 「

    夏目漱石の「吾輩は猫である」を笑って読破するためのガイド - 山下泰平の趣味の方法
  • 明治の若者たちはいかに無銭旅行を成功させたのか - 山下泰平の趣味の方法

    この記事では明治時代の若者たちがいかにして無銭旅行を成功させたのか、その手法を中心に2万文字かけて解説している。 無銭旅行があった 無銭旅行とはなにか 若者たちは無茶をする 短期間だから無銭旅行ができた 人を殴ったり投げたりしたので無銭旅行ができた 普通にお金を使って旅行をした その辺の野菜や動物をって旅行をした コミュニティーの親分を殴り倒して旅行をした 無銭旅行したと言い張った 嘘をついて他人に迷惑をかけて旅行した 働きながら旅行をした 丈夫だから普通に無銭旅行ができた 中学生は仲間だという荒い戦略で失敗しながら旅行をした 早めに失敗したから死なずに済んだ 普通に強盗をして逮捕された 慎重な無銭旅行 失敗した人々の末路 行商をしながら旅行をした 雑誌で知り合いを作っておいて旅行をした 彼らはどこにたどり着いたのか たとえそれが幻想であったとしても 無銭旅行があった 明治の二十年あたり

    明治の若者たちはいかに無銭旅行を成功させたのか - 山下泰平の趣味の方法
  • 一九二〇年の東京で貧しい若者が苦学に成功する方法・金子文子の場合 39000文字 - 山下泰平の趣味の方法

    一九二〇年の東京で貧しい若者が苦学に成功する方法 どうすれば金子文子は卒業できたのか 苦学と金子文子の状況と 小学校時代 優秀であるがゆえの悲劇 文子の痛手 文子の上京 幸運な上京 文子の戦略ミス 厳しい苦学界 苦学の真実 嫌な社会 女性の苦学は難しい 文子が最初にしたほうがいいこと 先人の跡をたどれば 犯罪スレスレで苦学した男 苦学を使って大儲けした男 そもそも苦学が必要ない人たち メディアを使って記者になる 登校拒否の人 せずにいられないことをする 苦学を成功させるには まとめ 一九二〇年の東京で貧しい若者が苦学に成功する方法 親ガチャなんて言葉がある。「どういう境遇に生まれるかは全くの運任せ」といった意味らしい。対義語は「実家が太い」で、貧困層に生れてしまうと、選択肢や機会が極端に少ないなんて問題もある。これらはずっと存在していたものではあるが、 SNS などで格差や個々人の能力や考

    一九二〇年の東京で貧しい若者が苦学に成功する方法・金子文子の場合 39000文字 - 山下泰平の趣味の方法
    akihiko810
    akihiko810 2021/11/11
    『金子文子と朴烈』はよかったな
  • 戦時中、敵性音楽の追放にささやかな抵抗をしたレコード屋はありませんでした - 山下泰平の趣味の方法

    この記事は私の思い込みによって書かれた文章で、真相はこういう感じであった。 ここで述べられている「聴覚訓練は先づレコードから」は「聴覚訓練音盤」のことで、1943年3月新譜で初等科3,4学年用レコードが発売されたので、その宣伝でしょう。洋楽は当時も同盟国の作品を中心にクラシックとポピュラー音楽が発売されており、米英録音もオケ名を隠すなどして発売されていました。 https://t.co/HCnu5plbnF pic.twitter.com/IURtxufIGO— 毛利 眞人 (@jazzrou) 2021年6月30日 教えていただいてありがとうございます。 私は思い込みが激しいところがあって気をつけて生きているんだけど、今回は我ながら気持いいくらいの思い込みで、事例として記録に残しておきたいと思った。そんなわけで元の記事とあわせて、なぜこういった思い込みをするに至ったのか解説しておきたい。

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  • 明治時代のフィクションで遊廓や遊女がどう美化されたのか紹介する - 山下泰平の趣味の方法

    かなり長く(約15000文字)なってしまったので最初にまとめておくと、この記事は『岩見武勇伝』という物語に生じた変化を紹介しながら、『社会の状況が変化すると娯楽物語の内容も変化する』といったことが書かれている。遊廓は登場するが、その実態については触れていない。 岩見重太郎の妹お辻 『岩見武勇伝』は不完全だから語られ続けた お辻が仇討ちの旅に出るまで 侠客の登場 ヒーローになる若松太兵衛、アイドル化するお辻 なぜお辻の扱いに変化が起きたのか 岩見重太郎の妹お辻 今では忘れ去られてしまっているが、かって岩見重太郎と呼ばれるヒーローがいた。 狒狒を殺す岩見重太郎 岩見重太郎・塙団右衛門 玉田玉秀斎 講演 立川文明堂 大正六(一九一七)年 『岩見武勇伝』は主人公の重太郎が父親の仇である広瀬軍蔵を打つため諸国を巡りつつ、狒狒や山賊を退治し、天橋立で百人斬りを達成、ついでに広瀬軍蔵も完璧に殺害、豊臣秀

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  • 子規の無謀、漱石の豹変、龍之介の演出、三者三様の夜間旅行 - 山下泰平の趣味の方法

    明治時代の忘れ去られた文化を調べている際に、正岡子規、夏目漱石、芥川龍之介が、それぞれ夜間旅行をしていたことに気が付いた。それぞれの旅行を比較するとなかなか面白く、記事としてまとめてみると16000文字くらいの長さになった。 夜間旅行があった 子規の無謀 漱石の豹変 芥川の演出 子規、漱石と龍之介の間 夜間旅行があった 明治三十年代から四十年終りまで、出世のための徒歩旅行があった。ほぼ無一文で家から飛び出し、心身を鍛え上げながら都会へ移り住む。都会では働きながら学問を修め、やがては一人前の男へと成長する。このプロセスをひとつの旅行として捉えたものが出世旅行である。明治の出世旅行は深く人生に結び付き、生き方を変えてしまうようなものであった。 出世旅行が登場する以前から、若者たちは謎の情熱に突き動かされ、なにかを体験しようと奇妙で無鉄砲な旅をした。彼らは様々な旅行を試行し、体験談を書き残す。そ

    子規の無謀、漱石の豹変、龍之介の演出、三者三様の夜間旅行 - 山下泰平の趣味の方法
  • ゴールデンカムイに触発されて明治四十三年に書かれたアイヌのヒロインと不死身の豪傑が旅する講談速記本を24000文字くらいかけて解説することにした - 山下泰平の趣味の方法

    ゴールデンカムイが面白い 明治娯楽物語における北海道の扱い 源八郎とヒロインの出合い 殺し合いの後で友達になろう 源八郎がロシア人になった理由 シャマケンは源八郎のため奔走し源八郎はロシアへ渡る 学習漫画的側面 苦学生という存在 源八郎とシャマケンの旅 もうひとつの似ている点 ゴールデンカムイが面白い 人からゴールデンカムイが面白いとお勧めされたので読んでいる。グルメ漫画だと思い込んでいたんだけど、実際は人の皮を集めるみたいな話だった。少しビックリしたものの、確かにものすごく面白い。 今は石川啄木が出てきたあたりで、私は文学が基的に好きだからちょっと嬉しい。そのうちアイヌと啄木つながりで金田一京助や知里幸恵、グラフ誌の関係で国木田独歩あたりが出てくるのかなと、楽しみにしている。国木田独歩がビリヤードをしていたら最高だと思う。 その他にゴールデンカムイの世界で活躍できそうな明治期の文学者と

    ゴールデンカムイに触発されて明治四十三年に書かれたアイヌのヒロインと不死身の豪傑が旅する講談速記本を24000文字くらいかけて解説することにした - 山下泰平の趣味の方法
  • 大河ドラマのいだてんで思い出した真偽不明の話 - 山下泰平の趣味の方法

    いだてんっていうドラマが放送されているのを知って、かなり昔に聞いたか観たか読んだかした真偽不明の話を思い出した。 明治時代、あるオッさんが人力車の車夫を集め、メダル狙いでオリンピックに出場させようとするんだけど、アマチュアリズム(プロは参加できない)が理由で参加できなかったというものだ。スポーツは貴族のものだったから、車夫なんてもっての外っていう感じである。テレビで観たのか、で読んだのか、フィクションだったのか、私の妄想なのか全く記憶にない。 この話が明治のフィクションだとは、考えられない。明治の中頃に車夫が物語で活躍することはわりとあったが、その際に好んで使われたモチーフはを読む車夫というものだ。今は車夫をしているが、学校を卒業して偉くなるぞといった雰囲気で、要するに苦学生を描いているわけである。車夫の身体能力を中心に据えた物語というのはかなり少ないというか、ほぼないような気がする。

    大河ドラマのいだてんで思い出した真偽不明の話 - 山下泰平の趣味の方法
  • こないだの保毛尾田保毛男のおもしろさ - 山下泰平の趣味の方法

    保毛尾田保毛男を巡る問題 フジテレビが30周年を期して、30年前に流行った保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)を復活させたのだが、私は大笑いしてしまった。実際にテレビを見てないのに面白いってすごいなーって思ってたんだけども、LGBTを支援するコミュニティが抗議声明を発したことで炎上が起きてしまい、フジテレビの社長が謝罪してしまい、余計に面白くなってしまった。 とりあえず状況を詳しく説明しておこう。まず保毛尾田保毛男っていうのは石橋貴明さん(とんねるず)が変な化粧?をして、扇子みたいなの持ってたかな? あとよく覚えてないけど背広も着用して、変な口調で滑稽な格好をするとかそういう感じのキャラクターだろうと思われる。ホモとか連呼していた記憶があるものの、その辺は曖昧、とにかく同性愛の男性が滑稽な格好をするみたいな雰囲気で、今となってはテレビで流したら一触即発な趣きのあるキャラクターである。そんなこと

    こないだの保毛尾田保毛男のおもしろさ - 山下泰平の趣味の方法
    akihiko810
    akihiko810 2017/10/19
    たけしなら「今の時代」なんて読めないからな。説得力ある >たけしは同番組の30周年を祝うため、とんねるずに「銀座で祝うから正装で来い」と指令。
  • 舞姫の主人公をボコボコにする最高の小説が明治41年に書かれていたので1万文字くらいかけて紹介する - 山下泰平の趣味の方法

    舞姫の主人公をボコボコにする小説が明治41年に書かれていたので1万文字くらいかけて紹介したいと思います。 舞姫の主人公を殴れば解決するのでは? 冒険旅行ブーム 島村隼人、エリスに刺されそうになり豊太郎を殴ることを決心する 舞姫との差異 ハイカラを討伐しよう アフリカ人と帰国しよう 世界統一ブームがあった 豊太郎廃人となる 舞姫のために 追記 舞姫の主人公を殴れば解決するのでは? 森鴎外による舞姫っていう小説がある。舞姫の内容を知らない人のためにあらすじを書いておこう。 子供の頃からずっと勉強してた太田豊太郎は22歳になると国費でベルリンに留学、ところがヨーロッパの文化に触れ近代的自我に目覚めてすごい苦悩をする。色々あって豊太郎は踊り子のエリスと仲良くなるんだけど、ついでに無職になってしまう。親切な友達の紹介で職をゲットしたらエリスが妊娠、なんだかんだでロシア仕事に行くことになる。エリスは

    舞姫の主人公をボコボコにする最高の小説が明治41年に書かれていたので1万文字くらいかけて紹介する - 山下泰平の趣味の方法
    akihiko810
    akihiko810 2017/02/12
    作者は星塔小史、小説の題名は「蛮カラ奇旅行」
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