作家、音楽家、画家、建築家、そして「いのっちの電話」の相談員など、ジャンルの垣根を飛び越えたユニークな活動で支持を集める坂口恭平さん。今年8月には初のエッセイ集『その日暮らし』を刊行。熊本の土地と大切な人々との出会い、家族との何気ないやりとり、コロナ禍にはじめた畑、壮絶な鬱との格闘……。やさしい言葉で淡々と素直に綴られた日々の中には、ともすれば不安に押し潰されかねない時代に、私たちがのびのびと生きのびるための「新たな種」が蒔かれていました。 ――『その日暮らし』は西日本新聞の連載をまとめたものです。坂口さんはこれまでに50冊近く本を出していますが、こういった日常エッセイはありそうでありませんでした。 確かにそうですね。ただ、Twitter(X)ではずっと日々の出来事を記録していて、その日やったことや作った料理や家族の言葉まで全てをアーカイブしていたので、その延長的な感じで。特に何を書こうと